関節治療の専門医に聞いてみました!

第264回 大切なことは自分の脚で歩けること。
適切な治療を受けて
健康寿命を延ばしましょう

ドクター
プロフィール
専門:膝関節外科、リウマチ関節外科、スポーツ整形外科
資格:日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター
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二木 康夫 先生

変形性膝関節症の場合、どのような手術がありますか?

ナビゲーションシステム

ナビゲーションシステム

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症のレントゲン

年齢が50代、60代でスポーツの習慣があるなど活動性の高い場合は、高位脛骨骨切り術を検討します。これは脛骨を骨切りして脚全体のバランスを整え荷重のかかる軸を調整する手術です。O脚改善に加えて除痛効果にも優れています。それほど活動性が高くない場合は、部分的な人工関節(人工関節単顆置換術)を検討します。人工関節単顆置換術はむし歯の治療と似ていて、膝関節の傷んでいる部分を取り除き、同じ形の人工物に置き換える手術です。骨切り術、人工関節単顆置換術の良い点は、膝関節の動きを支えている十字靭帯を切離せずにすむことです。膝関節はとても精巧にできていて、前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯の4つの強靭な靭帯で寸分たがわぬ動きを実現しています。人工膝関節にするにしても靭帯を温存できる手術方法のほうが、術後の患者さん自身の満足度は高くなるのです。
ただし、単顆置換術の場合、手術手技に技術を要します。最近は、より精巧な手術を行うためにナビゲーションシステムといったサポート機器も登場しており、誤差を少なくして正確に人工膝関節を設置できるようになっています。

人工膝関節が正確に設置されていることが重要なのですね

人工膝関節全置換術後のレントゲン

人工膝関節全置換術後の
レントゲン

十字靭帯を切る全置換術の場合は、位置3ミリ、角度3度以内の誤差は、許容範囲だとされています。しかし、十字靭帯を残す単顆置換術の場合は、わずか1ミリの誤差であっても、術後、かなり違和感が出てしまうことがあります。さらに、患者さん自身の膝関節面の傾き(屈伸軸)を変えずに人工膝関節を設置することも、術後の違和感を減らすために重要だと考えています。つまり、位置や角度の誤差を限りなく少なくし、患者さん自身の屈伸軸を再現できると、人工膝関節を入れてもよりナチュラルな膝を取り戻すことが可能になってきています。

どのような状態になったら手術を決断したほうが良いのでしょうか?

疼痛閾値

疼痛閾値

人工膝関節の手術を受けるタイミングは、そのときの膝の痛みやつらさがバロメーターになると思います。つまり、保存療法を受けても膝の痛みが耐え難く、生活に支障が出ているようなら手術を考える時期だと思います。ただし、痛みの感じやすさ(感受性)というのは人それぞれです。この指標を「疼痛閾値」と呼びますが、例えば指先を針で少し刺してしまったときに、非常に痛いと感じる人は疼痛閾値が低く、逆に、さほど痛みを感じない人は、疼痛閾値が高いと言えます。痛みに対して過敏になっている人は疼痛閾値が下がっているので、人工膝関節の手術をしても痛みが残存しやすいです。リハビリもうまく進みません。そのため、疼痛閾値が低い人は、手術を行う前に疼痛閾値を上げるための薬物療法や運動療法を行うことが大切です。

痛みの感じやすさは、どんな検査を受けるとわかるのですか?

疼痛閾値が低いと思われる患者さんには、圧痛計を用いて痛みの過敏さを計る方法の他に、今の痛みの種類や感じかた、どんなときに痛むのかを調査してスコア化するアンケート調査を行う方法があります。こうした検査を行うと、患部の痛みに対する過敏症なのかを区別することができます。
人工膝関節置換術は、人工股関節の手術に比べると、手術後の患者さんの満足度がやや低い傾向があります。その理由を解析すると、術前から痛みに対する過敏の問題を抱えたまま手術に臨んでしまったために、術後、期待どおりの結果を得られなかったという調査報告もあります。過敏性の治療については服薬などで改善することができますので、どのくらい痛みを感じているのかということをしっかり医師に相談して、治療の進めかたを考えましょう。


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