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専門医インタビュー

歩けるようになることで、その後の人生は激変します。 人工膝関節置換術のメリット・デメリットとリハビリの重要性

大分県

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昭和44年生まれ。東海大学医学部卒。平成9年、大分医科大学(現大分大学医学部)入局。平成25年から現職。日本整形外科学会、日本リウマチ学会、日本リハビリテーション学会、西日本整形外科学会、人工関節学会、骨折治療学会所属 エリア 大分県

この記事の目次

中高年の女性で膝の痛みに悩まれている人が増えていますが、その原因の多くは変形性膝関節症によるものです。変形性膝関節症の治療には、保存的治療から外科的治療まで様々な治療法がありますが、その中に治療の最終手段として、「人工膝関節置換術」という方法があります。今回はその人工膝関節置換手術について、手術の流れからメリット・デメリット、術後成績と密接な関係のあるリハビリの重要性などについて、内田病院副院長の内田研先生に詳しくお話を伺いました。

膝の痛みの原因について教えてください。

変形性膝関節症のX線
内側の軟骨が減っている

膝の痛みを持っている人は、主に肥満気味の中高年女性が多いように思います。もともと日本人の約9割はO脚ですが、歳を取るにつれてさらに内反していき、O脚が激しくなってしまうのです。そのため、膝の内側と外側の靭帯のバランスが悪くなり歩行が不安定になるにつれ、どんどん内側の軟骨がすり減っていくという悪循環に陥ります。ですから、日本人の膝の痛みのほとんどは内側に起こります。また、半月板損傷やリウマチなどの特殊な例を除けば、膝の痛みの原因の大部分は変形性膝関節症によるものです。実際に「変形性膝関節症」と診断された患者さんは、日常生活でも膝に負担をかけないよう気をつけていただく必要があります。具体的には、階段の昇り降りや急な坂の上り下りなど、膝を痛めやすい場所にはなるべく行かないように、平地を歩いてくださいと指導しています。もちろん、重いものを持たないことや足場の悪いところを避けることも大切です。

変形性膝関節症の治療法には、どのような方法があるのでしょうか?

リハビリ室にある足湯

まずは、痛み止めを飲むことですね。それからリハビリ、いわゆる運動療法で脚の筋力訓練、主に大腿四頭筋の筋力強化を行い、膝を固定し安定させます。中でも、脚の負担にならずに筋力強化できる運動として、自転車のペダル踏み(エルゴメーター)やプール内歩行などをお勧めしています。その他、関節内へのヒアルロン酸注射、ホットパックや電気療法、さらに靴底の外側を厚くして内側にかかる荷重を逃がす足底板(インソール)を着けるといった、装具療法を行うこともあります。また、温めることで血流をよくして痛みを和らげる温熱療法なども有効であり、当院は別府という温泉地にあることから、リハビリ室に「足湯」を設けています。これらの保存的治療を3カ月程度続けて改善が診られないようであれば、外科的治療を行います。

外科的治療とは、人工膝関節置換術のことですか?

関節鏡視下手術の様子

外科的治療にもいくつか方法があります。半月板損傷の場合は、内視鏡で関節内をきれいに掃除する「関節鏡視下手術」を行います。また、変形性膝関節症で症状が中程度の場合には「骨切り術」を行います。これは、関節近くの骨の一部をウェッジ型に三角形に切って骨の形状や位置を矯正することで、内側に来ている荷重軸を真ん中に戻して膝への負担を軽減する手術です。症状がさらに進行している場合は人工膝関節置換術になるのですが、膝の片側がまだ変形しておらず靭帯が切れていない場合には、内側の悪い部分だけを人工関節に入れ替える「部分置換術」を行います。しかし、症状が末期の状態で膝関節が大きく変形している場合は、膝関節全体を置き換える「全置換術」の適応になります。


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