関節治療の専門医に聞いてみました!

第223回 膝関節や股関節の痛み我慢せず、あきらめず、
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ドクター
プロフィール
所属学会:日本整形外科学会(専門医)、日本リウマチ学会(専門医・指導医)、日本人工関節学会、日本股関節学会、中部日本整形外科学会、中国・四国整形外科学会
エリア 鳥取県タグ
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岸本 勇二 先生

膝関節や股関節の変形性関節症で長年痛みに悩んでいる人の中には、期待しているほどの効果がなかなか得られないまま治療を続け、我慢を重ねている人も多いといいます。また、思い込みや、間違った情報に惑わされて、最初から痛みをあきらめている人も少なくないようです。「その痛みは、適切な治療を行えば劇的に改善するかもしれません。一人で悩まず、まずは近くの整形外科を受診してみてください」とアドバイスする岸本勇二先生に、お話しをうかがいました。

膝関節や股関節の痛みの原因となる主な疾患を教えてください

寛骨臼形成不全

寛骨臼形成不全

膝関節も股関節も、痛みの原因として一番多いのは「変形性関節症」です。関節は、骨の表面を覆う関節軟骨がクッションの役目を果たし、関節に加わる衝撃を吸収していますが、加齢に伴って徐々に傷んだり、すり減ったりしていきます。そこに、さらに肥満や運動過多、外傷などが加わることで、関節軟骨の変性や摩耗が進行し、痛みを生じるというのが、変形性関節症です。
変形性膝関節症は、多くの場合加齢とともに発症しますので、痛みを訴えて受診する人は60代~80代に多く見られます。これに対し変形性股関節症は、骨盤側にあるお椀のような形をした寛骨臼のくぼみが生まれつき浅いという形態異常(寛骨臼形成不全)を伴って発症するケースが多く、30代~40代で痛みが出て、その後5年~10年をかけて進行していくことが多いようです。また、近年では、とくに股関節に形態異常はみられないのに、加齢による姿勢の変化やそれに伴う骨盤の傾きなどが影響して、高齢になってから急に変形性股関節症を発症するケースも増えています。

変形性関節症はどのような治療から始めるのでしょう?

膝関節にはヒアルロン酸注射

膝関節にはヒアルロン酸注射

まずは、膝関節や股関節に負担がかからないようにする生活指導、関節周囲の筋力を強化する運動療法、痛み止めの薬で症状を和らげる薬物療法などの保存療法から始めます。ただし、これらの治療で十分に症状の改善が得られない場合は、いたずらに痛みを我慢し続けず、次のステップに進むことが大切です。
次のステップとして、膝関節にはヒアルロン酸注射、股関節にはステロイド注射があります。ヒアルロン酸注射は1週間~2週間に1回、5回続けるのが一般的ですが、3回~4回注射した時点で痛みに変化がないようであれば、あまり効果は期待できないかもしれません。痛みは多少残るものの軽減しているようであれば、間隔をあけて継続していってもいいでしょう。ステロイド注射は除痛の切れ味はいいのですが、逆に関節を傷めてしまう可能性もあるので、年に数回程度に抑えます。患者さんによって痛みの程度や治療に対する反応、求める活動レベルは様々ですから、個々の患者さんの痛みとそれによる日常生活への支障程度をきちんと評価したうえで、その人に合った治療方針を立てることが大切です。

手術が適応だと思われる目安はありますか?

保存療法をしっかり行っても、痛みによって歩行が困難になるなど、日常生活への支障が大きい場合は、手術も選択肢の一つとなります。股関節の場合は痛みの程度が強い方が多いので、比較的速やかに決心されることが多いのですが、膝関節の場合は「まだ我慢できます」という患者さんが多いのが特徴です。しかしよく話を聞いてみると、「外出もせず、買い物も人に頼んで、家の中にじっとしている」ことで痛みを抑えているというのです。
自分に制限をかけて歩かずにいると、糖尿病や心疾患を合併する可能性が高くなるという報告もありますし、精神的にもよくありません。寝たきりになれば生命予後にもかかわってきます。現在の日本人の平均寿命と健康寿命には約10年の差があるといわれていますが、最後まで健康寿命を保てるようにサポートすることが、整形外科医の役割だと私は思っています。


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