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専門医インタビュー

歩くとズキンと痛む 膝に引っかかる感じがある その症状は膝にある半月板に問題があるからかもしれません

東京都

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医学博士、日本整形外科学会認定整形外科専門医・スポーツ医・運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

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この記事の目次

膝関節への衝撃を吸収するクッションのような役割を担う半月板は、損傷すると痛みや引っ掛かりなどの症状が出てきます。そのままにしておくと変形性膝関節症に至る場合もあるとのこと。半月板損傷の症状や治療法について、日本医科大学付属病院の飯澤典茂先生にお話を伺いました。

半月板損傷とはどのような状態のことを指しますか?

内側半月板の後根断裂

内側半月板の後根断裂

半月板はCの形を合わせるように膝関節の内側と外側にあり、内部はバームクーヘンのように環状の構造をしていて、体重や衝撃を受け止めるクッションのような役割をしています。半月板は、膝を長年使い続けて負担がかかることで半月板の質が悪くなってくると、環状の構造が壊れることがあります。そのような状態で体重をかけると半月板はフニャっと広がり正常な位置からずれてしまうのです。このような状態を変性断裂と呼びます。ずれた半月板が関節内にはさまることや、関節内で炎症が生じることで痛みが出ます。炎症が起こる原因はさまざまであり、半月板が変性することでクッションとしての役割がなくなり、軟骨同士の接触する圧力が高くなって破壊され炎症が生じること、半月板にくっついている関節包(かんせつほう)という組織に変性した半月板が引っ張られて炎症が生じることなどが挙げられます。加齢による変性断裂は、膝を深く曲げると圧力がかかる部分である内側の中央(中節)から後ろ側(後節)に特に起きやすいとされています。
それとは別に後根(こうこん)断裂といって、衝撃などにより後根(膝関節の内側にある半月板の後ろ側)が瞬間的に切れてしまうことがあります。変性断裂は、はっきりとした原因がないことが多いのに対し、後根断裂の場合は、例えば「信号が赤に変わりそうだったので慌てて急に走り出した」などと発症の原因を思い出せるケースが多くあります。

整形外科への受診の目安となる症状を教えてください

立ち上がる時に痛む

半月板損傷の症状として代表的なのは引っかかり感です。また炎症が起きていると、一歩踏み出す時や立ち上がる時、またそのほか膝に体重がかかった時など、さまざまな場面で痛みが生じます。炎症が急速に進んでいる時は、膝に水が溜まることもあります。膝の中で毎日水が作られて吸収されることが繰り返されていますが、炎症が起きていると水が過剰に生成されて吸収が間に合わないのです。水が溜まるのは膝の中で何かが悪さをしているサインだと思ったほうがいいでしょう。
炎症が起きると組織そのものを弱くしたり、治そうとする反応を阻害したりすると考えられています。もちろん、炎症も人間の生体反応であり、組織を修復させるプロセスのひとつではあります。だたし、それがあまりに長く続くと組織を破壊する方向に向かうことがあり、関節軟骨がすり減って変形をきたす変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)へと進行することがあるので注意が必要です。痛みが1か月も続いているようであれば近隣の整形外科へ相談されることをおすすめします。

治療にはどんな方法がありますか?

インソール

インソール

まずは内服薬や外用薬、注射、理学療法、装具療法などから治療を開始します。注射は、一般的にヒアルロン酸がよく選択されていますが、炎症が強い時には年に1、2回にはなりますが、ステロイド剤を使用することもあります。理学療法では、筋力トレーニングとウェイトコントロールが特に重要です。膝の動かせる範囲が広いほうが痛みを改善できる傾向にあるため、膝をしっかりと曲げて伸ばすことに取り組みます。
装具療法として例えば、O脚の方には重心のバランスを変えるためのインソール(靴の中敷き)を製作することがあります。

半月板損傷で手術をすることもあるのですか?

骨切り術

骨切り術

変性断裂で曲げ伸ばしの途中に引っかかりを感じる場合や、体重をかけた瞬間にズキンとする痛みが出るといった症状が長引く場合は、手術を行うことも1つの選択肢となります。
手術には、切れてしまった半月板を部分的に削る「切除術」があります。O脚などの足の変形が強い場合は、切除術に加えて足の形を矯正する骨切り術(こつきりじゅつ)を併用することもあります。骨切り術を行うことでそれまで膝の内側へかかっていた負荷が緩和され、半月板が再び損傷するリスクを軽減できます。手術後は、入院期間中だけでなく退院後もリハビリを行い、膝を曲げる角度を少しずつ大きくしていくことが大切です。ただし、手術をして1 か月半ほどは腫れが出やすいですから、その間は激しい動きや衝撃をともなう動作は控えるようにしましょう。
一方、変性した半月板を縫い合わせる「縫合術」という方法もあります。この方法は半月板を温存できることがメリットとなりますが、手術後の効果が不十分になることがあるほか、手術後2か月程は松葉杖が必要となることが多く、社会復帰が遅れるといった影響が出ることがあります。どの手術方法がご自分に合っているのか、患者さんと医師がしっかりと相談し決定することが大切です。

後根断裂の手術はどういったものですか?

後根断裂の手術の一例

後根断裂の手術の一例

後根断裂の場合には、病状が急速に進み変形性膝関節症や骨壊死に発展することが少なくありません。そのため、早めのタイミングから手術を検討することがあります。
手術では、骨から剥がれてしまった半月板を安定化させるため、断裂した部分に糸をかけ、その糸を脛骨に開けた穴に通して固定します。基本的には骨切り術を併用することが多くあります。この方法では、修復した部分が落ち着くまで一般的に5~6か月かかりますので、筋肉トレーニングなどのリハビリにしっかりと取り組み、生活上での注意点に気を付けることが大切です。

退院後、日常生活や趣味のスポーツはどれくらいで再開できますか?

日常生活は松葉杖を使いながらにはなりますが、様子をみながらできる範囲で行っていただいて問題ありません。
ただし、退院後もしばらくは腫れの状態が続きます。寝起きはすっきりしていても夕方になるとかなり足が腫れるというような症状が出ることもあります。そのため、立ち仕事や体を動かす仕事の復帰は手術後1か月半~2か月くらいから、スポーツへの復帰は手術後半年くらいから検討していくといいでしょう。

最後に読者へメッセージをお願いします

近年では健康寿命が伸びたことにより、アクティブな高齢者が増えてきました。変形性膝関節症と診断された人の中には、80歳を過ぎていても山に登りたい、趣味であるゴルフやテニスをやりたいという希望を持たれる方も少なくありません。
活動的に日々を過ごすためにも、痛みが常態化するのはあまりいいことではありません。膝の痛みや違和感がしばらく続くようであれば、お気軽に整形外科医にご相談ください。


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