関節治療の専門医に聞いてみました!

第28回 膝の痛みはロコモティブシンドロームの大きな誘因
症状を早期発見・予防・治療して、健康寿命を延ばしましょう!

ドクター
プロフィール
日本整形外科学会認定専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本人工関節学会評議員、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会評議員 、リウマチの外科研究会評議員、東日本整形災害外科学会評議員、ISAKOS(国際関節鏡、膝、スポーツ医学学会)会員
エリア 宮城県タグ
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人工膝関節置換術は、何歳くらいまで受けられるのでしょうか?

手術の風景

人工膝関節置換術に年齢制限はありません。それよりも個々人の健康状態や意欲が大切です。当院でも、人工関節置換術を行う人のおよそ5人に1人は80歳以上、半分が75歳以上、平均年齢は74歳になっています。しかし、やはり80代よりも70代の方が、回復が早くリハビリもスムーズに行うことができます。83歳で手術をし、とても状態が良く快適な毎日を送ることができて喜んでいる人が、「あ~、もっと早く、70代のうちに手術をしておけばよかったと後悔している」と話してくれました。実際に手術をするかどうかを決めるのは本人ですが、手術という方法もあるという情報は早めに伝えてあげなくてはいけないと思っています。
なお、両膝とも変形性膝関節症になっていることが多いですから、痛みがある場合は両膝とも手術した方が術後のQOL(生活の質)は高くなります。当院では両膝を手術する際は片方ずつ行っています。具体的には、片方の術後6か月後、膝や全身の状態が安定したのを見計らってから、もう片方の手術を行います。

患者さんの術後の生活や、手術に対する満足度について教えてください。

大腿四頭筋のトレーニング


片脚の膝を伸ばして、椅子の高さくらいまで上げ、10秒間そのまま保持します。

静かに脚を下し、3~5秒間休憩して、また脚を伸すことを10〜20回くらい繰り返します。反対の脚も同様にします。

※ただ脚を上げるだけでなく、膝をできる限り「伸ばす、伸ばす」と意識することが大切です。

術後は多くの人が約3週間で退院となり、杖をついて自分で歩けるようになって帰っていきます。当院では、普通は2日目から車いすで動き、1週間で歩行器につかまって歩く練習をします。退院後のリハビリ、トレーニングも大切です。主なプログラムとしては、膝を曲げたり伸ばしたりする練習、筋力訓練の指導などを行います。術後半年や1年は少しずつでも良くなってきますから、訓練はしっかりと続けてほしいですね。また手術の評価ですが、これまでは術後に膝が何度曲がったとか、変形が治ったなどと医師が判断していました。ところが今は、患者さん自身の感じ方で評価が行われるようになっています(日本版膝関節症機能評価尺度:JKOM)。それによると、片方だけに人工関節置換術を行った場合でも、手術後は手術前より有意に改善していますが、両膝とも行った場合はさらに良くなり、その状態は2~3年間維持されています。
腫れや熱、痛みが取れて、手術したことを忘れるくらいになるのには、大抵6か月はかかりますから、それまであせらずにリハビリをしましょう。ただし、患者さん同士で治る競争をしてはいけません。それぞれ手術前の状態や変形も違うのですから、手術後の経過も一人ひとり違います。

人工関節はどのくらい持ちますか?また、合併症についても教えてください。

術後の定期検診は忘れずにお願いします。

人工関節の耐用年数ですが、最近大きく伸びており、15年から20年たっても100人のうち95人くらいは大丈夫だろうと言えるようになってきています。これは、人工関節そのものの耐久性が上がったことと、医師の技術のアップもあるでしょう。ただし、残りの5人くらいは、「入れ替える(再置換術)必要があります」と説明をしています。途中で人工関節がすり減ったり緩んでくる可能性もありますので、手術後は、半年から1年ごとに定期的にレントゲンを撮ってもらい、人工関節の状態をチェックする必要があります。
また人工関節置換術において、最も大きな合併症は感染です。統計によると1%くらいは感染が起こる可能性があるようです。入院中は血液検査や創部の観察により感染の有無の判断はできますが、術後、何年か経ってから、別な部位から血液にのって細菌が飛んでくることにより、感染を起こして膝が腫れてくるというケースもあります。感染の場合には早期の処置が必要ですので、退院後でも急に腫れたり、熱を持ったりした時はためらわずに受診をお願いします。なお、糖尿病は最大の危険因子ですから、きちんとコントロールしたうえで手術を行う必要があります。

手術後にやってはいけない動作やスポーツなどはありますか?

術後、あまり激しいスポーツは勧められませんが、普通の日常生活を送る分には何をしてもいいと思います。むしろ、せっかく手術をしたのだから、家の中にこもっていないで、好きなことは何をしてもいいと思います。私の患者さんでは、ゴルフ、テニス、おどり、庭いじり、畑仕事などいろいろなことをしているようです。ただし、ジョギングや山登りなど、膝に衝撃を与えるような運動は避けてください。健康のために歩いた方がいいといわれていますが、膝に負担がかかりすぎないような動きをすることが大切です。自転車や水中歩行などは勧められますが、基本はその人に合った運動をすればいいと思います。大切なのは、手術後も定期的に経過を観察してもらうことです。

膝関節の痛みに悩んでいる人へ、先生から一言お願いします。

まずは、近所に整形外科の「かかりつけ医」を持ちましょう。変形性膝関節症の治療法はいろいろあります。最終的に人工関節を勧められるにしても、その前にまず保存療法を行ってみることが大切です。
人工関節のデザインや材質、そして医師の技術も進歩しています。私たち整形外科医としても、かなり自信を持って手術を勧められるようになりました。膝の痛みのために不自由を感じている人は、我慢しすぎないで、早めに整形外科医に相談してください。


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