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専門医インタビュー

圧倒的に女性に発症しやすい変形性股関節症 負担が少ない「前方アプローチ」の人工股関節置換手術で回復を!

  • 五十嵐 達弥 先生
  • 札幌いがらし人工関節クリニック 理事長
  • 011-761-1187

北海道

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北海道大学医学部卒、北海道大学医学部大学院博士課程卒。社団法人日本整形外科学会認定整形外科専門医、医学博士。
得意分野:人工股関節、人工膝関節、ACL、肩肘疾患

この記事の目次

加齢とともに股関節が痛みはじめて動きが悪くなり、歩行がつらいと訴える人は多いといわれており、中には仕事や日常生活に支障が出てしまう人もいるそうです。その股関節の痛みの原因の多くは「変形性股関節症」によるもので、特に女性には生まれつき発症しやすい資質があるとのこと。放っておくと脚の長さが変わり、跛行(はこう)や歩行困難になる可能性もあるため、できるだけ早期の発見が大切です。今回は、変形性股関節症原因からその治療法、中でも患者さんの負担が少なく回復も早い「前方アプローチ」の人工股関節置換手術を中心に、股関節の専門医である札幌いがらし人工関節クリニック 理事長の五十嵐達弥先生に教えていただきました。

歳をとると股関節が痛む人が増え、特に女性に多いと聞きます。

変形性股関節症のX線

股関節の痛みの原因の中で最も多いのは「変形性股関節症」です。股関節は、球状の骨頭を持つ大腿骨が骨盤の窪みにはまる形で構成されています。骨頭の表面は滑りのよい軟骨で覆われており、この骨頭が自在に動くことで股関節は幅広い可動域を得ることができています。しかし加齢などによって軟骨がすり減ってくると、骨と骨が直接ぶつかり合い変形して痛みが生じてきます。また痛みが出た方の脚が少しずつ短くなり、左右の脚の長さの違いから「跛行(はこう)」など歩容が悪化してきます。変形性股関節症は女性の発症が圧倒的に多く、原因としては生まれつき骨盤の被りが浅い「臼蓋形成不全」がほとんどを占めています。何かのきっかけで急に発症するのではなく、臼蓋形成不全などの症状が少しずつ進んで発症するケースが大半ですね。また遺伝的な要素や家族性も強く、患者さんには「母親も股関節の治療経験がある」という人がよくいます。股関節が痛むその他の要因としては、アルコールの大量摂取やステロイドの多用によって骨が壊死する「大腿骨頭壊死」や、若い人が部活やスポーツなどで股関節を傷める「外傷」などがあります。変形性股関節症が腰疾患(座骨神経痛)などと間違われることもあるため、変形性股関節症の診断にはレントゲンやMRIなどを用いて綿密に行う必要があります。

痛みの度合いなど、治療をした方がいいタイミングはありますか?

患者さん一人ひとりで症状は大きく異なっており、レントゲン所見と患者さんの痛みの度合いは必ずしも一致しないため一概に述べることは難しいのですが、痛みが出てきた、跛行になった、可動域が悪くなったなど、「脚の開き具合が左右の脚で違ってきた」、「日常生活で股関節に何となく違和感を覚える」と感じたら、まずは来院して股関節の専門医に相談するのがよいでしょう。もし早期に臼蓋形成不全などが見つかれば、今後の症状の進行を予測した上で最適な治療法を検討することが可能です。症状が初期の段階であれば、治療法は鎮痛剤を服用する薬物療法、体重をかけないようにする生活指導、杖やサポーターなどで股関節への負荷を軽減する装具療法などの保存療法が中心になります。痛みと負担を減らして股関節を長持ちさせるというイメージです。なお、膝関節の場合はヒアルロン酸注射を行うこともありますが、股関節は身体の奥深くにあり神経や血管が複雑に入り組んでいるため、注射は現実的ではありません。一方で、骨盤と骨頭のすき間が完全に無くなり骨頭が変形して潰れている末期の状態であれば、人工股関節置換術を検討する必要があります。通常はまず悪い方の脚を手術して経過をみますが、両脚ともに変形が強い場合は、片脚だけ元の長さになると脚長差が広がって歩き方に不均衡が生じリハビリもスムーズに進まないことから、両側同時に手術することを勧めています。

主な保存療法

薬物療法

関節の炎症を消炎鎮痛剤などの薬物で抑える治療法です。湿布や軟膏などの外用薬も併用して使う場合があります

装具療法

股関節ベルトやサポーターのような装具を付けたり歩行時に杖などを使用したりすることで、
関節への荷重を減らし関節を安定させ、痛みを改善する治療法です

運動療法、生活指導

中殿筋や大腿四頭筋などを鍛えたり体重コントロールを行って肥満を解消し、股関節に負荷がかからないようにします


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