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専門医インタビュー

10年先、20年先の自分の生活を考えたひざ痛の治療選択を!!

朝田 滋貴 先生
  • 朝田 滋貴 先生
  • 樫本病院 朝田整形外科 院長 近畿大学病院整形外科 非常勤講師
  • 072-366-1818

大阪府

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専門分野:膝関節の外科治療、人工関節置換術、軟骨再生治療、膝関節のバイオメカニクス
資格:日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医

この記事の目次

変形性膝関節症や関節リウマチなどで長年膝の痛みに悩んでいる人の中には、期待している効果があまり得られないまま治療を続け、我慢を重ねている人も多いといいます。「人工膝関節置換術は、合併症が比較的低く、除痛効果の期待できる手術です。10年先、20年先の生活を考えて、手術と向き合ってみるのもいいのではないでしょうか」とアドバイスする朝田滋貴先生に、お話をうかがいました。

膝の痛みの原因となる主な疾患には何がありますか?

変形性膝関節症

変形性膝関節症

将来的に手術も選択肢のひとつとなるような疾患としては、変形性膝関節症や関節リウマチがあげられます。変形性膝関節症は、関節軟骨の退行性変化(加齢、肥満、使い過ぎによる軟骨の損傷)が主な原因といわれており、高齢になればなるほど有病率が高くなります。初期症状としては、立ち上がる時など、動き始めに痛みを感じるものの、いったん歩き始めてしまうと痛みが治まるケースが多いようです。
一方、免疫異常が原因で起こる関節リウマチは、30代~50代の発症が多いのですが、膝の痛みなどから発症する大関節型のリウマチでは、比較的高齢な方に発症することが多いのが特徴です。
60代~70代になって急に膝関節が腫れて痛みが出てきた患者さんで、変形性膝関節症に対する治療ではよくならない場合には、関節リウマチを疑うこともあります。

変形性膝関節症はどのような治療から始めるのでしょうか?

変形性膝関節症は、レントゲンやMRIの画像評価によって、初期から末期までに分類されます。初期の段階では、大腿四頭筋訓練などの運動療法を中心に、痛み止めなどを併用した治療を行います。杖の使用や体重制限といった日常生活指導も重要です。また、軟骨が少し減り始めたくらいの初期の段階であれば、抗炎症作用のある関節内へのヒアルロン酸注射は、痛みの軽減に有効だと思います。ただし、症状が進行して痛みが強くなっている場合には、ヒアルロン酸注射による除痛効果はあまり期待できません。さらに膝関節の変形が進み、こういった保存的治療ではあまり効果が得られず、日常生活に支障をきたすようであれば、手術も治療の選択肢のひとつとなります。

変形性膝関節症の5段階
変形性膝関節症の5段階

手術が適応だと思われる目安はありますか?

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患者さんが日常生活の中でどのくらい困っているのかが基準になります。変形性膝関節症は女性に多い疾患です。例えば、私は「自分でスーパーに行って買い物ができるか」を手術適応のひとつの基準としています。買い物に行けるかどうかは、QOL(生活の質)を維持するための重要な要素であり、その機能が失われると人間の尊厳にかかわってくることもあります。買い物に行って、台所に立ち、食事を作る。そういった自立した日常生活がなくなると、存在意義を見失ってうつ傾向になってしまう人もあります。
そういう人には、「人工関節という選択肢もありますよ」と説明するようにしています。
しかし、レントゲン画像上ではかなり進行していても、ご本人が「生活に困っていない」とおっしゃるのであれば、手術をお勧めすることは決してありません。一方で、今の関節の状態から予想できる10年後、20年後の生活についてはお話しするようにしています。例えば70歳の患者さんであれば、今後15年~20年間にわたり膝の保存治療に費やす莫大な時間は、人生にとって大きな損失であることを説明すると、手術という選択肢に向き合うようになる人もいらっしゃいます。


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