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専門医インタビュー

筋肉を温存する人工膝関節置換術 ~あなたの痛みと向き合います~

この記事の専門医

平中 崇文 先生
  • 平中 崇文 先生
  • 高槻病院 関節センター センター長 主任部長
  • 072-681-3801

大阪府

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医学博士、日本整形外科学会専門医、神戸大学臨床准教授

この記事の目次

人工膝関節置換術にはどのようなリスクがありますか。

自己血を回収するドレナージシステムの一例

手術のリスクとしては、感染があげられます。割合は、だいたい1%くらいといわれています。もうひとつは、血栓症・塞栓症(いわゆるエコノミー症候群)です。手術中または手術後、血流が悪くなることで血管内に血の塊ができることがあります。これを血栓症といいます。この血栓が剥がれ、肺や他の臓器に流れていって詰まってしまうことが塞栓症です。
最近は抗生物質の投与や手術時の医師の防護服などで、感染については厳しく対応しています。また、発生頻度は極めて低いものの、膀胱炎や扁桃腺炎が原因で、術後半年以上、場合によっては何年も経ってから感染症が起き、化膿することもあります。化膿すると人工関節を取り出し、洗って再手術しなければならない場合もあります。血栓に関しては、手術後に体を動かさないことで血栓ができるので、手術翌日からしっかりリハビリを行います。血栓ができるのは統計によれば0.4%といわれています。また、出血のリスクですが、いまは本人の血液を事前に貯血していること、手術中に出血した血液を回収して体内に戻すことで、輸血でのリスクはほとんどありません。

術後の主な流れについて教えてください。

手術翌日から歩行器で歩くことができます。4~5日目には杖歩行ができ、抜糸は10日目頃です。その頃には安定した杖歩行ができるので1泊、外泊をしてもらってその後、退院となります。中にはもう1週間くらい入院を続け、入院期間が3週間になる方もあります。部分置換術の場合は回復がもっと早くて2~3日目には杖歩行ができるようになり、入院期間も10日程度です。
多くの患者さんが驚かれるのですが、人工膝関節置換術を受けられた方は、抜糸の頃には痛みがほとんど消えてしまいます。また、関節の変形でO客やX脚になっていた足がまっすぐになり、女性の患者さんには、モデルさんの足のようだと言って喜ばれます。歩行障害がなくなることで、やりたいことができ、行きたいところに行けるようになります。正座以外は、テニス、卓球、ゴルフ、水泳、旅行など、何でも楽しんでください。人工膝関節は、設計上は膝が150度曲げられるようになっています。術後のリハビリをしっかりして、120度曲げられるようになれば、自転車にも乗れます。リハビリは、「痛みを解消して、早く歩きたい」という意志を持って取り組むことが重要です。リハビリを理学療法士任せにするのではなく、自分で意識をして頑張ることが早期回復に繋がります。

手術を受けることができる年齢や術後の注意事項について、教えて下さい。

手術を受けられる方の平均年齢は75歳ですが、いまでは50代、60代でも、80代、90代でも大丈夫です。私が医師になった頃は70代にしかおこなえない手術と言われていましたが、技術も人工関節も飛躍的に進歩しました。昨年は176名の方に手術をおこない、39%の方が両足同時手術、7名の方が80代後半以上の方でした。
手術後の注意事項としては、飛行機に乗るときに金属探知機のアラームが鳴るので、金属が身体に入っていることを証明するカードを発行しています。MRI検査も大丈夫ですが、体内に金属が入っていることを事前に申告してください。

人工膝関節置換術を受けようかどうかと迷っている方にアドバイスをお願いします。

まず、正しい知識を持っていただきたいということです。世間にあふれている情報には、正しいものもありますが、間違いやデマもたくさんあります。インターネット等の情報に頼らず、実際に近くの専門医を受診し、ご自身の膝の状態について、正しく診断してもらって下さい。治療法や手術については、ご本人とご家族の方と一緒にじっくりお話をしますので、あまり恐れずに相談に来てください。その際、治療のメリット、デメリットなどについても、納得がいくまで十分に聞いてください。また、実際に手術を受けた方の体験談を聞いてみるのが良いでしょう。病院によっては、同じ悩みや症状を持つ人々の情報交換や意見交換の場として、「患者会」を運営していることがありますので、参加されるのもお勧めです。私は「以前の膝に戻りたい」という患者さんの願いに応えていけるように、今後も技術を高めていきたいと思います。


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