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専門医インタビュー

仕事が繁忙期を迎える前に 膝の痛みを解消して快適な日常を取り戻そう!

北海道

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金沢医科大学医学部卒業後、北海道大学病院に勤務。釧路労災病院整形外科部長などを経て、平成21年から現職に。社団法人日本整形外科学会認定整形外科専門医、社団法人日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、財団法人日本体育協会公認スポーツドクター

この記事の目次

膝の痛みに堪え続けているのは辛いけれど、歳をとったら痛むのは仕方ないことだし、繁忙期には仕事も休めないし…と、ついつい無理を重ねていませんか? 中高年の、特に女性に多い膝の痛みですが、その原因の大半は「変形性膝関節症」によるものだといわれています。人体の要(かなめ)でもある膝に痛みを抱え続けていることは、普段の暮らしを楽しんで送る上でも日々の仕事で生計を立てていく上でも、非常に大きな障害になります。今回は、膝の痛みの原因や治療法としてのMIS人工膝関節置換術、術後リハビリの重要性などについて、釧路を含む道東エリアの地域事情も交えながら、整形外科医であり釧路三慈会病院・院長でもある西池 淳先生に伺いました。

歳をとると膝の痛みを訴える人が増えますが、原因は何が考えられますか?

膝関節のしくみ

膝が痛む代表的な原因としては、関節リウマチや半月板損傷、靭帯損傷などのいわゆるスポーツ外傷(スポーツに代表される過度の動きによって関節や骨が損傷する)などがあげられますが、中高年以降の原因として一番多いのは「変形性膝関節症」です。膝関節は、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿)の3つの骨から構成されています。大腿骨と脛骨の間にはクッション役の半月板や滑らかな軟骨があり、脛骨の上を大腿骨が滑り転がることでスムーズに曲げ伸ばしができるようになっています。その軟骨や半月板が長年の間にすり減って骨同士がぶつかり合い、亀裂や炎症を起こし痛みが生じるのが変形性膝関節症です。

変形性膝関節症のX線

患者さんは女性の方が多く、7:3くらいの比率です。年代的には70代~80代くらいまでが多く、患者さんの3分の2以上が70代です。この世代の患者さんは我慢強く、「歳をとったら仕方ないことだから」と痛みに耐え続けてしまう人も多いのですが、痛みで階段の昇降ができない・立ち上がると痛みでうずくまってしまうなどの症状があれば、すぐ病院に行って膝関節の専門医を受診してください。恐らくこの段階であれば、ヒアルロン注射などで進行を遅らせながら今後の治療方針を考えていくことができるでしょうし、そのまま放置すると症状は悪化し、すぐにでも手術が必要な状態になってしまいます。とはいえ、ここ釧路を含め道東エリアには第一次産業に従事する人が多く、通院や入院が簡単にはできないという地域事情があります。

道東エリアの地域特性や患者さんの特徴について教えてください。

まず地理的な特徴ですが、東京であれば一つの専門病院が担当する医療圏は10km〜20kmくらいですが、釧路管内にある整形外科病院の医療圏は150kmに及びます。羅臼や知床、阿寒から訪れる患者さんも多く、定期的に通院するとなると体力的にも費用的にもかなりの負担になるでしょう。そのため、膝が痛くても(近くに整形外科がないため)他科の病院で湿布をもらうだけで凌ぐケースは少なくありません。また、道東は農業や漁業など第一次産業に従事する人が多く、漁業であればサンマやサケが獲れる時期、昆布の時期など季節の予定が決まっています。どんなに膝が痛くても休んでしまうと生計が立てられないため、繁忙期は病院に来られず、閑散期を迎えてようやく釧路の整形外科を訪ねたときには、初診ですでに末期まで進行しているという患者さんがほとんどです。その他、以前診療したときは中程度の症状だった患者さんが、忙しさや遠さからヒアルロン酸注射のために定期的に通えず、数年経って痛みに耐えきれなくなって来院したら末期の状態になっていたというケースもあります。

道東エリアの医療機関には、広大な医療圏を
カバーしているという特殊性があります

そうなると、いずれも治療の選択肢は「すぐに手術」になります。患者さん自身が「人工関節かその他の治療法かを吟味し、人工関節を選択する」というより、必然的に「人工関節にしなければならない」ことになる状況が多いのが、この地域の特徴です。ただし、末期の患者さんでも本人がさほど痛みに苦しむことなく生活できているのであれば、人工膝関節置換術をあえて勧めることはありません。手術を勧める基準は、あくまでも「生計を立て、生活を営むための活動ができるかどうか」です。レントゲン所見だけで手術を決めるのではなく、患者さんの生活背景・仕事の内容・どこまでの動きができるか・手術のリスクと痛みの度合などを詳細に見極め、総合的に評価した上で決定します。地域医療には、患者さん一人ひとりの背景をきちんと見極めて治療方針を決めていくことが必要だと考えています。


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