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専門医インタビュー

満足度の高い治療を受けるには、タイミングも大事

この記事の専門医

坂越 大悟 先生
  • 坂越 大悟 先生
  • 厚生連高岡病院 人工関節センター長 整形外科診療部長待遇
  • 0766-21-3930

富山県

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専門分野:関節外科(股関節・膝関節)、人工関節
資格:日本整形外科学会 専門医
所属学会:日本整形外科学会、日本人工関節学会、日本股関節学会、中部日本整形外科災害外科学会

この記事の目次

人工股関節置換術について詳しく教えてください

イメージ写真

人工股関節置換術の適応となるのは、日常生活に支障をきたすくらい股関節に痛みがある、股関節が動かしにくい可動域制限のあるといった場合です。動きについては、例えば、靴下やズボンの脱ぎ履きがしづらい、和式トイレでしゃがみこめないとなると、人工股関節を考えたほうがいい段階です。ただ、変形性股関節症の患者さんが人工股関節置換術を選択する大きな決め手は痛みです。変形性股関節症の痛みは、じっとしていれば何ともないことが多いのですが、関節内に炎症が起きてくると安静時でも痛みだします。そうなると、就寝中もつらく、とにかく痛みをなんとかしたくて、人工股関節置換術を希望されるという人が多いのです。しかも、変形性股関節症も末期になり、股関節の拘縮で動きが悪くなってくると、隣接する関節にも負担がかかり、膝や腰にも痛みが出てくることがあります。実際、膝が痛くて来院した患者さんをよく調べてみたところ、膝よりも股関節のほうが悪く、股関節を先に治療したというケースもままあります。

人工股関節手術のメリットとデメリットを教えてください

人工股関節の一例

人工股関節の一例

人工股関節置換術は、股関節を人工関節に入れ換えるわけですから、決して小さな手術ではありません。手術後も、人工関節周囲の骨折などを防止するために、体がぶつかり合うような衝撃を伴うスポーツは避けてほしいといった、日常生活で気をつけてほしいこともあります。また、自動車の車検のように、何もトラブルがなくても定期的な検診を受けることも必要です。これらをデメリットと捉えて躊躇する人もいるかもしれませんが、私は、むしろ人工股関節にすることのメリットのほうがだんぜん大きいと思っています。特に大きなメリットは、股関節を人工関節にすることで痛みが改善しやすいことです。関節の動きも改善するので、これまでできなかったことが楽にできるようになる人が多いのです。実際、私の患者さんでは、足が痛くてできなくなってしまっていたご主人の介護が、またできるようになったと言って喜んでいる方や、里帰り出産される娘さんのために手術を受け、孫の世話ができて嬉しいとおっしゃる方もいます。

人工股関節にすると脱臼しやすいと聞いたことがあります

人工股関節置換術後の脱臼のしやすさについては、比較的多いとされているのが「後方脱臼」です。しゃがみ込んだり、横座りをしたりしたときに、人工関節が後ろ側に外れてしまうことがあります。これを何回か繰り返してしまうと、人工股関節をもう一度入れ直さなければならなくなることがあります。
やや専門的になりますが、もともと股関節の骨頭は3つの靭帯で形成される関節包で覆われているため、簡単に脱臼することはありません。ところが、これまでの手術手技では、人工関節を入れるときに、この関節包靭帯を切らざるを得ませんでした。関節包靱帯を切ってしまうと、術後、脱臼しやすくなります。そのため、脱臼のリスクがほとんどない「CPPアプローチ」というMIS(最小侵襲手術)を採用しています。
CPPアプローチというのは、一言でいうと、関節包靭帯を切ることなく、温存しながら人工股関節に置換する手術手技です。3つの関節包靭帯のいずれも傷めることなく、股関節の下側のわずかな隙間から人工関節を挿入します。難易度が高く、熟練を要する手技なのですが、私がそれに取り組んでいるのは、患者さんの要望が高くなっているからです。
CPPアプローチに変更してからは、術後の脱臼のリスクが減り、脚長差も改善しています。この術式だと股関節の安定性も高いので、人工関節専門のリハビリ担当者は、以前よりも術後の回復が早い人が多いと感じているそうです。
これまでMISは、筋肉を切らずに温存することに着目されてきましたが、今は筋肉だけじゃなく関節包靭帯も温存することで、より患者さんにメリットのある人工股関節置換術が実施され始めています。


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