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専門医インタビュー

「手術をしなければ歩けなくなる」なんて心配しなくても大丈夫ですよ

この記事の専門医

田中 伸哉 先生
  • 田中 伸哉 先生
  • 独立行政法人 地域医療機能推進機構 さいたま北部医療センター 整形外科診療部長
  • 048-663-1671

埼玉県

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1993年 産業医科大学卒業、2015年 現職に。専門分野:人工関節、骨粗鬆症関節リウマチ。資格:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本リウマチ学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本骨粗鬆症学会評議員、日本骨形態計測学会評議員

この記事の目次

動作の制限は特にない

退院後2週間くらいで、受診していただきます。日常生活に戻ると入院中には考えつかなかったような、色々なことが不安になるようです。不安を解消してあげることが、退院後最初の診察の目的です。この時期はまだ、静脈やリンパの流れが回復していないせいで、足がむくみやすいです。日中でも、暇を見つけて心臓より足を高くして横になることを勧めています。
術後は日を追うごとに調子が良くなりますが、2~3カ月は、夜中にシクシクと痛むようなこともあるようです。膝は体の中で最も大きく、皮膚の下はほとんどが関節です。この大きな関節を人工物に入れ替えたのですから、手術後の違和感は簡単には消えないのは当然です。とはいえ、3カ月も過ぎれば、「手術をしてよかった」と実感する方ばかりです。
「旅行に行けるようになった」「今まで我慢していたことができるようになった」と喜んでくださる方も多いのですが、「足がまっすぐになったのがうれしい」とおっしゃる女性が多いことはわたしにも意外でした。手術後の定期的な診察の時には、自慢げにピタッとしたズボンをはいてみえる方もいらっしゃいます。
わたしから制限や、禁止する行動はありませんが、生身の膝ほど衝撃吸収作用がありませんから、飛んだり跳ねたりはしないほうがいいでしょう。また、正座も難しいでしょう。普通の生活は何も問題はありませんし、海外に旅行に行くこともできます。

手術後の腫れや痛みは、すぐに受診を

人工関節で特に気を付けることは細菌感染です。手術直後に感染することはめったにありませんが、術後何年もたってから、歯槽膿漏や膀胱炎で繁殖した細菌が血液にはいって人工関節の周囲に運ばれてくることがあります。急に膝が腫れたり、痛みを感じたら、すぐに受診してください。早い段階なら、手術的に関節を洗って、抗菌薬を投与することで治癒することもあります。
人工膝関節の寿命は通常は30年くらいではないでしょうか。海外の報告ですが、1980年代、90年代の人工膝関節の20年生存率は約95%です。人工関節も徐々に進歩していますから、今の機種なら、もっと長持ちするかもしれません。 異常はないか定期的な診察を受けるようにしましょう。わたしは手術をした患者さんを、術後から半年に1度経過観察しています。患者さん同士も顔なじみになり、仲良く情報交換をする様子もみられます。

患者さんにメッセージをお願いします

田中 伸哉 先生

あわてて手術をすることはありません。まずは保存療法をしっかり行って下さい。
「膝が悪くなるといけないから」と活動を制限していては、人生が楽しくありません。やりたいことは何でもやってください。それで、痛みが強くなって、好きなことができなくなったら、その時は手術をしましょう。手術方法については診察してみないとわかりませんが、ある程度の年齢、変形が酷い、もしくは関節リウマチによる膝関節症であれば人工膝関節置換術を勧めます。
高齢だからとあきらめることもありません。90歳に近くなってから、ついに痛みを我慢できなくなり、手術を希望されるケースもあります。
手術を受けるときには、手術数を頼りに施設を探すのは賢明とは思いません。その施設では、軽い変形でも手術をしてしまっているかもしれません。
どの医師の手術の評判が良いかということも大事ですが、その医師とずっと付き合えるか、何かあればすぐに相談できるか、ということも重要なポイントです。信頼できる先生を探しましょう。




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