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専門医インタビュー

膝関節の進行状態を正確に把握し納得した上で適切な治療法を選択しよう

髙木 徹 先生
  • 髙木 徹 先生
  • 岡山赤十字病院 リウマチ関節外科部長(兼)リハビリテーション科副部長(兼)人工関節センター長
  • 086-222-8811

岡山県

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専門領域:関節外科、外傷一般、小児整形外科
資格:日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本整形外科学会運動器リハビリテーション医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、日本整形外科学会リウマチ医

この記事の目次

超高齢化に伴い、変形性膝関節症や関節リウマチなどで、長年膝の痛みに悩んでいる人が増えているといいます。「長期にわたって保存的治療を続けているのに痛みが取れず、日常生活に支障をきたしているようであれば、次の段階の治療である手術を検討してもいいかもしれませんね」とアドバイスする岡山赤十字病院の髙木徹先生に、患者さんの症状や年齢、望む生活スタイルに応じた適切な治療法などをうかがいました。

膝の痛みの主な原因といわれる変形性膝関節症とはどういった疾患ですか?

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症のレントゲン

膝の痛みの原因となる疾患には関節リウマチや特発性骨壊死など色々ありますが、一番多いのが変形性膝関節症で、日本では罹患者の80%~90%が女性です。主に加齢や怪我が原因で膝の軟骨がすり減り、徐々に痛みや変形を生じていきます。日本人女性にはO脚の人が多く、膝の内側に体重が偏ってかかるため、膝関節の内側に顕著な関節裂隙(大腿骨と脛骨の間のすき間)の狭小化が起こるのが特徴です。
動き始めや歩行時に膝が痛い、歩きづらいといった症状が出ると、近くの開業医さんで診てもらわれる方が多いと思います。まずはそちらで、温熱療法や運動療法といった理学療法や、服薬や注射といった薬物療法などを受けられるといいでしょう。そういった保存的治療だけで症状が改善することも十分に可能です。ただし、長期にわたって保存的治療を続けているのに痛みが取れず、変形も進み、日常生活に支障をきたしているようであれば、次の段階の治療である手術を検討してもいいかもしれませんね。

手術が適応だと思われる目安を教えてください

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸注射

薬物療法のひとつであるヒアルロン酸注射は、標準的な治療として週1回、5回続けて注射を行いますが、私はこの治療がひとつの目安だと考えています。その5回目が終わった時点で症状が改善しているようであれば、そのまま保存治療を続けられていいと思います。しかし、ヒアルロン酸治療でも効果が得られない場合は、保存治療での対応が難しい状態になってきているのかもしれません。膝関節の専門医が手術を行っている医療機関に相談し、まずは情報を得てみてはいかがでしょう。
もちろん、相談したからといってすぐに手術になるわけではありません。手術をする、しないは、患者さんが決めることです。しかし、現在の自分の進行度合いを正確に診断してもらい、可能な選択肢を提示してもらうことは、患者さん自身にとって、とても有用なことだと思います。

手術にはどのような種類があるのでしょうか?

人工膝関節の一例

人工膝関節の一例

病態や病状に応じて人工膝関節全置換術や人工膝関節単顆型置換術、高位脛骨骨切り術などが行われています。
人工膝関節置換術とは、変形して傷んだ関節を取り除き、金属やポリエチレンでできた人工関節と置き換えることで、痛みのない生活を取り戻す手術です。症状に応じて、膝関節全体を置き換える人工膝関節全置換術か、傷んでいる側(主に内側)だけを置き換える人工膝関節単顆型置換術が行われます。どちらも除痛効果が高く、長期成績のいい手術ですが、単顆型の場合は小さな人工関節を使うため、傷口が小さく、骨を削る量も少ないうえ、靭帯を切らないので、より早期の回復が望めます。ただし、片側だけが痛い、靭帯が損傷していない、変形程度が軽い、などの適応条件があります。
高位脛骨骨切り術は、脛骨の内側を切って人工骨を入れ、O脚を矯正する手術です。この手術は自分の関節を温存できるため、術後のスポーツや日常生活動作に制限がありません。そのため、肉体労働や激しいスポーツ、登山など、活動性の高い動きを希望している患者さんにも対応できます。しかし、切った骨がしっかりと固まるまでに時間が必要なため、回復に時間がかかり、人工膝関節置換術よりも入院期間が長くなります。


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