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専門医インタビュー

人工膝関節で健康寿命を延ばす 膝痛のない生き方を決めるのは自分

清水 学 先生
  • 清水 学 先生
  • 東松山市立市民病院 副院長兼整形外科部長
  • 0493-24-6111

埼玉県

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日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、臨床研修指導医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、難病指定医、身体障害者福祉法指定医

この記事の目次

高齢社会の今、膝の痛みを抱える人が多い中で、人工膝関節に関してどれくらいの理解と情報を持っているのでしょうか。膝が痛いために、何かをあきらめなくてはならないのなら、ぜひ専門医に相談をして、と話す清水学先生に聞きました。

膝の痛みの原因にはどのようなものがありますか?

健康な膝関節と痛んだ膝関節

健康な膝関節と痛んだ膝関節

ある程度年齢を重ねられた方が膝の痛みを訴えられる場合、男女ともに変形性膝関節症が原因になっていると考えられます。ただし変形性膝関節症になる要因として、男性の場合は、過去に膝のケガをしたことが原因で変形性膝関節症になった方が多くみられますが、女性の場合は、高齢になって土台となる骨が弱くなるにつれて膝の軟骨も弱くなり、関節の変異が進んでくると考えられます。変形性膝関節症は、女性に圧倒的に多くみられるのですが、要因の違いのせいか、男性の方が女性よりも早い年代で膝の痛みを感じられることが多いです。
その他の原因として、膝の骨が少し骨折している場合があります。この骨折が原因で、骨に浮腫があったり、骨が壊死し痛みを生じる場合があります。
膝が痛いと、痛みをかばうために膝を曲げ、体を前かがみに曲げた歩き方になります。こういう歩き方をすると、更に膝が曲がりにくく、固くなってしまうことがあります。

どんなトレーニング方法がありますか?

水中歩行が最も有効な筋力強化の運動です。

水中歩行が有効な筋力強化の
運動です。

膝が痛くなってからではなく、痛くなる前、筋力や関節の機能が衰えたり、骨粗しょう症になりやすい年齢になる前に、運動をする習慣をつければ、健康寿命が延びてくるのは間違いないのです。ただし、運動や体を動かすということは、自分自身が意識を変えて行動をしないと、習慣づくものではありません。病気を予防するという認識が大切です。
しかし膝が痛くなったらトレーニング方法がないわけではありません。どんなトレーニングが必要かというと、膝の周りの骨を丈夫にしたり、運動して筋肉をつけることです。骨はストレスがかかればかかるほど強くなります。じっとして動かないでいると、骨に負荷がかからなくなり、骨粗しょう症になりやすいのです。ただし、歩けばいいというのではありません。歩くだけなら筋肉の維持にはなりますが、筋トレにはなりません。健康維持にはなるが、健康増進にはならないのです。そこにひと工夫が必要です。
すでに膝が痛くなっている方は、関節にあまり負荷がかからない水中歩行が有効な筋力強化の運動です。そういう努力をすることで、関節変形の進行を抑えることもできるでしょう。また、歩く時の足のつき方を変えるだけで、膝への負担が少なくなります。変形性膝関節症の人は、膝の内側にばかり体重がかかっていることが多いことが分かっています。そうならないように、踵から地面につくような歩き方をするなど、専門家からの指導を受けるだけでも違います。
病院で指導を受けるリハビリも大事です。固くなった膝をリハビリで丁寧に曲げ伸ばしを行うと、1,2か月で自然に膝の状態が改善され、痛みも軽くなることがあります。
時間はかかるかもしれませんが、手術をしない方法を色々試してみることが大切だと思います。しかしながら自分の身体がどのような状態で、どのような治療方法があるのかを知らない方が多くいらっしゃいます。
まずは専門医を受診し、痛みの原因や身体の状態を適切に把握した上で、正しいトレーニング法などの指導を受けることが大事です。

膝の痛みの治療法にはどのようなものがありますか?

部分置換術後と両側人工膝関節全置換術後のレントゲン、いろいろな方法があります。

部分置換術後と両側人工膝関節全置換術後のレントゲン、
いろいろな方法があります。

筋力強化以外の治療として、痛み止めの内服やヒアルロン酸を関節内に注射するという方法もあります。ヒアルロン酸注射をした際に、まれにですが、アレルギーを起こす方もいますので、やみくもに注射するのはよくありません。ただし、筋力強化やヒアルロン酸注射などを試したこともないのに、いきなり手術をするというのはよくありません。もう手術しか治療法がない、ということになる手前でも出来ることは色々あります。
しかし色々時間をかけてやってみたけど、どうしても痛みが取れない、動きづらい、膝の曲げ伸ばしができない場合の次の手が手術。手術にも骨切り術や、関節の一部を取り換える部分置換、関節を全部人工のものに置き換える全置換など、色々な方法があります。
人工膝関節置換術を行う場合、もちろん色々な検査をしたうえで、手術適応であるかどうかを決めます。骨粗しょう症がひどくて骨が弱い人でも、人工膝関節の全置換術は可能です。ただし、脳や心臓、体の血管に異常がある、金属アレルギーがあるなど、希望しても手術できない人もまれにいますが、そこで終わりではありません。引き続き通院してもらいながら、その時々に一番いい方法をアドバイスします。


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