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専門医インタビュー

歩けるようになることで、その後の人生は激変します。 人工膝関節置換術のメリット・デメリットとリハビリの重要性

この記事の専門医

大分県

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昭和44年生まれ。東海大学医学部卒。平成9年、大分医科大学(現大分大学医学部)入局。平成25年から現職。日本整形外科学会、日本リウマチ学会、日本リハビリテーション学会、西日本整形外科学会、人工関節学会、骨折治療学会所属 エリア 大分県

この記事の目次

人工膝関節全置換術について詳しく教えて下さい。

手術室の風景

手術の対象になるのは、進行期~末期の変形性膝関節症の人です。軟骨がすり減り、骨と骨の隙間がなくなって関節が内反変形しており、骨棘などが飛び出していたら、全置換術を検討する必要があります。また、リウマチなどで膝関節が壊れている人も手術の適応になります。その他、骨折などの外傷により、関節が変形してしまった人も対象になります。 手術時間は平均で1時間15分くらい、短い場合は1時間かからないこともあります。変形の度合いが激しいと、骨棘を取ったり屈曲硬直して曲がったままの膝を伸ばすために後十字靭帯を温存して手術を行ったりと、手間が少し増えるために手術時間が少し長くなります。入院期間は、リハビリも含めて1か月くらいを設定しています。患者さんの多くは70歳代後半から80歳代前半で、約8割が女性です。

実際には、どのような流れで手術は行われるのですか?

まず、膝の真ん中を切っていきます。平均で15cmくらい切っていますね。そして、膝蓋骨(膝のお皿)の内側から関節の袋を開けていきます。膝蓋骨を反転させ関節全体がよく見えるようにしてから、大腿骨側から膝の損傷面を切ります。次に、膝蓋骨の下になる脛骨の損傷面を取り除き、伸展屈曲のバランスを整えます。大体、23~24mm程度のあきがないと人工関節が入らないので、そのためのスペースを作ります。次に90度に曲げた状態で、左右で同じ厚さになるようにスペースを作ります。人工関節がカチッとはまるように、インプラント形状に添って切除面を整えます。その後、インプラントをはめて動きを確かめてから、靭帯のバランスをチェックして異常がなければ固定する、という流れです。

人工膝関節の一例

術後の痛みですが、術中は全身麻酔と硬膜外麻酔を併用して行っており、早期からリハビリができるよう、痛みをコントロールしています。硬膜外チューブは麻酔の段階から、24時間持続的に腰から入れ続けます。チューブを抜いた後は氷で冷やし、痛み止めや炎症止めの投薬で対応します。座薬を使うこともあります。術後2~3日の痛みが一番激しいのでそこをうまくクリアすると、その後のリハビリ中もあまり痛みません。

人工膝関節置換術のメリットとデメリットについて教えてください。

手術の大きなメリットは、痛みが格段に軽くなることですね。また、痛みが取れて歩きやすくなることで、今まで脚を引きずっていた人が安定した歩行をできるようになるなど、歩容が良くなることも特徴です。O脚の脚が真っ直ぐに伸びて、姿勢が良くなるのもメリットの一つといえるでしょう。手術のデメリットとしては、傷から菌が入り感染症を起こす、血栓を作ってしまう、インプラントが緩んでしまうなどの「合併症」があげられます。ただ、近年は手術手技のみならず手術器機も大きく進歩しており、それ程リスクの高い手術ではなくなりました。術後は、皆さん、雰囲気が若返られます。「脚が真っ直ぐになったので、ジーンズやスカートがはけるようになった」、「歩き方が良くなったと褒められた」、「旅行に行くことができた」などの声をいただいています。

人工膝関節置換術のメリット・デメリット

メリット

  • 痛みを大幅に和らげることができる  
  • 安定した歩行を取り戻し、歩容が良くなる  
  • 脚が真っ直ぐに伸びて、姿勢が良くなる  
  • 他関節への負担を軽減することができる  
  • 活動範囲が広がり、QOLの向上につながる  

デメリット

  • 細菌感染に弱い
  • 術中・術後に、血栓ができることがある
  • 人工関節が緩む・摩耗する可能性がある

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