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股関節の痛みの主な原因を教えてください

寛骨臼形成不全

正常な股関節

特に高齢者で一番多い「変形性股関節症」には、明らかな原因がなくて発症する一次性と、何らかの原因があって発症する二次性があります。日本では、先天的に骨盤の寛骨臼（かんこつきゅう）の屋根部分のかぶりが浅いために、股関節に負担がかかって変形が進んでしまう「寛骨臼形成不全（かんこつきゅうけいせいふぜん）」が主な原因で発症する二次性が大半を占めています。他にも慢性関節リウマチや特発性大腿骨頭壊死症（とくはつせいだいたいこっとうえししょう）なども痛みの原因となります。特発性大腿骨頭壊死症は、自己免疫性疾患の治療でステロイドの内服薬を多用している方やアルコールを多飲する方に発症リスクが高いといわれています。また、近年増加しているのが「急性破壊性股関節症」です。原因はまだ明らかではありませんが、腰や背中が曲がって丸くなることによって骨盤が後ろに傾き、寛骨臼のかぶりが悪くなることで発症するともいわれています。とくに異常のなかった股関節が短期間で急速に破壊されるのが特徴で、骨粗しょう症を併発している高齢者に多くみられます。

変形性股関節症はどのような症状を訴えて受診する方が多いですか？

「長い距離を歩くと痛い」「靴下がはけなくなった」などの症状を訴える方が多いですね。股関節は脚の付け根（鼠径部（そけいぶ））にありますが、鼠径部だけでなく、太ももの前面や後面、膝などに痛みを感じる方も少なくありません。特に太ももの後ろに痛みがある場合は、腰部脊柱管狭窄症（ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう）や腰椎椎間板（ようついついかんばん）ヘルニアが原因で起こる坐骨神経痛と判別する必要があります。股関節からきている痛みか、腰からきている痛みかを判定するにはブロック注射が有効です。股関節を包む袋の中に麻酔薬を注射し、痛みが消えれば股関節が原因の痛みだと判定がつきます。また、変形性股関節症の場合、悪いほうの股関節の反対側の膝に痛みが出るケースも多く、「膝が痛い」と訴えて受診されても、本当の痛みの原因は反対側の股関節だったということもよくあることです。他にも、股関節の痛みをかばって歩くために骨盤が傾き、背骨が歪んで側弯症（そくわんしょう）を引き起こすこともあります。

変形性股関節症にはどのような治療を行うのでしょう

体重コントロール

筋力トレーニングや痛み止めなども有効ですが、中でも体重コントロールが非常に重要です。股関節は体重が大きく影響する関節で、体重が1キロ増えると立っているだけでも股関節にはその3倍の負担がかかり、階段昇降時には8倍の負担がかかるといわれています。過体重の方には、まず、ダイエットの重要性を理解してもらう必要があり、体重が減少するだけで痛みが軽減する方もたくさんいらっしゃいます。軟骨が完全にすり減ってしまった末期の方でも、骨の変形の仕方によってはあまり痛みを感じないことがあり、そうしたケースでは、減量だけで手術を回避することも可能です。
しかし、痛みがひどくて日常生活に支障をきたしている場合や、他の関節への悪影響が考えられる場合には、手術を検討することになります。