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専門医インタビュー

つらい膝の痛み、我慢していませんか? いくつになっても自分の脚で歩くための人工膝関節置換術

この記事の専門医

広島県

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昭和63年 広島大学医学部 卒業。平成11年 スウェーデン イエテボリ大学 臨床科学移植医学 留学(軟骨細胞培養移植)。平成14年から中国労災病院勤務。平成24年6月に中国労災病院 人工関節センターの開設に伴い現職に。
日本整形外科学会 専門医、日本整形外科学会認定 スポーツ医、日本人工関節学会 会員、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS) 評議員。

この記事の目次

手術にはリスクもあると聞きました。

手術のリスクとしては、低い確率ですが、感染症になる恐れがあげられます。清潔な無菌室(クリーンルーム)で手術を行いますが、細菌やウイルスなどによる感染が1%程度起こるといわれています。また、手術中や術後は、静脈に血栓が出来る「深部静脈血栓症(いわゆる、エコノミー症候群)」や、心筋梗塞・脳梗塞・糖尿病などの持病の合併症などにも注意しなければなりません。また、金属アレルギーが疑われる方には、事前に皮膚科の先生に診ていただいた上で、アレルギーのある方には、その方に合った製品を使用しています。このように、他の診療科での診断が必要になる場合もあるため、幅広い診療科のある総合病院で手術をされる方が懸命だと思います。その方が、もし何か起こっても適切な判断ができるでしょう。
また、術後の生活習慣や活動によっては、人工関節に緩みや破損などが生じる場合もあります。このようなリスクを回避するためにも、退院後、月に1回は定期的な診察をお願いしています。また、術後半年からは3ヶ月に1回くらいのペースでの診療をお勧めしています。その間、これまで通りと変わりなく日常生活を送っていただいて何ら支障はありません。

主なリハビリ内容や退院後の生活準備について教えて下さい。

ひざの曲げ伸ばし運動

歩行練習風景

まずは、膝の屈伸や歩行などのリハビリをしていただきます。手術直後は2日間個室で感染を予防しますが、術後2日目から、機械を使って膝の曲げ伸ばしを始めます。そして3日目から車いすでリハビリ室に出ます。術後10日で抜糸し、術後1~2週間で徐々に荷重を増やして歩行練習を行い、2~3週間で杖での歩行練習や階段昇降の練習をします。リハビリの目標は、きちんと日常生活をおくるようになることなので、リハビリ内容もそれに沿ったプログラムとなっています。杖や押し車を使って歩行訓練をしたり、階段や中庭などの施設を使ったり、より日常に近いリハビリを行うことで、患者さんも退院後の生活に安心して臨んでいただけますし、自分の脚で歩けるという自信にも繋がってくるようです。また、手術前に患者さんの住宅環境や生活環境を色々お聞きして、必要があれば、退院後に手すりや入浴リフトなど介助用品の購入や自宅改装なども提案しています。呉市の場合、自宅改造の手続きを呉市が行ってくれるということもあり、申請して2週間くらいのスケジュールでの改装が可能です。

術後の日常生活において、気をつけることや心掛けるべきことは何ですか。

日常生活ではイスやベッドを使っていただくよう勧めていますが、その他の動作として、特に日頃から気をつけるべきことはありません。「可動域に気をつけて下さい」、「筋力をつけて下さい」というお願いはありますが、正座などについても特に禁止事項を設けてはいません。スポーツに関しては、アメリカでは有名なテニスプレーヤーが人工関節手術を受けた後もテニスをしているケースもありますし、プロゴルファーが人工関節手術を受けたりしていますが、衝撃性が強いスポーツはあまりお勧めしていません。

現在、膝関節の痛みに悩んでいる方へ、先生から一言お願いします。

膝に不調を感じたら、その人にとって何をするのがベストなのか一緒に考えてもらえる病院を見つけて治療に取り組んで下さい。症状が初期の状態なら、減量と適度な運動で治ることもあるため、「予病」に取り組むことが大切です。特に肥満の方は、近所の方々とウォーキングや運動していただくなどして、個々の健康意識をどんどん高めて予防することを心掛けて下さい。
また、膝に痛みを感じるようになったら、我慢せず、できるだけ早く病院を受診して下さい。そこで治療を受けて、それでも症状が改善されない場合には、総合病院で診断してもらいましょう。人工関節手術は決して急いで行うべきものではないので、ご本人だけではなく、ご家族も納得された上で手術にのぞんでいただくのが一番良い方法だと思います。痛みを感じているが受診をしていない方も、まだまだ多いと思います。自分で「これくらいの痛みならば、まだ大丈夫」と思っていても、実際にレントゲンで診断すると症状がかなり進行している場合もあります。体力が落ちてきたり、痛みがひどくなってきたりしてから病院を探し始めるのではなく、普段からご本人と共に、ご家族の意識も高めておいて貰えると嬉しいですね。


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