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専門医インタビュー

自分の脚で歩き、健康寿命を延ばすためには、人工膝関節置換術はとても有効な治療法です。

  • 植田 康夫 先生
  • 一般財団法人 沢井病院 脊椎・脊髄・関節センター長
  • 0742-23-3086

奈良県

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奈良県立医科大学卒業。奈良県立救命救急センター医長、国保中央病院整形外科医長などを経て2019年より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本救急医学界認定救急科専門医など。

この記事の目次

膝に痛みがあるのに我慢し続けるのはとても辛いことです。また、痛みがあるのにも関わらず、自己判断で受診を先延ばしにしてしまうことで、結果的に治療の選択肢を狭めてしまっていることもあるかもしれません。「適切なタイミングで治療を受け、健康寿命を延ばしましょう」とアドバイスするのは、一般財団法人 沢井病院の植田康夫先生。膝に痛みや違和感を覚えた際における早めの受診・手術の有効性や、治療法としての人工膝関節置換術・その最新の方法である低侵襲術などについて、幅広くお話を聞きました。

歳を重ねるにつれ膝の痛みを訴える人が増えますが、主な原因は何でしょう?

一番多いのは、やはり「変形性膝関節症」でしょう。日本人の65歳以上の40%以上の人に、何らかの変形がみられるといわれています。男性よりも女性に多く、日本人の高齢化に伴って増加している疾患です。欧米ではX脚が主流なのですが、日本人には元来O脚の人が多く、膝の内側に体重負荷がかかるため、内側の軟骨がすり減って痛みが生じるタイプの変形性膝関節症の人が多いですね。他民族に比べても、日本人は変形性膝関節症の罹患率が高い傾向があるといわれています。「長時間歩けない」、「立ち上がりや、階段を降りる時に痛い」、「旅行に行った時に友人と同じ行動がとれない」などといった経験が、受診のきっかけになっていることが多いようです。

変形性膝関節症の治療法には、どういった方法がありますか?

変形性膝関節症のX線

症状が軽ければ、まずは保存的治療を始めます。湿布や塗り薬、足底版などの器具を使って足首の角度を調整し、体重負荷が膝の中央にかかるようにします。痛みが取れなければ、痛み止めの服薬や関節内へのヒアルロン酸注射なども行います。この段階で症状が改善するようであれば、その後は経過をみていくといいでしょう。しかし、関節痛の慢性化により日常生活に支障をきたすようになり、なおかつ、ご本人に「今の状態から抜け出して、生活の質を高めたい」という前向きな気持ちがある場合には、「人工膝関節置換術」の検討をアドバイスしています。以前は、「歳だから仕方がない」とあきらめ、外出を控えて家にこもりがちになるなど、自分のライフスタイルを縮小していく人が多かったのですが、現在は、いくつになっても「畑仕事をしたい」、「お寺参りに行きたい」、「生活を楽しみたい」など、老後も活動的に送りたいと考える人が増えてきたようです。

日本人の場合、手術となると躊躇する人も多いのでは?

平均寿命と健康寿命の差

※平均寿命は厚生労働省「平成22年完全生命表」、健康寿命は厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」

確かに、日本人は手術を怖がる傾向がありますね。変形性膝関節症の罹患率はヨーロッパより高いのですが、手術件数は3分の1から4分の1くらいです。「痛かったら我慢せず、すぐに手術」という民族性ではなく、「手術しないで済むなら、しないでおきたい」と思うのが日本人の傾向なので、手術となると躊躇する人が多いように感じます。
しかし現実は、その日本人ならではの躊躇が、「寝たきり」の状態を作っているともいえるのです。実際に、「寝たきり」になる原因の第2位が骨折・転倒や関節の痛みです。日本人の平均寿命は世界でもトップレベルですが、健康で自立した生活を送ることのできる期間「健康寿命」との間には、男性で9年、女性で12年の差があるといわれています。つまり、人生の最後を、要介護や寝たきりの状態で長く過ごしている人が多いのが日本の現実なのです。自分の脚で歩き、自分で自分のことができる期間を長くするためには、この人工膝関節置換術はとても有効な手術だといえます。


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