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専門医インタビュー

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この記事の目次

日本の高齢者の寿命が世界最高水準に達して久しい。ただし、健康寿命はそれより10年(女性は9年)も短い、つまり最期の10年間は何らかの介助が必要な状態というのが実態。「自分の足で動くことができる健康寿命を延ばすためにも、人工関節は必要な技術」と話す聖マリアンナ医科大学病院の山本豪明先生にうかがいました。

寛骨臼形成不全による変形性股関節症とは?

FAI(femoroacetabular impingement):股関節インピンジメント

FAI(femoroacetabular impingement):
股関節インピンジメント

股関節の痛みをきたす代表的疾患といえば変形性股関節症。圧倒的に女性の患者さんが多いのが特徴で、日本の場合、その原因の8~9割が寛骨臼形成不全によるとされています。もともと骨盤の臼蓋という股関節の「屋根」の部分が浅くて、不完全な形をしているために、大腿骨の上端の骨頭に負担がかかりやすく、徐々に痛みや動きにくさなどの症状が出てきます。若いうちは気付かないけれど、出産後40 代くらいになって股関節の痛みが強くなり、レントゲンで寛骨臼の形成が悪く、変形性股関節症がわかるというのが典型的なパターンです。
一方、近年注目されているのが、欧米などで多くみられるFAIと呼ばれる股関節の病態です。寛骨臼の皿が深い、あるいは大腿骨の首の部分に骨の出っ張りがあって、関節周囲の骨同士がぶつかって、関節唇損傷や軟骨損傷を引き起こすのが本態です。関節鏡を用いて関節内の掃除をするなどして対応しますが、病気の最終局面では変形性股関節症になることもあります。ほかに、外傷によって股関節が障害されるケースもありますが、当院のような大学病院で案外多いのが、ステロイド剤の使用が原因と考えられる特発性大腿骨頭壊死症です。

変形性股関節症の症状はどう表れるのでしょうか?

変形性股関節症のレントゲン

変形性股関節症のレントゲン

例えば、自動車の乗り降りがスムーズにできない、立ち上がる時や歩きはじめに股関節が痛くなる、特に階段を下りる時に痛いなど、人によって症状の出方や表現の仕方は様々です。自分では、はっきり気付いていなくても日常生活のちょっとした動きに、股関節の変化のヒントが表れるものだと思います。時に大腿部の鈍痛や膝痛など一見、股関節の痛みとは思えない症状がある場合もありますので、どういう時に、どんな動作で痛くなるのか、患者さんの生活の中で痛みを感じる瞬間をうまく聞き出すことが大事だと思っています。
また、腰痛だと思っていたけれど、実は痛みの原因は股関節にあったという人もけっこういます。
大事なことは、足腰の変化を歳のせいだと思って放置しないこと。何か変だと思ったら、その時に整形外科を受診して相談してください。

治療法は?体重管理と動作の工夫

やってはいけない姿勢、低い椅子に深く座らない

やってはいけない姿勢、低い椅子
に深く座らない

変形性股関節症の治療といえば、短絡的に人工股関節置換術と、すぐに結びつける人もいるかもしれませんが、当院では状態に応じたいくつかの治療法を必ず提示しています。
痛み止めの内服や筋力トレーニングなどの保存療法だけで、うまく付き合っていける人も中にはいらっしゃいますし、痛みや炎症の程度があまりひどくない時には、痛み止めを少し飲むだけで日常生活できることもあり、それらも解決策の一つです。その上で、体重の管理、食事にも気を付けて頂きます。杖を使用する、体重が1~2キロ減るといったことでも、股関節への負担は軽くなり症状が緩和することがあります。
日常生活動作の工夫も必要です。深くしゃがみこんで曲げると股関節の痛みが出やすくなります。低い椅子に深く座らず、椅子に座る時は、適度な高さの椅子に浅く腰掛けて背中を延ばす、痛い人は無意識のうちにやっていることがありますが、痛いことを避けることは大事なことです。
保存加療にトライして、それでも痛みが取れない、生活がうまくいかなければ、患者さんが納得した上で手術療法を考えます。


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