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専門医インタビュー

患者さんの早期社会復帰を支援するMIS人工股関節置換術

この記事の専門医

平川 和男 先生

神奈川県

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日本整形外科学会 整形外科専門医 リウマチ専門医、日本リウマチ学会 リウマチ専門医、日本人工関節学会、American Association of Hip and Knee Surgeons、ORS、Society for Biomaterials

この記事の目次

人工股関節置換術について、どのような方が受けられているのか教えてください。

人工股関節置換術は、傷んだ股関節を取り除いて人工関節に置き換える手術です。手術を受けようと決めるきっかけは人によって千差万別ですが、「何ができなくなったら自分にとって一番嫌か」を基準に決められる方が多いようです。買い物に行けなくなるのが嫌な人もいるし、旅行に行けなくなるのが嫌な人もいます。朝起きてトイレに行くときに痛くて不自由だから手術するという人もいます。多くの方は、日常生活を行う上でやりたいことの半分以上できなくなったら手術を決意されるようです。なお、杖もつかずにずっと跛行を続けていると、膝や腰を悪くするだけではなく反対側の股関節も悪くする可能性があるので、注意が必要です。
また、人工関節には耐久性という寿命があります。無理な行動を取らなければ約15年間は持ちますので、50歳で最初の手術を受けたとすると65歳くらいで取り替えの時期が訪れます。仮に再置換を行ったとすると、次の15年で合わせて30年という考え方もできるようになってきました。2回手術を受けなければなりませんが、それが納得できれば若くして手術をすることも可能です。「どうしても手術は1回でなければ嫌、だから65歳まで痛くても我慢する」という方もいます。

人工股関節置換術を行う際、先生が気を付けていることについて教えてください。

人工股関節置換術を検討される際に重要なことは、手術の内容や人工関節の利点・弱点について、最初にきちんと理解することです。人工関節について耳慣れない言葉や医学用語も多いため、徹底して細かいことを説明すると30分以上かかります。また、多くの患者さんが一度聞いただけでは覚えきれないため、より詳しい冊子も渡しています。手術を受ける前には、ご家族の方と話し合うと共に、病院が配布している冊子などをじっくり読み、手術の利点もリスクも十分に考え、納得できてから臨んでください。

人工関節置換術パンフレットについては、こちらをご覧ください。
http://www.jinko-kansetsu.com/booklet/index.html

人工関節置換術には合併症などのリスクがあると聞いています。

人工股関節置換術における合併症のリスクは、学術報告によれば7~8%と言われており、その原因の多くは、感染、脱臼、静脈血栓症、肺塞栓症、術後転倒による骨折などによります。これらのリスクを少なくするためには、手術時間を短くすることが重要です。手術時間が短ければ、それだけ感染リスクも、手術中の出血量も、麻酔薬の使用量も減ります。当然、体に与えるダメージは少なくなります。
また血栓症を予防するために、術後すぐに動いてもらうことが大切です。足踏み運動やトイレや洗面台には歩いて行くなどといった運動が良いでしょう。手術前と同じような、横になって寝るのは夜だけという生活が望ましいのです。なお、翌日から歩いてもらうためには、手術当日一晩ぐっすり気持ちよく眠っていただく必要があります。痛みを伴う場合には、痛み止めや局所麻酔などで痛みのコントロールを行います。

MIS(エムアイエス)とは、どのような手術でしょうか。

MIS(最小侵襲人工関節置換術)とは、治療部位の切開程度をなるべく小さくする術式です。通常の人工関節置換術より傷口が小さいほか、筋肉をできるだけ切らないように手術を行うため、筋力が保たれリハビリが早く進められるという特徴があります。股関節の場合、従来15~20cmだった切開が、約半分の7~8cmですみ、早期退院、早期社会復帰が可能になります。また、患者さんの中には、傷が小さいことにより、「下着の中に隠れた」、「水着を着られるようなった」といって喜ばれる方もいらっしゃいます。一方、小さい傷つまり中が見えにくい状態で施術するため、医師にはより高い技術が必要になります。手術を検討される場合は、手術数や経験などが豊富な医師やスタッフがおられる施設がよいでしょう。


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