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専門医インタビュー

ガマンせずに痛みの原因を知りましょう!股関節が痛くない人生を!!

この記事の専門医

田中 伸明 先生
  • 田中 伸明 先生
  • 三井病院 人工関節センター 整形外科部長
  • 049-222-5321

埼玉県

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日本大学医学部卒。日本整形外科学会専門医、難病指定医、身体障害者判定医(科目:肢体不自由) 専門分野:関節リウマチ、股関節・膝関節、人工関節置換術、骨粗鬆症

この記事の目次

若くて活動的なら骨切り術

骨切り術

骨切り術

保存療法を続けても痛みが改善されない、歩きづらくてつらいなどの場合、手術を勧めます。手術には骨切り術と人工股関節置換術があり、若い方であれば骨切り術を勧めます。
骨切り術は、骨の一部を削って、股関節の受け皿の部分を広げてあげる方法です。人工的に骨折させて、それがくっつくのを待つので、リハビリにかなり時間がかかります。2か月くらいは体重をかけることができないし、その間は松葉杖を使わなくてはなりませんから、特に高齢者には適さないかもしれません。
しかしながら最近は、人工股関節の性能が向上し、耐用年数も30年以上と言われており、手術後の脱臼など合併症のリスクが減ったため、骨切りを行うケースは減ってきています。

傷んだ部分を削って人工のものに置き換える人工股関節置換術に

人工股関節のモデル

人工股関節のモデル

人工股関節置換術は、虫歯の治療と同じように、股関節の傷んだ部分をきれいに削り取って、人工のものに置き換える手術です。大腿骨にインプラントを差し込み、金属と金属の間にポリエチレンを挟みます。これが軟骨の代わりになるものです。
関節がかなり変形しているのに加えて痛みが強い、動くのがつらいなど、総合的に判断して生活の満足度が低く、困っている人に提案しています。まだまだ旅行にも行きたいし、買い物にも行かないといけない、そういう時に選択肢の一つとして人工股関節置換術があります。近年の人工股関節の満足度はかなり高いものがあります。痛みは確実になくなりますし、置換後の動きに特に制限はありません。激しいスポーツは別として、それまでできていた動きはほぼ取り戻すことができます。

いいタイミングで人工股関節置換術を

歳をとるにつれ、だれでも関節は徐々に変形していきますが、関節は使わなければ痛みは出ません。動かないでじっとしていれば問題はないけれど、しかし使わないと関節が硬くなり、ますます動きづらくなり歩けなくなります。本人はそれでもいいと思っても、介護する手が必要になるでしょう。できれば、人生の最後の期間を車いすで過ごすよりは、自分で動ける方がいいと思う人には、人工股関節の話をします。

人工股関節置換術後のX線

人工股関節置換術後のX線

この手術は特別なものではありません。普通の手術ができるような健康状態の人なら誰でも受けることができます。年齢制限はないし、80代の人も平気で受けています。股関節一つでも具合悪いと、腰や膝にも影響してきます。意識しないうちに、悪いところをかばうからほかの部分に負担がかかり、バランスが悪くなります。長い期間バランスが悪いままでいると、せっかく人工股関節置換術を行ってもリハビリにも時間がかかります。

人工股関節置換術で気を付けることは?

人工股関節置換術の手術時間はおよそ1時間半。全身麻酔と痛み止めの管(硬膜外麻酔)を使って手術をするのが一般的です。出血量が多くなることもあるので、あらかじめ自己血を採っておきます。
今、傷口をできるだけ小さく切る最小侵襲手術が主流になっています。もちろん無駄に大きく切る必要はありませんが、私はそこにそれほどこだわりません。傷口は小さくても、中の組織を無理やり引っ張らなくてはならなかったら本末転倒です。組織を傷めることになりますから、それよりもできるだけ筋肉などは切らずにスムーズに正しい位置に挿入できるように工夫しています。
人工股関節は脱臼しやすいといわれていたことがありました。以前のやり方は、お尻の後ろ側から切って、股関節を包んでいる袋(関節包)を切除し、お尻の筋肉を切って人工股関節を挿入していました。なので、横座りなどをしてひねったときに脱臼しやすかったのは確かです。

前方アプローチ

前方アプローチ

私は前方側からアプローチする方法で行っています。前方から切除すれば筋肉を切らずに分け入り、関節包にまで達することができるのでダメージが少なく、手術後の回復が早いという利点もあります。挿入した際のカップの設置位置が悪いと脱臼しやすいのですが、今は人工股関節そのものの精度も高くなっているので心配はありません。
もうひとつ気をつけたいのが感染です。感染症に関しては手術時間が長いとリスクも高くなるので、できるだけ手早く行います。手術後、時間がたっていても抜歯や肺炎などが原因で、菌が人工股関節周辺に回って炎症を起こすこともあります。もちろん稀ですが、一般的な健康状態にも十分に気をつけることはいうまでもありません。


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