メニュー

専門医インタビュー

膝の痛み、早目に相談を ご存知ですか?半分だけの人工膝関節を

この記事の専門医

川口 誠司 先生

滋賀県

プロフィールを見る

所属学会 日本整形外科学会、日本人工関節学会、中部日本整形外科災害外科学会、日本骨折治療学会、日本脊椎脊髄病学会
専門分野 外傷外科・人工関節外科
その他所属・資格 日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本体育協会公認スポーツ認定医、日本DMAT 隊員

この記事の目次

術中や術後の疼痛コントロールはどのようにしているのですか?

最近は、手術の傷を閉じる前に、関節周囲に消炎鎮痛剤やステロイド剤、麻薬薬などの痛み止めを混ぜて直接注射するカクテル注射(関節周囲多剤カクテル注射)と呼ばれる処置が普及してきて、かなり簡便に効率よく鎮痛ができるようになっています。また、超音波ガイド下神経ブロックという方法で、痛みという感覚だけをブロックすることもできるようになっています。その結果、多くの場合で手術翌日の昼くらいまではほとんど痛みを感じずに過ごすことができます。それによって術後早期からのリハビリが可能となり、合併症である血栓症対策にもなっています。
その後は、また新たな痛みが出ることもありますが、現在は痛み止め薬などのバリエーションも増えているので、痛みの程度に応じて種々の薬を組み合わせ、追加で投与することもできます。以前に比べて術後の疼痛はかなり軽減しているといってよいでしょう。
発生頻度は少ないのですが、術後の合併症として気になるものに感染と深部静脈血栓症があります。感染は、糖尿病やステロイド剤を服用している人など免疫が低下している人に起こりやすいといわれています。そのため糖尿病の人は、手術後も血糖値をコントロールするように注意してください。また深部静脈血栓症については、早期リハビリの開始や一時的に血液がサラサラになるお薬を使用するなどさまざまな対策がとられており、以前よりも発生率が下がってきています。

術後のリハビリや退院後の留意点を教えてください

膝の曲げ伸ばし訓練

手術翌日から「歩く訓練」と「膝の曲げ伸ばし訓練」を開始します。全置換術でも1週間もすれば杖歩行が可能になる人もいますが、部分置換術を受ける人は術前の状態が全置換を行う人よりも良い状態の人が多いため、翌日に歩ける人やリハビリが必要ないのではないかと思えるほど、自然に楽に膝が曲がっている人もいます。
術後に人工関節と上手に長く付き合っていくためには、定期的なチェックが欠かせません。
術後は定期的に検診を受け、人工関節に異常がないか、きちんと機能しているかなどをチェックしてもらいましょう。
また長持ちさせるために家に引きこもるのではなく、しっかり歩いて脚に筋力をつけるように。ただし転倒しないように注意してください。普通の生活を送っている限り、とくに動作制限をすることはありません。レクリエーション程度のスポーツであれば十分に楽しんでいただけます。
現在では人工膝関節自体も格段に進化し、ポリエチレンが摩耗しにくくなっています。以前は、部分置換術の長期成績が芳しくない時期もあったのですが、今では長期成績も良好で、しっかりと適応を守って手術症例を選んでいれば、全置換術の人工膝関節と同様に20年以上の耐久性が期待できるようになっています。

膝の痛みに悩んでいる人や、手術を迷っている人へメッセージをお願いします

川口 誠司 先生

膝の痛みを治療するだけで、生活の質が大きく改善することもあります。私が部分置換術の両側同時手術を行った80代前半の患者さんは、それまで本当に這うようにして生活をしておられたのですが、術後はしっかりと歩けるようになりました。他にも、手術をすることで歩くスピードが速くなって周りに驚かれている人、介護の手が必要なくなった人などもたくさんおられます。
膝の痛みに長年悩まされているのであれば、年だからとあきらめずに、一度整形外科を訪ねてみてはいかがでしょう。膝が悪いと思っていても他の疾患が隠れていることもあります。また、変形性膝関節症や骨壊死の場合、早めに対応できれば、部分置換術など、より低侵襲な治療法を選択することも可能です。
歩けなくなると、楽しみも減ってしまいますね。その原因が膝の痛みでは、あまりにももったいないです。膝を治療することで、最後まで人生を楽しんでいただくことができるのであれば、整形外科医は喜んでお手伝いをさせていただきます。一人で悩まず、まずは気軽にご相談ください。




この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop