メニュー

専門医インタビュー

高齢だからと諦めないで 専門医に相談してご自身にあわせた適切な治療を選択しましょう

東京都

プロフィールを見る

専門分野:膝関節・股関節
資格:日本整形外科学会専門医

この記事の目次

加齢に伴って膝の軟骨がすり減り、痛みを生じる変形性膝関節症。保存療法を続けてきたものの痛みがつらく、手術を意識するようになって多くの方が気にかけるのが「年齢の壁」です。「年齢が高いというだけで、手術を最初から諦めている方もしばしば見受けられますが、正しい情報を得ることが大切です」と話す虎の門病院の中村正樹先生に、高齢の方が人工膝関節置換術に向き合う上でのポイントについて教えていただきました。

かなりの高齢になっても人工関節の手術を受けるメリットはありますか?

膝の痛み

膝が痛いために十分に歩けず、外出もままにならなくなると、どうしても生活の質は低下していきます。特に高齢者は、一週間寝ているだけで全身の筋力が10~15%低下するといわれています。動けない期間が長期化することによる全身的な影響は大きいものです。
人工膝関節置換術後のリハビリ期間を乗り越えれば、膝に体重がかかる時や膝を曲げた時の痛みはかなり軽減されます。痛みが和らぎ、買い物や散歩に出られるようになって運動量が増すと、血圧が下がる、糖尿病のコントロールが進むなどの良い循環も期待できるでしょう。これは健康寿命の延伸にもつながりえるものです。
また、膝の痛みが原因で、要支援・要介護となるケースは増えています。それに対し、人工膝関節置換術を受けた患者さんは要介護度が改善傾向にあることが、日本整形外科学会などの調査で明らかになってきています。手術の適応がある方に適した治療を行うメリットは、いろいろな意味で大きいと考えます。

人工膝関節置換術は、何歳まで受けられる手術ですか?

現在の人工関節は非常に耐用性が延びていますが、それでも50~60年など長期間もつという保証はありません。そのため若い方には、荷重バランスを整える骨切り術や、傷ついた半月板や靭帯を縫合・再建する手術など、ご自身の関節を温存する方法が優先されます。
人工膝関節置換術は、70~80代の方が受けることの多い手術です。高齢になると合併症などのリスクはやや高くなりますが、直近まで歩くことができ手術に耐えられる状態であれば90代の方でも手術を受けておられます。
変形性膝関節症の場合、年齢や画像診断よりも注目すべきはその方の状態です。30分以上連続して歩けるようであれば、特に手術を急ぐ必要はないと思います。しかし、2~3年前までは平気だったのに10~15分も歩くと膝が痛くて歩けなくなって生活に支障が出てきた、膝の痛みが軽くなれば生活が充実するのだけど、と思われるようであればそろそろ手術を検討してもよいかもしれません。
特に高齢の方の場合、年齢を重ねるとともに移動機能がだんだんと低下していきます。そのため、もうひとつ目安にできるのは、ロコモティブシンドロームの危険度を評価する「ロコモ度」です。
移動機能の低下が始まっている状態が「ロコモ度1」、移動機能の低下が進行するのが「ロコモ度2」、移動機能の低下が進行し社会参加に支障をきたすのが「ロコモ度3」という3段階があります。ロコモ度3まで進んでしまうと、手術をしても回復に支障が出る場合があるので、その前に手術を受けるほうが望ましいとされています。

人工膝関節単顆置換術

人工膝関節単顆置換術

人工膝関節全置換術

人工膝関節全置換術

手術を検討するにあたり知っておくべきことはありますか?

診察

一般的には、年齢よりも術前の状態が良い方ほど術後の膝関節機能の回復が進みやすいといわれます。例えば、痛みが強いながらも杖をついて外出できていた方であれば、手術後のリハビリが進めば杖なしで外出できるようになることが多いです。一方で手術の限界もあり、術前の状態があまりにも悪いとご自身が望む状態までかなり時間がかかることがあります。そのため、手術を受けるかどうか検討する際は、ご自身で積極的に術後のリハビリに取り組めるかということが大切になります。
「もう歳だから」と手術を受けることを諦めている方がおられる一方で、ご本人は希望されても「この歳で手術なんて…」とご家族の理解を得られない場合もあります。ご本人とご家族の考え方が大きく違ったまま手術を受けるのは望ましくありません。手術にはメリットだけでなく合併症などのリスクもありますが、今の状態だと今後どうなるのか、手術を受けるとどのようなことが期待されるのかということを、専門医の意見を参考に、適切な治療を選択していただきたいと思います。

術後の生活で、高齢の方が特に気を付けることはありますか?

リハビリ

転倒には十分に気を付けてください。年齢が高くなると筋力が落ちたり、身体を支えるバランスが低下することで、ふらついたり転びやすくなります。転んで人工関節の周囲で骨折が起きると、再手術が必要になることもあります。加齢に伴って骨がもろくなり、骨粗しょう症の方が増えることも踏まえて、転倒による骨折には注意すべきでしょう。
しかし、転ばないようにと慎重になりすぎて家に閉じこもってしまうのは、全身の健康維持にはむしろ逆効果です。入院中に筋力トレーニングや可動域訓練を通して転倒予防ができるようリハビリを行うので、退院後もそれを継続して「良い歩き方でしっかり歩く」ことを意識してください。
手術の合併症のひとつに感染症がありますが、高齢の方は免疫機能の低下などにより感染リスクが高くなります。手術から時間が経っても、身体にある菌が血液に乗って人工関節に感染するという例はまれにあります。体調を崩したときにはきちんと治療を受けて悪化させない、虫歯・水虫があれば早めに治す、小さな怪我でも放置しないなど、普段の暮らしの中で気を付けるようにしましょう。

膝の痛みに悩む方へのメッセージをお願いします

手術への漠然とした不安は多くの方が抱えるもので、術後の痛みも全くないとはいえません。しかし手術が適応になる方であれば、そうした手術前後の負担と、膝の痛みを我慢しながら過ごす残りの人生と、どちらを選ぶか検討してみる価値はあると思います。変形性膝関節症の手術は、今すぐ決心しないと手遅れになるという緊急性が低いので、専門医と何度も話し合いながら治療方針を決定するのでもいいでしょう。
今回は人工膝関節置換術を中心にお話ししましたが、変形性膝関節症の治療にはそれ以外に方法がないわけでは当然ありません。専門医の診断を受け、ご自身にあった治療法を選ぶことが大切です。運動療法や薬物療法など他の選択肢がさまざまありますので、年齢を理由に諦めることなく、専門医に相談してみてほしいと思います。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop