関節治療の専門医に聞いてみました!

第34回 膝の痛みを抱えて我慢するより、まずは病院で専門医に相談を

ドクター
プロフィール
昭和58年卒。日本整形外科会専門医。日本体育協会公認スポーツドクター。日本肩関節学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会、日本リハビリテーション医学会
エリア 福岡県タグ
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「これは手術だな」と先生が思われるときの基準はありますか?

まずは臨床症状、患者さんの痛みの様子や訴えですね。非常に生活に困っていらっしゃるということが一つと、膝のぐらつきがある・膝の曲りが悪い・膝が腫れているといった、医師が見る臨床症状に着目します。それと、レントゲンの所見ですね。これらを総合的に判断して、「手術した方がいい」という感触を持って患者さんにお話をします。ただ、人工関節というのは最終的な治療法だと考えています。もともとある骨を削ってしまうわけですから、ある程度取り返しのつかないところまで来ている患者さんにとっての手術ですし、最終的な手段のため、安易には勧めません。しかし、日常生活など非常に困っている患者さんがおられたら、「この手術をしたらもっと楽に歩けるようになりますよ。もっとQOL(生活の質:Quality of Life)が上がりますよ」というような話はします。
一番重要なのは、すべては患者さんの満足のために、ということではないでしょうか。患者さんとの話し合いの中で、この患者さんは何を一番求めていらっしゃるのかということを念頭にお話ししています。手術をあんまり受けたくないという患者さんに対して、無理やり手術を奨めたりはしません。一人ひとりのニーズに合わせて治療することが私たちの仕事だと考えています。

人工膝関節置換手術のメリットについて教えてください。

術後は軽度のX脚となります。
関節面の摩耗が激しいため、人工関節を固定する金属製の補填材を入れています。

人工膝関節置換術の最大のメリットは、関節の傷んでいる部分を取り換えることで痛みを取り除き、膝自体もぐらつきのない安定した膝になることです。それによって、歩くのが楽になり、日常生活が楽になります。また、10~20年前に比べると、医師側もメーカー側も格段に技術が進歩しています。人工関節の素材も大きく進歩しています。中でも、金属部分の間に挟むポリエチレンの耐久性がかなり上がっており、より摩耗しにくくなりました。昔は10年もてばいい方だったのですが、現在では約90%の確率で20年もつと言われています。当院では、70歳以上の方には特別なことがない限り一生持ちますよというふうにお話をしています。
術後は生活が一変したとよく言われます。病院に行くこと自体もためらっておられる方は結構おられるのですが、実際に手術をすると1週間、2週間くらいで歩けてしまうのですね。その時によく聞くのが、「もっと早くすればよかった」という声です。例えば、ある方は3年間迷っていて、その間、旅行にもどこにも行けずにひたすら家にいるだけの生活を送っていたのに、手術したら歩けるようになって、旅行にも行けたと非常に喜ばれました。

手術からリハビリまでの主な流れを教えていただけますか?

CPMの一例

内科的に特に問題がない場合は、手術の前日に入院し翌日に手術を行います。まず麻酔を行い、消毒をして、仰向けの状態で休んでいただき、膝の正面を約8~12㎝くらい切開します。それから関節を開いて、摩耗した部分を含む関節の面を削ります。削るサイズは事前にある程度決めておきますが、手術時に再度測って損傷部分を切除して、最終的に人工関節をはめ込みます。一般的ではありませんが、当院ではまず膝蓋骨(お皿の骨)から削り、続いて大腿骨の下面、脛骨の方の上面、大腿骨の方の前、後という流れで削っていきます。
手術の麻酔は全身麻酔と腰椎麻酔、いわゆる下半身麻酔を行います。全身麻酔は術後すぐに覚めます。下半身麻酔の方は二本立てでやっていて、術後の痛みを軽くするための麻酔(持続硬膜外麻酔)を丸1日、また、薄い腰椎麻酔がその間ずっと効いています。本格的なリハビリは術後2日目から開始します。まずはCPMという機械を病室に持っていき、その機械に患者さんの足を乗せて動かすという、他動的な運動から始めます。状態が良ければ、3日目からはリハビリ室で歩行練習を開始します。ほとんどの方が2週以内には杖を持って廊下を歩けるようになります。

手術時間はどれくらいですか?また入院期間についても教えてください。

リハビリテーションルーム

手術時間は平均で約100分、入院期間は施設によって様々です。手術だけして後は地元に戻ってリハビリしてもらうという病院もありますが、当院では、リハビリ通院の必要がない状態で退院していただくため、入院期間は1か月~1か月半くらいです。外が自由に歩けて階段の上り下りができる、というのが退院の条件になりますが、これらの動作ができれば、大体の日常生活は問題なく送ることができます。ただ、これもケースバイケースで、「早く家に帰って家事をしたい、その代り毎日リハビリに通う」と言われる患者さんは早く退院していただくこともあります。


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