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専門医インタビュー

手術に踏み切るタイミングは患者さんのライフスタイルを頭に描いて

この記事の専門医

岡崎 賢 先生

東京都

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福岡県出身、1993 年九州大学医学部医学科卒業、同大学院医学系研究科修了。2000 年米国ワシントン大学整形外科留学、 帰国後、九州大学病院医員に。同大学院医学研究院助手(次世代低侵襲治療学)、助教、講師、准教授を経て、2017 年現職に

この記事の目次

生活の幅が小さくなってきた

患者さんの生活が縮小傾向にあり「困っている」場合に、人工膝関節置換術を勧めます。

患者さんの生活が縮小傾向にあり「困っている」場合に、
人工膝関節置換術を勧めます。


人工膝関節により脚の全体的なバランスが整う

保存療法を続けていても、だいぶ膝の状態が悪化して辛そうだと思ったら、私は患者さんに聞いてみます。
「夫婦での旅行とか、友人とのバス旅行など、楽しみにしていたことをあきらめていませんか」「生活の幅が小さくなっていませんか」。
その時、患者さんが「まだ行けてます、大丈夫」と言う顔が明るければ、手術は勧めません。
中には「大丈夫です」と言うけれど、よく聞いていくと「神社仏閣巡りに行ったけれど、階段が上れないから私はバスの中で待っていただけ」「子どもから海外旅行を誘われたけれど断った」などという話が出て来たら、手術には消極的な人でも、もう一度ゆっくり手術の説明をしてみます。
ただ、画像で変形の度合いを見て適応を決めるわけではありません。あくまでも患者さんの困り具合の程度によります。
患者さんがどんなことを求めているのか、60歳でも家の近所を歩けるだけでいいのか、80歳だけれど四国巡礼の旅に行きたいのか、じっくり話を聞いてその人のライフスタイルを想像するのです。
その人にとって一番良い手術のタイミングの見極めは難しいですが、非常に大事です。
膝の痛みのために、自分がやりたいことができなくなった、昨年まで歩いて行けたスーパーにタクシーを使わないと行けなくなったなど、生活に変化が出たり、生活の質が落ちてきた時が手術のサインだと考えます。
人工膝関節置換術の目的は、痛みを取って自分の足で動けるようにすることで、患者さんのQOL(生活の質)を上げていくのが整形外科医の仕事です。

手術前の膝の柔軟さと筋力がポイント

岡崎 賢 先生

手術は怖いからと、先延ばしにして、いよいよ膝が曲がらなくなってから手術するより、まだ膝が良く動く段階で手術をしたほうが、手術後の満足度が高いことが分かっています。
手術前に膝があまり曲がらなかった人は、手術をしてもあまり曲がりません。曲がらないとこわばるから、余計に動く範囲が狭まり満足度が低くなるでしょう。
しっかり曲がっていた人は、筋肉もしなやかで柔らかいので、手術後もよく曲がります。できることも多く、違和感も少なく、より喜ばれています。
手術後の曲がり具合は手術前の曲がり方と密接に関係します。また、手術前の活動性と手術後の活動性も、密接に影響していることも分かっています。
手術前に手すりを使わず階段を上れた人は、手術後もできますが、できていなかった人は、手術後も手すりにつかまらないと上れないでしょう。
筋力のあるなしも、完全にリンクしているのです。 手術すれば、だれでも膝が若い頃のようになるわけではありません。手術前の状態が大事なのです。
外出しなくなるほど日常生活動作が悪化してからではなく、まだ活動的であるうちに手術をする、このタイミングが大事だと思っています。

こだわりは安定した膝を作ること

骨切り術も部分置換も全置換も、入院期間にそう違いはありません。手術にかかる時間は、1時間から1時間半。 どんな手術でも、手術後にいつまでも横になっているのは良くないので、翌日には自分の足で動いてもらいます。 つかまりながらトイレも自分で。その後、1週間から2週間、病院の中でリハビリを頑張ってもらいます。 私が手術でこだわっていることは、安定した膝を作ること、グラグラした膝にしないようにすることです。膝関節 は上下がつながっていません。つなげているのは靭帯です。脛骨・大腿骨に正しく金属を入れるにはどうしたらいいか、どういう角度で入れるか、それぞれの状態に応じていろんな方法、自分なりのやり方があります。 人工関節が緩まないように、力強い膝が取り戻せるように、しっかり安定した状態を作り上げたいと思っています。


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