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専門医インタビュー

膝の痛みをあきらめないで。適切な治療で健康寿命を延伸!

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高知県

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日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会スポーツ専門医・リウマチ専門医、日本リハビリテーション学会専門医、日本リウマチ学会指導医・専門医

この記事の目次

人工膝関節置換術のメリットについて教えてください。

人工膝関節置換術の最大のメリットは、何よりも痛みが軽減されることです。患者さんの多くが、痛みから解放され、膝の動きがよくなり、活動性があがります。また、膝の変形も改善され、脚がまっすぐになることも大きな特徴です。手術の成功率も高く安定しており、医療保険も適用されるポピュラーな手術です。その他、入院期間が比較的に短いことから、日常生活に戻りやすいというメリットもあります。骨切り術は、骨がくっつくまで安静にする必要があることから、1ヶ月ほど入院期間が必要となりますが、人工膝関節置換術の手術時間は1時間30分ほど、入院期間は2.5週間を目安にしています。傷口は、以前は膝を20~25cm程度切っていましたが、現在では膝を10~12cm程度切開して行う「低侵襲の手法(MIS)」が採られるようになりました。

人工膝関節置換術後のX線(正面、側面)

手術は、事前にMRIやCTで膝の中の様子を精密に調べ、そのデータに基づいて行います。筋肉を切らずに靭帯へのストレスも少なくて済むため、身体への負担が少なく早期回復が可能になります。患者さんの中には、骨切り術で十分に改善できる場合でも、体への負担が少なく回復までの時間が短いことから、人工膝関節置換術を選ぶ人もいらっしゃいます。特に高齢者の場合は、入院期間が長くなると体力的な落ち込みはもちろん、精神的な落ち込みから認知症を発症することもあるため、人工膝関節置換術の優先的に検討します。ただし、手術はレントゲンだけを見て決めることはありません。手術を検討する際は、自分で自分のことができるように、健やかに日常生活が送れる「健康寿命」を目標にして、必ず患者さんと一緒に考えます。

人工膝関節置換術は何歳くらいの人が適応になるのでしょうか?

人工膝関節の一例

以前は、人工関節そのものの耐用年数が10~15年くらいでした。そのため、高齢になってから、インプラントの劣化に伴う再置換術を避けるためにも、65歳以上の人に限って手術をしていました。しかし、製造技術や材質の進歩などにより人工関節の耐用年数が飛躍的に伸びたため、現在は幅広い年齢の人に適応しています。外傷性の変形膝関節症や関節リウマチなどの疾患を持っている人の中には、年齢が若い人もいます。今後の長い人生で、膝の痛みのために仕事やリクリエーションを我慢し日常生活を制限して生活するのは、非常に残念です。若い人の場合、できる限り人工膝関節置換術以外の方法を検討しますが、どうしても改善が見込めない場合には、手術を行って生活の質を上げることを目指します。
具体的な手術年齢としては、関節リウマチの患者さんの場合は30代・40代から、変形性膝関節症の場合は50代からと考えています。また、80代の高齢の人でも、「痛みなく歩きたい」と手術を選択される人が増えています。リハビリに耐えられる筋力と気力があり、内科的な疾患が特になければ、手術年齢に上限はありません。

手術を受ける前に何か気をつけることはありますか?手術のリスクについても教えてください。

手術の前だからといって特に安静にする必要はありません。むしろ、しっかりと筋肉を鍛えて動きの悪いところは術前に改善し、できる限り動きを良くしておきましょう。手術を受けても、筋力がなければスムーズに歩けません。肥満傾向の人は体重をコントロールし、膝への負担を軽くするよう努力しましょう。手術前にはいろいろな検査を行いますが、その中の一つに金属アレルギー検査があります。近年、金属アレルギーのある人が増えていますが、人工関節は数種の金属を含む合金でできているため、アレルギーのない材質の人工関節を選ぶことが必要です。また、骨の強度のチェックや内科的な疾患のチェックも行い、身体をできる限りよい状態に近づけてから手術を行うことが大切です。

金属パッチテストのイメージ

人工膝関節置換術は骨を切る手術ですので、リスクやデメリットが伴います。具体的には、細菌による感染症や術中麻酔による合併症、術後の血栓症・塞栓症(いわゆる、エコノミークラス症候群)などのリスクがあります。これらのリスクについては、予防策を含め事前にお話しして、患者さんの不安を十分取り除いてから手術に望みます。感染予防については万全を期し、術前から虫歯を含めて感染巣のチェックを行います。何か異常がみつかれば、先にしっかり治してから手術に臨みます。手術は滅菌したバイオクリーンルームで行い、術後も数日は個室に入っていただき家族以外との接触を少なくしています。切開が小さく手術時間が短いMISは、合併症のリスクを下げるという点からも有効な方法と考えています。


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