関節治療の専門医に聞いてみました!

第25回 膝の治療は健康的な人生に向けてのきっかけです。
痛みを覚えたら、できるだけ早い時期に整形外科に相談を

ドクター
プロフィール
日本整形外科認定医、日本整形外科リウマチ医、日本リウマチ学会専門医
エリア 徳島県タグ
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畳の生活が主流である日本人は、畳から立ち上がる、しゃがむ、正座をするなど膝を深く曲げる動作をする機会が多いために、変形性膝関節症にかかる可能性が高いといわれています。これは、加齢によって膝の軟骨が失われ、痛みや動きの制限が生じる疾患ですが、早めに筋力トレーニングなどの予防法を行うことで重症化を防ぐこともできますし、保存療法や人工関節置換術など、治療法もいろいろあります。「どんな治療法を選ぶかは、その人の人生観の問題です」と話す、麻植協同病院 副院長である三上浩先生にお話を伺いしました。

中高年になると、膝の痛みや不具合を訴える人が増えてきますが、その原因は何ですか?

中高年の人たちの膝の痛みを引き起こす病気の代表的なのが、「変形性膝関節症」です。膝の関節を形成している骨や軟骨がすり減ったり、欠けたり、変形したりして、膝の痛みや動きに制限などがみられる病気です。症状が進行すると、関節内にある関節液という液体が過剰に分泌されて、膝に水がたまることもあります。これらの症状は老化現象の一つではありますが、「変形性膝関節症」は治療可能な病気でもあります。
膝関節の変形の始まりは、実はもっと以前から起こっています。「お肌の曲がり角が、お膝の曲がり角」、これは膝が痛くて曲げられないと訴える患者さんに、私がいつも言っている言葉です。加齢に伴い、だんだん皮膚の弾力性がなくなっていくように、関節も、軟骨の弾力性が失われていき、それが骨や軟骨の摩耗につながります。「この頃、何だか肌の荒れが気になるわ」と感じ始めたころに、関節軟骨の老化も始まっているのです。
膝の加齢現象は少しずつ進行していき、50代~60代になって、膝が思うように曲がらない、歩くと痛いなどの症状が現れてきます。

変形性膝関節症の症状と治療法を教えてください。

変形性膝関節症の症状は、初期・進行期・末期の段階に分けられます。
初期は、立ったり歩いたり、動作を始めるときに膝が痛みますが、ある程度動き続けていると痛みは止み、入浴後などには軽くなります。坂道や階段の上り下りをするとき、特に階段を下る際に痛みが増すのも特徴です。
初期の段階では、柔軟体操やストレッチなどをして関節を軟らかくするように心がけたり、膝に負担がかからないような動作を工夫したりするだけ、ずいぶん楽になります。膝にかかる負担をできるだけ軽減するために、何よりも体重を減らすようにアドバイスをしています。さらに膝関節を保護し、固定して動きを安定させるためのサポーターやコルセットなどの装具を取り付けるのも有効です(装具療法)。患部を温める温熱療法や痛みを取る薬物療法もあります。これらを保存療法といいます。
進行期になると、膝の内側の関節の軟骨が変性・摩耗して、徐々にO脚(内反変形)になります。また、膝関節の内側の痛みが強くなり、軟骨を支える骨も削れてしまい歩きづらくなります。また、保存療法を続けても症状が治まらなくなってくると、手術療法を考えることになります。手術には骨切り術と人工関節置換術がありますが、進行期に行うのは、「高位脛骨骨切り術」です。これは、骨の一部を切り取ることで骨の向きを変え、脚がまっすぐになるように矯正する手術方法です。
なお、少し前までは、人工関節はできるだけ入れないほうがいいという風潮がありましたが、人工関節そのものの品質が向上し、耐用年数が延びてきたので、最近の考え方は違ってきています。骨切り術は骨折と同じなので、骨がきちんとつくまでの間、膝に体重をかけられないという欠点があります。つまり術後しばらくの間は動けないため、仕事がある人は休まなくてはなりません。進行期の患者さんは年齢的にも比較的活動性が高い人たちが多いのですが、そういう人たちが2~3か月も安静にしていなくてはならないのは辛いことでしょう。それに比べて人工関節は、すぐに痛みが取れて動くことができますから、早く社会復帰したい人には、人工関節は喜ばれます。

変形性膝関節症の症状と治療法

症状治療法
(保存療法)
症状治療法
(保存→手術)
症状治療法
(手術療法)
立ったり歩いたり、動作を始めるときに膝が痛みますが、ある程度動き続けていると痛みは止み、入浴後などには軽くなります。特に階段を下る際に痛みが増すのも特徴です。
  • ・柔軟体操やストレッチなどをして関節を軟らかくする
  • ・何よりも体重を減らす
  • ・装具療法(膝関節を保護し、固定して動きを安定させる)
  • ・温熱療法(患部を温める)や薬物療法(痛みを取る)
膝の内側の関節の軟骨が変性・摩耗して、徐々にO脚(内反変形)になります。また、膝関節の内側の痛みが強くなり、軟骨を支える骨も削れてしまい歩きづらくなります。
  • ・保存療法では、症状が治まらなくなり手術療法へ
  • ・高位脛骨骨切り術(骨の一部を切り取ることで骨の向きを変え、脚がまっすぐになるように矯正する手術方法。術後しばらくの間は動けない)
安静時にも夜間にも痛みだし、レントゲンでも明らかに軟骨が破壊されています。
  • ・人工膝関節置換術(関節を金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換える。3日目くらいからリハビリ開始で入院期間は3週間〜1ヶ月)

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