関節治療の専門医に聞いてみました!

第164回 予防にも治療にも、手術後にも大事な筋力強化

ドクター
プロフィール
1987年 川崎医科大学卒業。1993年 大分医科大学整形外科学講座助手、1996年 大分市医師会立アルメイダ病院 整形外科部長、2009年9月 伊達赤十字病院 整形外科部長を経て、2017年5月より現職。
資格: 日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医
エリア 福島県タグ
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清水 啓 先生

加齢とともに現れる膝の痛み。でも、「膝が痛いときの治療法を意外と知らない方が多い」と話す、ときわ会常磐病院 整形外科部長の清水啓先生に変形性膝関節症の予防法や治療法についてうかがいます。

膝痛の原因は歳のせいですか?

大腿四頭筋を鍛えれば、膝痛の予防になります。

大腿四頭筋を鍛えれば、
膝痛の予防になります。

膝痛の原因、関節リウマチ(RA)などの方を除けば、そのほとんどが使い過ぎや負担のかけ過ぎが考えられます。例えば、若い頃にスポーツなどで靭帯や半月板損傷など膝を傷めたことがある方や、常に低い姿勢をとったり、重いものを持つなどの動作を続けてきたような方が、年齢を重ねるごとに膝関節の変形が見られることが多いようです。
過度の労働や加齢が大きな誘因であることは間違いありません。
変形性膝関節症は圧倒的に女性に多く見られます。それは、女性のほうが筋肉量は少なく、膝関節を支える筋肉、主に大腿四頭筋をはじめとして、下肢の筋力や体幹そのものが弱いというのが一つの要因かもしれません。逆にいえば、意識して筋力をつけることが、膝痛や膝関節変形の予防にもなるということになります。

変形性膝関節症の治療法は?

変形性膝関節症と診断された場合、残念ながら、薬などを用いても一度すり減ってしまった軟骨の完全な修復は期待出来ません。軟骨は一度減ってくると再生が難しいようです。
そのため、まず痛みを取る必要があります。最近は鎮痛剤がとても進歩していて、種類も多く、急性期や慢性期の痛みを軽くする効果は期待できます。それでも痛みや、膝の腫れが治まらない時には、ヒアルロン酸などの関節内注射を行います。
初期の段階で正しく診断したうえで、まず痛みを軽くしてから、加えて筋力のトレーニングを強化することが最初の重要な治療法です。メタボの方は50歳を超えると痩せにくくなりますから、第一に心がけてほしいのが筋肉を鍛えて、少しでも筋肉量を増やすことです。筋肉は、歳をとっても頑張れば強く増やすことができます。
筋肉が強くなり膝が安定すれば、歩きやすくなります。軟骨が半分以上失われ手術を覚悟して受診した方でも、筋力トレーニングなどの保存療法を頑張ると、手術しないですむことも珍しくありません。
診察の際に患者さんに、目の前で歩いてもらいます。椅子から立ち上がったりベッドから起き上がったり、普段どういう動きをしているかを観察します。そのあと、片足だけで立ってもらいます。股関節を90度曲げて、片足で何秒立てるか……。70歳以上になると、それが難しくなります。
片足で立てないと転倒しやすくなるし、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)に当てはまる方が非常に多いのです。ロコモになるきっかけの多くが、変形性膝関節症というわけです。

手術を勧める目安は?

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症の
レントゲン

保存療法でもあまり効果が見られなければ、手術を考えます。中でも人工膝関節置換術はADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)を格段に向上させるので、今は、比較的若い50歳台の患者さんにも人工膝関節置換術を行う場合も出てきています。
人工膝関節置換術とは、傷んで変形した膝関節の表面を人工のものと取り換える手術です。以前よりも、手術の技術も進歩しましたが、人工関節の軟骨に当たる部分(摺動面)の性能が非常に良くなり、20年以上も長持ちするようになってきています。
膝痛のせいで今までの生活に障害が多く出ているようなら、人工膝関節を勧めています。
例えば、1キロくらいは平気で歩けていた方が、痛くて散歩もできなくなったらとても不自由を感じるでしょう。大好きな旅行にも行けなくなったら、ストレスになります。そういう方にも人工膝関節置換術はいい方法です。


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