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専門医インタビュー

人生100年の時代最後の10年間も自分の足で自由に動けるように

大沼 弘幸 先生

神奈川県

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平成6年 東京慈恵会医科大学医学部卒業、イタリア・スポーツ医学領域留学、平成8年 ドイツへ研修留学、平成22年 聖マリアンナ医科大学 整形外科学助教に復帰後、平成24年より講師に。平成26年 米国サンディエゴ スクリプス研究所留学、平成27年 聖マリアンナ医科大学 横浜西部病院 整形外科学 講師、整形外科 副部長
資格:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医

この記事の目次

歳を取ると多くの人が抱えている、膝の痛み。手術は怖いし、どのタイミングでどの病院に相談すればいいのか、悩む人も多いでしょう。「痛みをあまり我慢し続けないで、もっと気軽に専門医に相談を」と話す聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院の大沼弘幸先生に伺いました。

第一に加齢、リウマチや損傷、肥満なども

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症のレントゲン

膝の痛みは加齢によるものや、ほかに、関節リウマチ、半月板や靭帯の損傷や骨折後の後遺症だったり、中には脳溢血などの後遺症で麻痺が残り、片方の膝にかかった強い負担などが原因になっている場合も考えられます。また、変形性膝関節症は女性に多く見られることや、肥満が影響することも分かっており、骨粗しょう症の方にも多くみられます。
さらに生活背景が影響していると考えられる場合もあります。例えば、長い期間にわたり、立ったりしゃがんだりという動作を多く繰り返す仕事を行っていた人なども、比較的若いうちから膝痛が生じることがあります。
しかしながら、80歳になっても膝関節が変形していない人もいますし、見た目にはかなりO脚なのにそれ程痛みを感じていない人もいます。そのため、患者さんそれぞれの症状、不具合の程度に照らし合わせ適切な対応法を探ります。

最期まで自分の足で動きたい

変形性膝関節症は、動き初める時に痛いのが特徴ですから、じっとしていれば痛くありません。そのため、もう歳だしとあきらめて、出かける機会を減らして何年も過ごしてしまう人がいます。それでも、膝関節の変形が止まるわけでありません。膝をかばって動かさないでいると、靭帯や関節の袋(関節包)、筋肉が固くなり、膝が曲がりにくく伸びにくくなり、筋力も落ちるので、ますます歩かなくなってしまいます。本人はそれでも不自由していないと言うかもしれませんが、実は別の弊害を生じます。
動かない生活を続けていると、足腰の筋力が落ちるだけでなく、全身の体力が落ちてしまいます。骨粗しょう症が進行したり、肺炎を起こしやすく、いわゆる免疫力が低下して風邪をひきやすくなったり、ほかの病気になりやすいことが分かっています。歩くのは健康維持には大事なことです。

痛みを軽くしたうえで、筋力低下の運動を

保存療法

保存療法

膝が腫れぼったいな、曲がりにくくなったな、など違和感や痛みを感じたら、診てもらいましょう。驚くことに少し腫れた気がするんですと来た人の膝から、見た目は大して腫れているように見えないのに、関節の水が引けるんです。それだけで痛みが楽になるんです。溜まっていたんですね。人の感覚って凄いなって感じます。
まずは温めたり冷やしたり、次に痛み止めの湿布や薬を用いたり、ヒアルロン酸の注射などである程度痛みを軽くしたうえで、筋力をつける運動、リハビリを行う、というのが一般的な方法でしょう。実際にこれらの保存療法で痛みが軽くなり、動くのが楽になる人もたくさんいます。
ただし、3カ月間、同じような治療を続けているのに少しも改善しなければ、専門の病院に相談することを勧めます。専門というのは、人工関節の手術を行っている医療施設のこと。関節や骨の変形はいったん始まったら元に戻せませんから、最終的には手術で修復するしかありません。とはいえ、そういう専門医のところに行けば必ず手術になる、というわけではありません。関節の状態を正しく確認して、今はまだ保存療法で大丈夫という判断もあるでしょう。もし、虫歯かもしれないと心配になったら、多くの人はすぐに歯科医に行きます。初期の段階なら、歯を抜くこともなく、正しく歯を磨くことにより、それ以上悪くならないこともあるでしょう。歯科検診は定期的に受けるけれど、膝に関しては無関心という人が多いと思います。膝関節も虫歯と同じように予防が大事。今の状態がどういう状態にあるのか、手術の前にどんな方法を続けたら良いのか、今まで行ってきた方法で正しかったのか、専門医の適切なアドバイスを受けてください。

手術にもいろいろな方法がある

骨切り術

骨切り術

ヒアルロン酸の注射や軽い運動を続けて日常生活がアクティブに過ごせているなら、問題はないと思います。ただ、保存療法を続けているのに痛みが軽くならず、だんだん思うように動けなくなったり、我慢することが増えてくるようなら、次の手、手術を選ぶ時期だと思います。変形性膝関節症の多くは、膝の内側から悪くなってゆきます。まだ関節の内側だけが傷んでいる段階だったら、骨切り術か人工膝関節の部分置換を選択します。比較的年齢が若く関節の変形もそれほど進んでなく、まだまだ活動の範囲が広い、仕事やスポーツに、アクティビティが高い生活をしている人には、骨切り術を勧めます。骨切り術は、膝の内側の骨に切れ目を入れ、O脚になって重心が内側にかかっているものを調整し直す方法です。高齢の方で、まだまだ活発に動き回りたい、軽い運動くらいはどんどんしたいという人には、傷んでいる部分の骨を削って関節の半分だけ人工のものに置き換える、部分置換という方法を行います。膝関節がすべて傷んでいるわけでないので、手術自体もわりと簡単で回復も早いのが特徴です。


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