関節治療の専門医に聞いてみました!

第107回 紙上採録 ひざの健康講座
   〜専門医が丁寧に解説!知っておきたい治療法〜

ドクター
プロフィール
中之島いわき病院院長・人工関節センター長
ひざの痛みに悩んでいる人のための健康講座が、9月28日、マイドームおおさか(大阪市中央区)で開催された。専門医の岩城啓好医師によるわかりやすい講演に、約500人もの来場者が熱心に耳を傾けていた。
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朝日新聞(2013/10/26)より転載
主催:朝日カルチャーセンター
後援:朝日新聞社広告局
協力:人工関節ライフ

ひざの健康を取り戻すことで豊かな暮らしを目指しましょう。

ひざが痛む原因は軟骨がすり減るから

ひざの病気のなかで最も多い「変形性膝関節症」は、全国に約2400万人もの患者がいるといわれています。 50〜60代で痛みを感じ始めることが多く、男性よりも女性に多いのが特徴です。

初期の症状として、立ち上がる時や深くしゃがむ時に痛んだり、正座や階段の上り下り、長距離の歩行がつらくなったりします。 さらに悪化すると、O脚が進み、痛みのために歩行困難になることさえあります。

なぜこのようなことが起こるのでしょう。それは、加齢、すなわち長年ひざを使い続けることで、軟骨が徐々にすり減っていくためです。 クッションのような役割を果たしている軟骨が減ると、骨同士がぶつかるようになり、やがて骨そのものが変形してしまうのです。 ひざの病気はほかに、関節の膜(滑膜)が炎症を起こす「関節リウマチ」、大腿骨の細胞が死んでしまう「大腿骨顆部壊死」などがあります。

減量と筋トレで負荷を減らす努力を

初期の「変形性膝関節症」を治すために重要なことは、「体重コントロール」と「運動」です。 「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、ひざへの負荷が減るため確実に効果がありますし、副作用はゼロ。 もちろん費用もかかりません。BMI値(※)が25以上の人は、まずは2、3㌔の減量を目標に努力してみてください。 運動は、大腿四頭筋の訓練(写真右下)がおすすめです。食事の前に必ず行うなど、習慣づけるといいですね。

ご自身で頑張っていただくことに加え、病院では症状に応じた様々な治療を行います。 例えば、消炎鎮痛剤の服用、湿布、サポーターや底敷きを使う装具療法などです。 また、ヒアルロン酸やステロイドを関節内に注射して、症状を抑えることもあります。 ※ 体重〈㌔〉÷(身長〈㍍〉×身長〈㍍〉)で計算する肥満指数のこと

おすすめの運動療法〜大腿四頭筋の訓練〜 椅子に深く腰掛け、痛む側のひざをピンと伸ばす(つま先は上に向けたまま)。 太ももの前側にギューッと力を入れて5~10秒キープし、緩めて元に戻す。 朝・昼・晩30回ずつ行うのが理想。2カ月ほどで効果が期待できる。

患者の満足度が高い人工関節の手術

これまでに紹介した治療法で十分な効果が得られない場合や、すでに症状が進行している場合に行われるのが、「人工膝関節置換術」です。 これは、関節の一部あるいは全部を人工関節に置き換える手術です。手術件数はこの10年間で2倍以上に増えており、今では年間8万件以上にも上ります。

「人工膝関節置換術」のメリットは第一に、痛みがとれる割合が高く、生活の質が大きく改善することです。 術後、テニスやゴルフなどのスポーツや旅行を楽しむ人も大勢います。第二に、治療の効果が長持ちします。 人工膝関節の耐久年数を心配する人もいますが、術後10年経っても9割以上、20年後も8割以上の患者さんは問題なく使えています。 また、人工膝関節の材質やデザインは年々進歩しており、これから手術をする場合はさらに長持ちするのではと期待しています。 第三に、入院期間が短く済むということです。ほとんどの人が手術の翌日から歩行訓練を始め、約2~4週間で退院できます。 また近年は、術後の疼痛を抑えるための様々な工夫も取り入れられています。

手術による治療はほかに、O脚になった脚を正常に戻す「高位脛骨骨切り術」、軟骨などの損傷部分を取り除く「関節鏡手術」などがあります。 これらの効果については医師によって意見が分かれており、近年、手術数は減少してきています。

ひざの痛みとの向き合い方は、ご自身が「どのような生活を送りたいか」によって異なるでしょう。 でも、痛みをこらえて家の中だけで暮らすのと、旅行やスポーツを自由に楽しみながら暮らすのとでは、人生の満足度は大きく変わるはずです。 今は、人工膝関節置換術などの手術はもちろん、生活指導やリハビリテーションを含めた様々な治療法があります。 症状が進行する前に、ぜひ一度、専門医にご相談ください。

両ひざが悪い場合、一度に手術すべき?

医師が可能と判断した場合は、費用や精神的負担を考えても、一度に手術した方がよいでしょう。片脚ずつ手術をすると、悪い方のひざの状態に引っ張られて、治した方のひざが再び悪化してしまうケースもあります。

手術は何歳まで可能ですか?

手術ができる健康状態ならば、年齢制限はとくにありません。健康状態が良好であれば、90歳以上の人でも手術が可能でしょう。

所要時間とデメリットを教えてください。

手術の所要時間は、片脚の場合は約1時間、両脚なら約2時間です。デメリットは、感染による合併症で、約0.2〜0.5%の可能性で起こるといわれています。

iPS細胞は治療に役立ちますか?

軟骨の再生に期待が集まっていますが、実際の医療現場で実現するのはまだまだ先のことになりそうです。当分の間は、人工関節の手術が現実的な治療法といえるでしょう。

股関節の痛みを解消するために

股関節の痛みを引き起こす「変形性股関節症」。
その原因と治療法について、岩城啓好医師に聞いた。

脚の長さが変わってしまうことも

股関節の病気の大半を占める「変形性股関節症」。初期症状は、股関節やおしり、太もも、ひざに痛みやこわばりなどを感じるようになる。進行すると、股関節の可動域が狭くなって、歩行にも支障をきたすように。さらに末期には、股関節が著しく変形し、左右の脚の長さが変わってしまうこともある。

「股関節は、“ひっくり返したおわん”のような骨盤側のくぼみと、“ボール”のような球状の大腿骨骨頭からできています。このすき間にある軟骨がすり減ることで、骨同士がこすれて、変形を引き起こすのです」と岩城医師。

ではなぜこのような症状が起こるのか。「日本人の変形性股関節症のおよそ8割は、先天的に骨盤のへこみが浅い『臼蓋形成不全』が原因です。臼蓋形成不全の人は、通常よりも軟骨に負荷がかかるため、変形性股関節症を引き起こしやすいのです」。この場合、比較的若い患者でまだ軟骨が残っていれば、骨盤や大腿骨の一部を切る「骨切り術」でかみ合わせを深くすることもあるが、約9割の患者には「人工股関節置換術」による治療が適用されるという。

人工関節で快適な日常生活を

変形性股関節症の治療で一般的な「人工股関節置換術」は、すり減った軟骨と傷んだ骨を取り除き、人工股関節に置き換える手術のことをいう。 「個人差はありますが、人工股関節置換術による手術後、1〜3週間もすれば退院できます。 痛みがとても楽になり、多くの人が快適な暮らしを取り戻しています」

また、近年は手術の方法も進化しており、「MIS」(Minimally Invasive Surgery)とよばれる「低侵襲手術」によって、 筋肉や靱帯の損傷を小さくし、体への負担を抑える方法もとられている。

変形性股関節症の患者のなかには、「人工股関節は脱臼しやすいのではないか」と心配する人も少なくない。 「たしかにその危険性はありますが、最近の人工股関節は、骨頭ボールのサイズが大きくなり、材質も進化したため、以前より格段に脱臼しにくくなっています。 また、より脱臼しにくい状態を作るため、体の後方の組織を温存する手術法もあります。 術後、テニスやゴルフなどのスポーツ、和式トイレ、自転車、正座など、日常生活の動作を厳しく制限する必要はないと思いますが、 医師によって考え方や手術の方法は異なるので、事前にしっかり相談してください」と岩城医師。

一般的に、体がぶつかったり高い所から飛び降りたりするなどの激しい衝撃が加わるスポーツは避けたほうがいいそうだ。 また術後は、人工股関節が緩んでいないかなどを確認するためにも、1〜2年に1度のペースで定期検診を受けることが欠かせない。

「実は、要支援や要介護の状態になる原因の約20%は、骨折を含めた関節疾患です。でも、これまでお話ししてきたように、関節疾患は治せる可能性が極めて高い病気です。 我慢し続けて手遅れになる前に、早めに専門医に相談されてはいかがでしょうか」

あなたの股関節の具合は?簡単セルフチェック


3個以下 → 初期の症状 軟骨がわずかに傷ついているかもしれません。 痛みが続くようなら医療機関の受診を。

4〜6個 → 進行期の症状 医療機関での早期の治療や生活指導により、痛みや症状が軽くなる可能性大。

7個以上 → 末期の症状 痛み止めの内服や湿布などで効果が少ない場合は、医師から手術をすすめられる可能性も。

出所:人工関節ライフ ホームページ ※結果は全ての方にあてはまるとは限りません。 あくまでも自己判断の参考として活用ください。


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