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専門医インタビュー

放っておかないで! 肩の病気やケガ ~早期に適切な治療を受けることの重要性~

  • 玉井 和哉 先生
  • 東都文京病院 整形外科顧問 獨協医科大学 名誉教授
  • 03-3831-2181

東京都

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日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本リウマチ学会指導医

この記事の目次

肩関節の痛みに関する質問を抱えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。気になる質問に肩関節と関節リウマチの専門医である東都文京病院の玉井先生がお答えくださいました。

肩が痛い!となったら、まず何をすればよいのでしょうか?

まずかかりつけの医師、できれば整形外科医を受診してください。正しい診断を下さないことには治療法もわかりません。病院では「いつ頃からどんな症状が起こっているか?」あるいは「何をすると痛いのか?」「何に困っているのか?」などをお尋ねし、肩の可動域や筋力も調べます。また必要に応じて血液検査、エックス線・MRIなどの画像検査を行います。年齢、スポーツ歴などと総合して医師は診断を下し、それから適切な治療に移ります。

ケガの場合は、患者さんも原因がわかっているのですぐに受診されるでしょうが、それ以外は徐々に痛くなってから来院される方が多いです。急に痛む場合は、炎症の可能性が高いので、湿布をするなら冷やした方がよく、長い間ずっと痛むのであれば、温めた方が緩和される場合が多いのですが、「つらい」と思ったら放置せず、できれば三角巾で吊るすなどして無理に動かさずに、早めに受診されることをおすすめします。

肩こりがひどいのですが、肩関節の病気と何か関係があるのでしょうか?

肩関節そのものの病気やケガと、肩こりとは、まったく別物と考えてください。肩関節は、上腕骨と肩甲骨をつなぐ部分であり、肩こりは首から肩にかけて筋肉が疲労してこわばる症状です。肩こりの原因は首であることが多く、同じ姿勢をとり続けたり、過度なストレスによって引き起こされたり、あるいは目や歯、内臓の疾患であったりと多岐にわたります。温めたりストレッチをしても軽減しないとか、手や腕にしびれを感じたり、肩こりが悪化するようであれば、かかりつけの整形外科医に相談し、検査を受けて正しい診断をしてもらってください。病気が潜んでいる場合では、マッサージなどの対症療法を続けているうちに悪化するケースもありますので、早めに受診したほうが良いでしょう。

人工肩関節手術の入院から退院までの流れを知りたいです。

手術が決まったら、血液検査をはじめ、心電図、呼吸機能、全身麻酔ができるかどうかなどの検査を行います。入院期間は約10日間。手術前に1〜2日、手術後に1週間程度です。手術は1時間半から2時間で終わります。手術後まずは、傷口から出血したり、治りが悪くなったりしないように三角巾で吊って安静にします。1週間を過ぎたら固定してある三角巾をはずしてリハビリを開始します。

退院後、ストレッチなどをご自分でやっていただきます。たとえば前屈みになって手術をしていないほうの手をテーブルなどにつき、手術したほうの腕をぶらんとさせて振り子運動をします。力を抜いてただ、ぶらん、ぶらんと軽く振るだけで結構です。これが最初の運動です。その後に手術したほうの腕を自分で持ち上げたり、ひねったりする練習をします。

変形性肩関節症のリハビリでは、振り子運動が基本。このリハビリを怠ると可動域が悪くなるので続けましょう。ただ術後の患者さんには、「こうしなくちゃ」という要求はあまりしませんし、必要もありません。日常生活があたりまえにできればそれでよし。手術がよければ自然とよくなります。注意点としては、「逆立ちとぶら下がりはしないでください」と説明しています。脱臼の恐れはまずないのですが、負荷がかからないようにはしたほうがいいですね。リハビリはうまく続けられたり、そうでなかったり、と個人差がありますが、痛みは確実に取れます。元通りになるのは早い人で1カ月半、標準的には3カ月が目安となります。

肩の痛みを抱えている方々に何かアドバイスはありますか?

ちょっと前まで肩関節は、「Forgotten joint(忘れられた関節)」と呼ばれていて、よくわからない曖昧なものと捉えられていました。膝や股関節ほど重要視されておらず、放っておけば治るんじゃないかと思われていたのです。膝や股関節と比べて検査や治療法が乏しく、私自身もよくわかりませんでした。しかし偶然、肩を専門にしている先輩がいたのです。その精密で繊細な診察を目にし、「このようにすれば、もっと肩のこともわかるようになるんじゃないか」という気がして、私自身も肩について専門的に取り組むようになりました。

肩が痛い方にお伝えしたいことは、「痛かったら我慢しないで整形外科医を受診してほしい」ということ。治療のタイミングが悪いと、よくなるものもよくならない場合があります。五十肩と思って放置していたら、関節の変形が進んでいたということもあります。早めに受診してください。また、肩の病気の多くはよくなるまでに時間がかかります。すぐ治らないからといってひどい病気と思い込んだり、転院を繰り返したりと、短絡的にならないでいただきたいですね。医師は必要な検査と適切な治療を行いますし、リハビリでよくなることもたくさんあります。ですので、気長に取り組んでいただければと思います。


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