メニュー

専門医インタビュー

ロコモやフレイルを予防するためにも膝の痛みに困れば早めに専門医に相談を

  • 犬飼 規夫 先生
  • 西尾市民病院 整形外科部長 兼 リハビリテーション科部長
  • 0563-56-3171

愛知県

プロフィールを見る

専門分野
整形外科全般、膝・肩関節外科
資格
日本整形外科学会専門医

関連するキーワードから探す

この記事の目次

身体機能が衰えてきたのは歳のせいと思われていませんか。その状態はロコモやフレイルかもしれません。ロコモやフレイルが進行すると将来介護が必要になる可能性があるので、できるだけ早めに予防することが大切です。西尾市民病院の犬飼規夫先生に、その原因や予防法、代表的な運動器の障害である変形性膝関節症についてお話を伺いました。

コロナ渦では感染を予防するために外出を控える方がおられました。高齢の方が外出を控える生活を続けると心身にどのような影響が出るのでしょうか?

散歩

コロナ禍で外出自粛が長く続き、楽しんでいた交流や趣味を中断したことで、筋力や体力の低下による不調を感じられている方が多くおられました。人と会う機会が減ったことで「物忘れが気になるようになった」「生きがいを感じなくなった」という方が60歳代以上で増え、認知機能や精神状態へ深刻な影響が出ているといわれています。
また漠然とした不安が原因となり、気分が落ち込んだり、やる気が出なくなったりするいわゆる「コロナうつ」も増えていました。
うつ病はストレスに対して効果がある脳内物質セロトニンの不足により発症リスクが高まります。しかし外出を控え身体を動かさなくなると、お腹が減らず肉類などのタンパク質の摂取量の不足や、日に当たる時間が減少することでセロトニンが不足しがちになります。食欲が出ない、ぐっすり眠れないなど、うつ病の初期症状が出た場合は注意が必要です。できるだけ健康な身体を維持するためには、外に出て日光に当たったり、歩いたりすることが大切です。

ロコモやフレイルという言葉を聞くことがありますが、どのような状態なのでしょうか?

ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、運動器の障害により移動機能の低下をきたし、進行すると介護が必要になるリスクが高まる状態です。運動器とは、骨、筋肉、神経を含めた身体を動かすために必要な器官のことですが、これらに障害が起きると関節の痛みや制限が生じ筋力やバランス能力が低下します。
その結果、歩行能力が低下し日常生活に制限をきたします。
フレイルとは、高齢になるにつれて身体能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態のことです。健常と要介護の中間的な状態で、日頃の生活習慣によって要介護に進むこともあれば、逆に健常な状態に戻ることも可能な状態です。フレイルには大きく3つの種類があります。1つ目が「身体的フレイル」です。運動器の障害で移動機能が低下したり(ロコモ)筋肉が衰えたり(サルコペニア)するなどが代表的な例です。2つ目が「精神・心理的フレイル」です。高齢になり定年退職やパートナーを失ったりすることで、うつ状態や軽度の認知症などになった状態です。3つめが「社会的フレイル」です。加齢に伴って社会とのつながりが希薄化することによって、閉じこもりや経済的困窮な状態を言います。この3つの要素が悪化すると、フレイルからやがて要介護状態になることがあります。

フレイルには大きく3つの種類がある

フレイルの進行を予防する方法はありますか?

早期発見・早期介入のために、ご自身でフレイルを簡易的に確認できる方法としては、東京大学高齢社会総合研究機構 飯島勝矢教授が考案された「指輪っかテスト」と「イレブンチェック」がありますので、気になる方はぜひ確認してみてください。
フレイルを予防するためには、身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルを意識して自分に何が必要かを知ることが大切です。また「持病のコントロール」「感染症予防」「運動療法」「栄養療法」「口腔・嚥下機能のケア」「社会とのつながりを持つ」の6つの効果的なポイントがあるので、それぞれを紹介致します。
高齢になると多くの方が、生活習慣病や心臓病など何らかの疾患を患っています。疾患が悪化すると「それまでできていたことができなくなる」「身体を動かす機会が減ってしまう」など日常生活に悪影響をもたらし、結果的に身体機能が低下したり認知機能が衰えたりすることがあります。そのため「持病のコントロール」が必要です。
フレイル状態の方は免疫が低下していると、通常以上に感染症にかかりやすくなっています。そのためこまめに手洗い・うがい、予防接種を受ける、マスクを着用するなどの対策をしましょう。
筋力を維持して活発に動けるようにするには、やはり運動が必要不可欠です。一時的に激しい運動をするのではなく、毎日しっかり歩いたり階段の昇り降りをしたりするだけでも筋肉は活性化されるので、無理なく継続することが重要です。
栄養が不足すると筋力低下を招く大きな要因となります。毎日の食事を通して必要な栄養素をしっかり摂ることで、筋肉や骨を強くすることができます。1日3食で主食、肉・魚・卵・大豆製品といった主菜、野菜・キノコ・海藻類といった副菜、牛乳・乳製品、果物をバランスよく摂るように努めましょう。肉・魚・卵・大豆製品など筋肉の素となるタンパク質、牛乳・乳製品・小魚といった骨を強くするカルシウムを積極的に摂ると良いといわれています。
食べることに関連して「口腔機能」「嚥下(食物や水分を飲み込む)機能」を維持することも重要です。「歯が減ってしまって上手く噛めない」「飲み込みにくい」という状態を放置すると、食べ物を正しく噛んで飲み込めなくなることがあります。それによって誤嚥性肺炎を引き起こしたり、食事が億劫になって低栄養になったりする可能性もあるので、何か異常を感じたら早めに医師に相談しましょう。
誰かとつながる機会を積極的に持つことも大切です。高齢になると独居や夫婦二人暮らしなど、日常的に関わる相手が少なくなりがちです。人との関りが減ると、精神的に孤独になり身体面にも悪影響をもたらします。うつ病が認知症を悪化させるという研究もあり、認知症予防の観点からも社会的なつながりを持つことは重要です。
ご自身が衰えてきたと思うことのうち、取り組めそうなことから始めてみましょう。

効果的なポイント

ロコモやフレイルにもつながる代表的な運動器の障害である変形性膝関節症について教えてください

変形性膝関節症

変形性膝関節症は簡単に言うと、膝関節内にある軟骨が少しずつ変性や摩耗することで、骨や滑膜に悪影響を与える疾患です。遺伝的なものや膝への機械的なストレスに加え、肥満(過体重)、女性、高齢、膝関節外傷の既往、膝関節に負荷をかける活動性(職業)がリスクとして明らかになっています。
症状は三段階に分けられ、初期症状は起床後に身体を動かし始めた時に膝のこわばりを感じたり、歩き出そうとすると何となく重くて動かしにくい、はっきり分からないような鈍い痛みを感じたりします。中期症状になると、しばらく休んでいたら治っていた膝の痛みがなかなか消えなくなったり、正座や深くしゃがみ込む動作または階段の上り下りなどで辛い痛みが出たり困難になったりします。この段階になると関節内の炎症が進行し膝が腫れたり熱を持ったり、歩くときしむような音がすることがあります。末期症状になると関節軟骨がほとんどなくなり骨同士が直接ぶつかるようになります。これまでに見られた症状が全て悪化して、歩く・座る・しゃがむといった動作も困難になり、日常生活に支障をきたし行動範囲が狭まるため精神的な負担も大きくなりがちです。

変形性膝関節症と診断された場合、日常生活の注意点や治療法を教えてください。

足底板

足底板

変形性膝関節症が進行すると痛みで脚を動かさなくなることが多いので、膝周りの筋力が衰え関節の安定性が悪くなります。すると益々膝に負担がかかって痛みが強くなるという悪循環に陥りがちです。そうなると先程ご紹介したフレイルや要介護状態になるリスクが高まります。そのようにならないためには、できるだけ膝に負担のかからない日常生活を送ることが大切です。肥満があれば減量し、正座や和式トイレなど膝を深く曲げる動作は避け、重い荷物をできるだけ運ばない、膝が痛む時は運動を控えましょう。
整形外科で行う変形性膝関節症の治療は、保存療法と手術療法に大きく分けられます。保存療法として、運動療法、装具補助具による治療、薬物療法を行います。運動療法は、膝関節を安定させ動かせる範囲を広げるために、膝周囲にある筋肉のストレッチや筋力トレーニングを行います。装具補助具による治療は、靴の中に足の外側を少し高くした足底板や杖・サポーターなどを使用して膝への負担を軽減させます。薬物療法は、消炎鎮痛剤を使用するだけでなくヒアルロン酸の関節注射や、炎症による痛みが強い場合にはステロイド関節内注射が行われることもあります。

変形性膝関節症にはどのような手術が行われていますか? かなり高齢になってからでも手術を受けることはできますか?

保存療法を続けても改善が見られず、生活に支障が出てきた時には手術を検討します。手術は主に関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術の3種類があります。
関節鏡視下手術は傷んだ半月板や軟骨などを切除します。O脚に変形し関節に負担がかかっている場合は、脛の骨をくさび状に切除しややX脚に矯正する高位脛骨骨切り術が行われます。また膝の変形が内側もしくは外側に限定されているようであれば人工膝関節部分置換術が適応となり、軟骨がすり減り症状が進行していれば人工膝関節全置換術が行われます。
筋力が衰えたり可動域が悪くなったりしても、人工膝関節全置換術を受けることはできます。しかし手術時に一部の筋肉を切るため、さらに筋力低下を起こすことがあります。可動域が大変悪い状態で手術を受けると、術後の可動域はどうしても制限され、期待する効果が得られないこともあるでしょう。手術を受けるかどうかは患者さんが決めることですが、医師としっかり相談してご自身の状態に合った納得できる治療を受けるようにしましょう。

関節鏡視下手術

関節鏡視下手術

骨切り術

骨切り術

人工膝関節全置換術と部分置換術

人工膝関節全置換術と部分置換術

最後に読者へメッセージをお願いします

身体機能が低下したのは歳のせいだから仕方ないと思われるかもしれませんが、ロコモやフレイルの状態になっていることがあります。その要因ともなる変形性膝関節症は、40歳以上を対象とした調査から潜在的に約2500万人が罹患していると推定されていて、そのうち約800万人が痛みや腫れ、膝の固さといった症状を自覚されています。変形性膝関節症は痛みや腫れといった症状だけでなく、要介護になるリスクが約6倍といわれているため、早期の予防はとても大事です。しかし十分に気を付けても予防しきれないことがあるので、お困りのことがあれば放置せず早めにお近くの整形外科への受診をお勧めします。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop