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専門医インタビュー

「膝の痛み」は奥が深い。治療やリハビリしっかり膝専門医と相談を

この記事の専門医

黒河内 和俊 先生
  • 黒河内 和俊 先生
  • 重工大須病院 院長
  • 052-212-8981

愛知県

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平成2年 名古屋大学医学部卒業、平成6年 名古屋大学大学院医学研究科博士課程、平成10年 米国ペンシルバニア州立大学医学部、平成11年 日本学術振興会特別研究員、平成12年 三菱名古屋病院整形外科部長、平成23年 三菱名古屋病院副院長、平成30年 重工記念病院副院長/整形外科・関節鏡センター長、日本整形外科学会(専門医)、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(評議員、関節鏡技術認定医)、日本スポーツ協会公認スポーツドクター 他

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この記事の目次

人工膝関節にすると、どのような症状が改善されますか?

人工膝関節全置換術のX線画像

人工膝関節全置換術のX線画像

変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減り、軟骨下の骨同士がぶつかり合うために骨が変形していく病気です。骨の変形がひどく進んでしまっている患者さんには人工膝関節置換術をおすすめします。これは変形した大腿骨と脛骨(と場合によっては膝蓋骨も)の骨を部分的に取り除いて金属に変え、金属と金属の間には軟骨の代わりとなるプラスチック(高分子ポリエチレン)を挿入することで膝の変形を元に戻し、膝の関節機能を再建するものです。人工膝関節置換術を行うと、患者さんの痛みが軽減し機能が改善するため、活動量が上がるなどQOL(生活の質)が向上します。人工膝関節の構造や機能が変形する前の本来の膝に近づき、軟骨の代わりのプラスチックの材質が改良されてきたことで、人工膝関節の摩耗や破損のリスクが下がり、耐久性が格段に向上しているため、長期にわたり安定した治療効果が持続することが知られています。

人工膝関節置換術の種類を教えてください

人工膝関節部分置換術のX線画像

人工膝関節部分置換術のX線画像

人工膝関節置換術には「全置換」と「部分置換」があります。膝関節の内側の骨だけがすり減り膝の変形がひどく進行していない状態であれば、人工膝関節は「部分置換」が良い適応です。「部分置換」は「全置換」より自分の膝の組織を温存することができる手術のため、手術後に患者さんの体への負担が少なくてすみます。例えば、最近の人工膝関節置換術では術中や術後の出血が少なく、他人の血を輸血する必要はなくなりましたが、特に「部分置換」での出血はごく少量で、手術翌日から元気に動くことができます。したがって術後の合併症が少ないため、より高齢者に対しても行うことができ、超高齢化社会を迎えている日本では今後ますます増加していく手術と考えています。
また、「部分置換」は「全置換」に比べてより生理的な膝の関節機能を再建することができるため、手術後に良好な膝の曲がりを獲得することができ、症例によっては正座も可能となります。ただし、人工膝関節置換術の適応がある患者さんすべてに「部分置換」を行うことができるわけではなく、手術適応の評価が非常に重要となるため、「部分置換」の人工膝関節置換術を希望する場合は特に、人工膝関節置換術に慣れた膝の専門医に良く相談する必要があります。

人工膝関節置換術後のリハビリについて教えてください

患者さんが人工膝関節置換術を受けるのは、ご自身の生活の質を高めることが目的ですから、術後のリハビリで画一的なことをやればよいのではなく、患者さんのニーズや個別の状態に合わせたオーダーメイドのリハビリを行っていくことが重要です。その点、膝の専門医のもと膝の治療に長年携わっている理学療法士は、一般の整形外科医師以上に変形性膝関節症に対する知識を持っており、保存的治療や人工膝関節置換術などに対する術後のリハビリ指導経験も豊富です。人工膝関節置換術前から、手術直後、入院中、退院後の外来通院も含めてトータルでオーダーメイドのリハビリを提供してくれる病院というのも、膝の治療を任せる病院を選ぶ一つの目安になると思います。

最後に「膝の痛み」で悩んでいる方へメッセージをお願いいたします

黒河内 和俊 先生

私たち人間は、組織や細胞レベルでも加齢の影響が出てきます。当然、膝関節も年齢を重ねていくとともに必然的に傷んでいき、50歳以上では二人に一人が変形性膝関節症であるとも言われています。同じスポーツや膝を使う労働に長期間携わっていればなおさらです。患者さんの中には、保存的治療にこだわるあまり、膝の痛みや変形によって制限された生活を長期間続けてしまい、どうにもならなくなってからようやく人工膝関節置換術を決断したときには、膝関節だけでなく、全身の健康状態まで悪化してしまっているというケースも少なくありません。医療は日々進歩しており、前述したAPS療法、人工膝関節の構造や機能、材質のさらなる改良、手術中の出血量の軽減や術後の血栓などに対するリスク対策、術後を含めた「膝の痛み」のコントロールなど、患者さんにとっては福音といえる治療法やリスク対策が次々と開発され、実践されてきています。「膝が痛い」と感じたら早めに整形外科を受診するだけでなく、漫然と同じ治療を続けることが無いように自発的に膝の専門医を受診され、様々な治療法があることを理解し、医師のアドバイスを聞いたうえで自分にとって最適な治療やリハビリを自ら選択し、より良い治療を受けるチャンスを逃さないようにしていただきたいと思います。




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