メニュー

専門医インタビュー

膝の痛みは放置せず、歩けなくなる前に専門医に相談を!

富山県

プロフィールを見る

医学博士、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター

この記事の目次

60代から痛みを感じ始める人が多い「変形性膝関節症」。初期に受診すれば運動だけで痛みが改善することもあります。しかし痛みや変形が悪化してきたら、手術も選択肢の一つとして考えなくてはなりません。手術を選択するかどうかは、自分が今後、どんな人生を過ごしたいのかが大きなポイントです。「やりたいことがたくさんあるのに、膝が痛くて思うように動けない」という人には、「人工膝関節置換術」はとても有効な治療法でしょう。「ただし、歩けない状態になってからでは手術が受けられないこともあります。ぜひ、症状が進行する前に受診してください」とアドバイスするのは、富山県立中央病院の丸箸兆延先生。個々の患者さんに合った適切な治療法や人工関節を長持ちさせるポイントなどについてお話を伺いました。

膝の痛みの原因となる主な疾患は何ですか?

変形性膝関節症のX線

痛みの原因となる疾患で一番多いのは「変形性膝関節症」です。日本人にはO脚の人が多いため、膝の内側の軟骨がすり減って変形性膝関節症を発症するケースがほとんどで、男女比2:8と女性に多く見られる疾患です。軟骨がすり減る主な原因としては、加齢、過体重、重いものを持つ生活などがあげられます。人間は、平地を歩く時には体重の約4倍、階段の昇降時には体重の約7倍の負担が膝にかかるため、体重が重いとそれだけで膝への負担が増大してしまいます。そこに重いものを持つとさらに大きな負担が加わることになり、軟骨の損傷が早まってしまうのです。60代から痛みを感じ始める人が多いのですが、やはり若い頃から重いものを持つ仕事に従事している人、脚の形がもともとO脚傾向にある人が発症しやすいようです。

変形性膝関節症の治療法を教えてください。

膝の痛みや変形がまだ初期の人には、イスから立ったり座ったりするスクワットや、イスに座ったまま片脚ずつ伸ばして止める体操など、太もも周辺の筋肉である大腿四頭筋訓練を中心に指導します。膝の関節がグラグラと不安定な状態だと、軟骨のすり減りや痛みが出てきやすいため、太ももの筋肉を鍛えて膝関節を安定させることを目指します。通院で正しい運動療法の指導を受けた後、自宅でもトレーニングを継続していくことで、痛みがなくなってしまう人も少なくありません。また、脚の変形を矯正するために足底板という装具を利用する場合もあります。もちろん減量も症状を軽減させるためには非常に有効ですが、そのために膝に負担がかかるような運動をするのは避けましょう。水中ウォーキングや自転車こぎがお勧めです。高齢者は実際に自転車に乗ると転倒の危険性がありますから、エアロバイクを利用するのがよいですね。症状が進行していて運動や装具などで改善が見られない場合は、「骨切り術」を考えます。

骨切り術とはどのような治療法ですか?

骨切り術

骨切り術とは、脛骨を切って脚の変形を矯正する手術です。O脚の場合はX脚に近づけ、脚の形をまっすぐにします。適応は50代~60代までの若い人対象となりますが、人工関節と違って動きに制限がなく、摩耗の心配もありません。「今後も力仕事を続けなければならない」という人たちには、とても有効な手段といえるでしょう。中には、骨切り術だけで生涯対応できる人もいます。しかし、痛みや変形が進み、保存療法や骨切り術での対応が難しくなった場合には、やはり「人工膝関節置換術」が有力な選択肢になります。適応は60代以上の高齢者が中心で、全身状態に問題がなければ手術年齢に上限はありません。ただし、変形が強くても痛みがない人に対しては、人工膝関節置換術はお勧めしていません。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop