関節治療の専門医に聞いてみました!

第133回 人工股関節の耐用年数長期化で手術の適応年齢が拡大まだ若いからと我慢する必要はありません

  • 末原 洋 先生
  • 洛和会丸太町病院 整形外科副部長 関節センター センター長 リハビリセンター センター長
ドクター
プロフィール
日本整形外科学会認定整形外科専門医、
日本リハビリテーション医学会臨床認定医、医学博士
エリア 京都府タグ
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末原 洋 先生

人工股関節置換術は除痛効果が高く、長期成績の良い手術ですが、やはり「手術は怖い」というイメージを持つ人も多いようです。「筋肉を切らない MIS(最小侵襲手術)であれば、術後の痛みはほとんどなく、入院期間も短く、日常生活の制限もほとんどありません。安心して受けてもらえますよ」とアドバイスするのは洛和会丸太町病院の末原洋先生。変形性股関節症の原因や痛みの症状、進行度に合わせた治療法、人工股関節の耐用年数の長期化による手術適応年齢の拡大などについてお話を伺いました。

脚の付け根や腰、太ももなどに痛みを感じる主な原因は何ですか?

原因として一番多いのは「変形性股関節症」ですね。これは、股関節の軟骨が摩耗することで徐々に股関節が変形していく病気で、圧倒的に女性に多く見られます。本来、股関節は、骨盤側に「臼蓋」と呼ばれる受け皿のような部分があり、そこに大腿骨の先端の「骨頭」がはまり込む「ボールとソケット」のような形状で安定を保っています。

変形性股関節症(両脚)のレントゲン

変形性股関節症(両脚)のレントゲン

しかし、日本人女性の場合、臼蓋の形状が小さくて大腿骨頭への被りが浅い「臼蓋形成不全」の人が多く、それが原因で発症する二次性の変形性股関節症が多いといわれています。変形が進行すると立ち上がり時や階段の昇り降り時に痛みを感じるようになり、さらに進行すると脚の動きが悪くなったり両脚の長さに差が出ることで歩行が阻害され、日常生活に支障をきたすようになります。加齢と共に徐々に悪化することが多いため、症状を訴えて受診されるのは50代~60代が中心ですが、中には30代~40代で発症する人も。また、近年は、欧米に多く見られる、原因が明らかではない一次性の変形性股関節症が日本でも増加傾向にあるようです。

変形性股関節症は進行程度によって治療法も変わるのですか?

はい、変わります。変形性股関節症は、大きく分けて前期・初期・進行期・末期の4つに分類されますが、前股関節症から初期の段階であれば、まずは減量、リハビリによる筋力トレーニング、痛み止めなど薬物の併用といった保存療法を行います。筋力トレーニングでは、太ももや股関節周囲の筋力を強化しますが、関節に体重をかけないように寝た姿勢で行います。プールでのウォーキングも、股関節に負担がかからないので大変効果的です。この段階であれば、こういった保存療法だけで症状が改善する人も少なくありません。進行を完全に止めることはできませんが、進行を抑制することは可能です。ただし、自己判断でトレーニングを行うと、逆に筋肉や関節を傷めることもあるので注意が必要。医師や理学療法士の指導に従いましょう。保存治療で症状を改善するためには、やはり早期での受診が重要です。まずは、痛みを感じたら早めに整形外科を受診してください。特に、子供のころに股関節の治療経験がある人は、30代になったら1年に1度はレントゲンを撮り、経過を観察してもらうようにして欲しいですね。

変形性股関節症の進行

変形性股関節症の進行

症状が進行しているケースではどのような治療法が有効なのでしょう?

人工股関節置換術後のレントゲン

人工股関節置換術後のレントゲン

痛みや変形が進行すると手術を検討することになります。歩行時の痛みに加え、可動域が狭くなることで股関節の動きが悪くなり「靴下がはきにくい」「足の爪が切りづらい」「正座ができない」といった、日常生活への支障が顕著になった時が一つの目安です。軟骨がまだ保たれている30代~40代の若い年代で、臼蓋形成不全が原因の変形性股関節症の人には、「寛骨臼回転骨切り術」が有効な選択肢の一つとなります。これは、骨盤の臼蓋の周りをドーム状にくり抜き、寛骨臼を前外方に回転させて固定し、骨頭を覆うようにする手術です。人工物を使わず、正常に近い、軟骨のある臼蓋を自分の骨で作ることができるため、安全性・安定性が高く、経過が良ければそのまま一生、不自由なく日常生活を送ることが可能です。一方、変形が進み、すでに軟骨がすり減っている場合には、「人工股関節置換術」が選択肢の一つとして検討されることになります。


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