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専門医インタビュー

人工関節手術のリハビリを支える「チーム医療」の現場から(股関節編)

東京都

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埼玉医科大学卒業。
医学博士。日本整形外科学会 整形外科専門医。

この記事の目次

人工関節手術後のリハビリは大変そう、という話を時々耳にしますが、リハビリにはどんな意味があるのでしょうか? 人工関節手術では、痛みを改善することのほかに、「機能回復」も重要な目的のひとつです。しっかり歩けるようになり、日常動作が問題なくできるようになるためには、関節を支える筋肉をきたえるリハビリが欠かせません。 今回は、リハビリを「チーム医療」で支えていらっしゃる西東京中央病院のスタッフにお話しを伺いました。

人工股関節手術後のリハビリは、いつごろから、どのくらいの期間行うのですか?

手術の3日後頃までに開始し、1か月程度行う

年齢や体力などによって個人差があり、病院によっても多少の差がありますので、一例を紹介しましょう。

車椅子
まず、手術の翌日から3日後くらいまでには、車いすに乗ります。その際、ドクターや看護師が介助し、いったん床に足をつけて車いすに移動します。手術後3日くらいが経過したら、理学療法士(PT)が入って、具体的なリハビリが開始されます。

手術から2週間ほど経ったら、正しい姿勢での歩行訓練を行い、その1~2週間後くらいで終了となりますので、合計で1か月程度のリハビリ期間ということになります。階段の昇降が可能になることが、退院の目安のひとつと考える病院が多いようです。

※リハビリの期間や進行具合は個人の状況や、病院によって異なります。

具体的なリハビリの内容について教えてください。

回復に応じた適切なリハビリを指導

リハビリ室では、はじめのうちは股関節に荷重(かじゅう)をかけずに、股関節の可動域(動く範囲)を拡大させるためのストレッチなどをしっかり行います。股関節が動くようになったら、荷重(かじゅう)をかけた正しい姿勢での歩行練習に移行します。

また、日常の生活動作に必要な股関節の動きを実践することも大切です。特に、床に座ったり、床から立ち上がったりする動作などは、脱臼(だっきゅう)しやすいため注意しなくてはなりません。避けるべき股関節の動きを知って、どのように動くのが安全かを、体で覚えていただくことも必要なのです。

リハビリは痛いもの? つらいもの?

痛みやつらさの感じ方には個人差がある

人工関節手術は、痛みの軽減や姿勢の矯正などが主な目的です。手術後は、「手術前のあのつらい痛みはなくなった」とおっしゃる方がほとんどで、リハビリの際にも「多少痛みはあるが、ほとんど気にならない」という方が多く見受けられます。

リハビリ器具

しかし、手術後間もない時期のリハビリの際には、縫合部の痛みや筋肉痛による痛みなどを感じる方もいらっしゃいます。また、体内に人工関節を入れたわけですから、違和感や不安感を持たれる方も少なくはありません。しかし、リハビリを続けることによって、これらの痛みや違和感などはしだいに少なくなっていくようです。

痛みやその感じ方には個人差があり、人によってそれぞれなので、「リハビリは痛いもの・つらいものではない」と断言することはできません。ですが、手術前の痛みがなくなったことの喜びを感じ、退院後の楽しみを描きながら、生き生きとリハビリに励まれる方は多いですね。

病院としては、どのような体制で患者さんのリハビリをサポートするのですか?

分野の異なる担当がチームを組んでサポート

一般的には、手術を担当する医師、リハビリを担当する理学療法士、入院生活のケアを担当する看護師などのスタッフが一体となり、チーム医療でそれぞれの患者さんをサポートします。

具体的には、患者さんに関する報告・相談などを、担当スタッフ同士が連絡ノートなどに記入して受け渡したり、ミーティングの際に話し合ったり、全員がしっかりと個々の患者さんの状況を把握できるように心がけます。場合によっては、患者さんの退院後の生活について、近隣のソーシャルワーカーと相談してサポートを依頼することもあります。

こうしたチーム医療の体制を整え、多角的な視野からひとりの患者さんの治療にあたることは、患者さんの不安を取り除くと同時に、患者さんにあったリハビリの実践につながります。

患者として、リハビリに対する心構えは?

しっかり説明を聞いて、理解して、あせらず、前向きに

通常、手術前に、手術前から手術後のリハビリ~退院に至るまでのスケジュールとその詳細について、十分な説明が行われます。不明な点や不安に感じることなどがあれば、遠慮なく質問して理解してください。

実際のリハビリの際にも、理学療法士や看護師の説明をよく聞いていただき、疑問や要望などは、積極的に話してください。

リハビリの進行具合は、それぞれの患者さんによって異なります。はじめのうちは、自分が思うように身体が動かないことがあるかもしれません。また、リハビリ室ではできていたことが、病棟のベッドの上ではなかなかできない、ということもあります。そんな時は、あせったり悲観的になったりせずに、病院スタッフの介助を得るなどしながら、根気強くリハビリを続けていくことが大切です。

患者さんへの説明に使われる 入院治療計画書の例

患者さんへの説明に使われる 入院治療計画書の例

リハビリは、1日どのくらいの時間やるのですか?

1日1時間程度が一般的。後は患者さんの自主性

リハビリ

これも、患者さんの回復状況や病院によって異なりますが、人工股関節手術の患者さんのリハビリにかける時間は、実質1日1時間程度というのが多いようです。これは、理学療法士が指導しながらリハビリを行う時間です。

手術後、何度かリハビリを行って慣れてくると、病棟に戻ってからも自主的にリハビリを行う方も少なくはありません。同じ病室の患者さん同士で、声を掛け合って励まし合いながら、楽しくトレーニングされるケースもあります。

ただし、早い回復や退院を期待して、無理をすることは禁物。リハビリの進行状況は個人差がありますから、理学療法士の指導を仰いだ上で、ご自分に合った無理のない自主トレーニングを行うべきです。

退院した後は、どのくらいの頻度で診察をしてもらえばいいのでしょう?

手術後1年を経過したら、年に1~2度

患者さんの状況によって、また各病院によって多少の違いはありますが、特に問題がなければ、退院後1か月、3か月、半年といったタイミングで手術後1年までの間に数回、2年目以降は半年から1年に1度、担当医師に診てもらうというケースが一般的です。もちろん、何か不具合が発生した場合は、随時診察してもらいましょう。

人工関節は、日常生活の動作によって、少しずつ摩耗していくものです。耐用年数は一般的に15~20年くらいと言われています。快適な生活を続けるためには、「自動車の車検」と同じように、どんなに調子が良くても最低限の定期診察は忘れずに行いたいですね。


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