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専門医インタビュー

関節痛のメカニズムとその治療戦略 ~保存療法、人工関節置換術、チーム医療によるリハビリ~

この記事の専門医

森戸 俊行 先生
  • 森戸 俊行 先生
  • 八王子ひがし整形外科 理事長
  • 042-645-2552
  • 昭島整形外科 院長
  • 042-542-2552

東京都

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医学博士、東京医科歯科大学 非常勤講師

この記事の目次

痛みの緩和には、ヒアルロン酸注射が効くと聞きました。

ヒアルロン酸の注射

治療法を決める前に、そもそも関節痛は関節内からの痛みなのか、それとも関節外からの痛みなのかを、問診や触診、レントゲンなどで総合的に判断します。関節の内からの痛みであれば、ヒアルロン酸の注入療法が効果的です。ただ、関節の内からの痛みだけという方は稀です。関節が痛むと歪などが出てくるため、多くの方は関節の外からの痛みも伴います。関節の外からの痛みも伴う場合は、膝関節だけではなく、全身を含めたバランスと動きのトレーニングが必要になります。
ヒアルロン酸は、人体の様々なところに存在しているアミノ酸の一種です。特に関節では関節液や関節軟骨に多く存在し、潤滑作用や緩衝作用といった働きをしています。ヒアルロン酸は粘性のある液体で、体の中のヒアルロン酸は、加齢により減少していきます。ヒアルロン酸注射は、日本で約22年の使用実績があり、使用本数も年間1,000万本といわれています。また、重大な副作用報告例もなくため、臨床上使用して非常に安全な製剤といえるでしょう。
関節炎が起きるとマクロファージという細胞が増殖し、そこから炎症を惹起する因子が出されます。ヒアルロン酸は、このマクロファージの増殖を抑えたり、膝のお皿の周囲で線維組織が増殖して膝のお皿が硬くなるのを防いだりします。膝のお皿は腿の筋肉の働きをそのまま脛骨側に伝える大事な骨で、どういうふうにどのくらい動くかということはとても重要です。
なお、これらの効果は、あくまでもヒアルロン酸を患部に注射したい際に期待されるもので、ヒアルロン酸のサプリメントの効果ではありません。関節の痛みに効用があるようなサプリメントとしては、ヒアルロン酸の他に、コンドロイチンやグルコサミンなどがよく販売されていますが、これらの軟骨の原料を服用しても栄養にはなりますが、傷ついた軟骨が再生されるわけではないため、注意が必要です。

手術をするかどうかの判断は、何を基準にするのですか?

森戸 俊行 先生

関節の痛みが骨に由来する場合は、リハビリだけで痛みを取り除くことはできません。軟骨が消失してしまうと、軟骨は再生されないため、骨と骨がぶつからない様に手術が必要になります。
人工膝関節置換術は、症状が進行したステージの患者さんに適用する、最後の手段です。ただ、なぜか症状がひどく進行しているのにも関わらず、痛みなく歩けるという方が実際にはいらっしゃいます。手術の適用は、レントゲン所見だけや症状だけで判断するのではなく、これらを総合的に判断して決める必要があると思います。
一方で、まだ症状の進行度合いが低いのに関わらず、すごく痛むという人もいます。正常な膝でも患者さんが「痛い」というときには、それは隠れた要因があると思った方が良いでしょう。ちゃんと向き合って話をし、どこがどう痛いのか、どんなときに痛むのかについて聞き出すことが大切です。その上で適切なリハビリを日々実践することで、ほとんどの方で痛みの改善がみられます。

人工関節についてはどう思われますか?

森戸 俊行 先生

人工膝関節置換術の手術風景

飛躍的に改善していると思います。特にポリエチレンの発展やデザイン面での進歩は目覚ましいものがあります。15~20年前に手術した人工関節を散見することがありますが、非常に良好な状態を保っていますし、緩んでいないことが多いようです。今のデザインなら20年間はもつと思いますし、今後さらに耐久性が伸びていく可能性もあるのではないでしょうか。
手術を受ける年齢も、再置換を考慮して60代になるまで待つ必要はありません。50代でも適応があれば、患者さんの了解が得られ次第、躊躇なく行います。恐らく現在のインプラントを使用して新しいテクニックで手術を行えば、再置換せずに済むのではないかと思いますし、もし再置換の必要性が生じたとしても、現在の手術器具を駆使して行えば、技術的にそれ程難しいものではないと考えられます。


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