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専門医インタビュー

歩けない、動かないと様々な機能が低下する人工膝関節は全身的な健康維持に貢献

この記事の専門医

赤木 將男 先生
  • 赤木 將男 先生
  • 樫本病院 顧問
  • 072-366-1818

大阪府

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1983 年京都大学医学部卒業。2000 年米国ロマリンダ大学研究員。帰国後、近畿大学医学部附属病院講師(現:近畿大学病院)に、2012年より現職。日本整形外科学会理事・専門医、日本人工関節学会理事・評議員、日本リウマチ学会専門医・指導医。

この記事の目次

軟部組織を傷つけない丁寧な手術

部分置換術後のX線(正面と側面)

我慢できない痛みを緩和し、膝の曲げ伸ばしが自由にできるようにするのが人工膝関節置換術です。傷んだ関節の骨の表面を削り、似た形状の人工のものに入れ替えます。膝の上下、大腿骨と脛骨にインプラントを、その間にポリエチレン製の人工軟骨を入れます。これは、悪い部分を削って詰め物をしたりかぶせたりする、虫歯の治療に似ていると、患者さんには説明をしています。
人工膝関節置換術には、関節全てを人工のものに取り換える全置換術(TKA)と、一部分だけを人工のものにする部分置換術(UKA)とがあります。理論的にも、一部分だけ、主に関節の内側だけを削って人工のものにし、靭帯などの組織は残す方法のほうが、術後の成績、回復の度合いなどもいいことが分かっています。
膝の安定度もいいので、スポーツをしたい人には、部分置換を勧めます。しかし、関節の内側も外側も悪くなってい て靭帯も切れてしまってからでは、全置換にせざるを得ません。変形が進まないうちに手術をするほうが切る量も少ないし、手術時間も早くて回復も早いのは間違いないのです。あまり状態が悪くなる前に、相談してください。

手術はあくまでも本人の希望

赤木 將男 先生

近年、人工膝関節の成績や人工関節に対する認識度が高くなってきました。痛みが取れてきれいに歩けるようになった人を見て、良さが口コミで伝わることが多いですね。昔に比べるとずいぶん浸透してきました。
60歳以上の人に行うというのが一つの基準になっていますが、それは人工関節の耐用年数が20年くらいということからです。当院で手術を受ける方の平均年齢は74歳、それでも日本は遅めです。海外では60歳くらいで人工膝関節置換術を受けることが多いです。人工膝関節置換術を受けるかどうかは、あくまでも患者さん本人の希望と意志。痛みがひどくて膝の曲げ伸ばしができない、いかに生活に困っているかがポイントになります。
レントゲンの画像ではそれほど変形していないと思われても、山登りやテニスがしたい、旅行に行きたいからと強く希望する人もいます。人によって膝に対する要求度が違いますから、本人の決意が大事です。
ただ、麻酔に耐えられないような内科的な疾患をもっている場合、手術は受けられません。例えば、肝臓が悪い人で、手術をしたら出血が止まらないだろうと思われる場合ですが、そういうケースはごく稀です。たとえ骨粗しょう症の人でも、インプラントを入れる際に特殊な方法を工夫すれば大丈夫。
術前の検査をして、何か問題があればそれを治療してからにするなど、患者さんはたいてい5年も10年も痛みを我慢してきたわけですから、慌てることはないのです。患者さんにとって都合のいい手術日程を選びます。

事前計画の通りに手術

赤木 將男 先生

手術の日程が決まったら、医師は患者さんそれぞれの手順計画をたてます。CT をとりそのデータを用いて、例えばO脚に変形している骨に対してどういう風にどういう角度で骨を切ったらいいか、内側と外側でどのくらいの厚みの 骨を切れば真っすぐに入るかなどを細かく計算します。
骨の変形の度合いは人によって違いますから、それを基準に合わせ込んで、人工膝関節がうまく機能してくれるような手術方法の準備をします。そして、その計画通りに手術を行います。手術時間は1時間半から2時間程度。
患者さんにとって術後の痛みが少なく、早くリハビリテーションができるような丁寧な手術を心がけています。 人工膝関節置換術は骨の手術というより、骨に至るまでの皮膚、筋肉、関節、靭帯などの軟部組織をできるだけ傷つけないように、無理に引っ張らないようにやさしく丁寧に扱うのが基本です。
慣れていない術者が無茶に手早く手術をすると軟部組織を傷め、感染の原因になることもあるのです。手術は、人工膝関節置換術に慣れた施設で、正しいトレーニングを受けている医師のいるところで受けることを勧めます。

正しい位置にインプラントを入れるための「赤木ライン」

脛骨の前後軸「赤木ライン」と呼ばれており精密に前後方向を決定出来る。

脛骨の前後軸
「赤木ライン」と呼ばれており
精密に前後方向を決定出来る。

私は様々な経験を経た結果、正しい位置にインプラントを設置するための基準となる参照軸(脛骨の前後軸)を見つけました。
10年以上も前に書いた私のその論文を見たイタリアのドクターが、その軸を「赤木ライン」と名付けて世界に広めてくれました。 赤木ラインに対して真っすぐにインプラントを入れれば、大きく間違うことはないという、骨の切り方、インプラントの回旋、ねじれを予測する原則です。
基本的な参照軸として有用だと思っていますし、私自身もずっとそれを基本に手術を行ってきました。これからもその手術の方法を変えるつもりはありません。
今では、周りの先生方もどんどん使うようになったし、そういう参照軸に沿って行うことで術者間のばらつきも少なくなるだろうと思っています。


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