関節治療の専門医に聞いてみました!

第260回 健康寿命を延ばすために
専門医と相談し
膝の治療と向き合おう

ドクター
プロフィール
専門分野:整形外科(膝、股関節、特に人工関節)
認定資格:日本整形外科学会専門医
所属学会:日本整形外科学会、日本人工関節学会、日本再生医療学会、JOSKAS(日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会)
エリア 大阪府タグ
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飯田 剛 先生

日本人の平均寿命は年々延びていますが、肝心なのは介護などを受けずに自立した生活が送れる健康寿命を延ばすことだといわれています。「そのためには最後まで自分の脚で歩くことが重要です。いたずらに我慢せず、しっかり治療と向き合ってほしいですね」とアドバイスする畷生会脳神経外科病院の飯田先生に、膝の痛みの原因や侵襲が少なく回復の早い治療法などについてうかがいました。

膝の痛みの原因は何ですか?

変形性膝関節症のレントゲン

変形性膝関節症のレントゲン

痛みの原因として多いのは変形性膝関節症です。これは、膝関節にあるクッションの役目を果たす軟骨が加齢によってすり減り、骨同士が直接当たるようになって痛みを生じる疾患です。人間が本来の生物としての相当寿命より長生きするようになったことで起きている現象ですから、病気というよりは、長年にわたる使いすぎによって生じる痛みといったほうがいいかもしれません。
受診時の症状としては、「立ち上がる時に痛い」「階段を降りる時に痛い」という人が多く、変形が強いケースでは「歩行時に膝からギシギシと音が鳴る」と訴える人もいます。受診される人は50代~90代と幅広いのですが、特に多いのは70代です。ただし50代の人でも、スポーツなど活動性の高い動作がきっかけで、痛みを感じるようになることも多いようです。

変形性膝関節症はどのような治療から始めるのでしょうか?

大腿四頭筋のトレーニング

大腿四頭筋のトレーニング

まずは運動療法です。変形性膝関節症で大きな問題になるのは、「痛いから動かない」ということです。膝は軟骨だけでなく膝周囲の筋肉によっても支えられていますから、動かないことで筋肉が落ちるとさらに軟骨の負担が増え、悪循環で症状が進行していくことになります。また、脚は第二の心臓といわれています。脚の筋力が落ちて血流が悪くなると脚がむくみ、さらに動きづらくなることもあります。その結果、動かずに家に引きこもるようになると、会話や刺激がなくなり、認知機能の低下を引き起こすことにもなりかねません。患者さんの状態に応じた運動療法で筋肉を鍛え、体を動かすことが大切です。
特に大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を鍛えるのが効果的で、これは座ってトレーニングすることができます。座って膝を伸ばしたまま、脚全体を上に上げます。つま先は上に上げたままにすることがポイントです。テレビを見ながらでも行えるので日頃の生活の中に取り入れてみましょう。その他、水中ウォーキングなども負担をかけずに筋肉を鍛えることが可能です。
運動療法は継続することが何より重要です。1回の動作が10秒しか続かなければ10秒でかまいません。それを毎日続けて少しずつ伸ばしていけばいいのです。年齢や進行程度にかかわらず、運動療法だけで症状が改善する人もたくさんおられますよ。

運動療法以外にも効果的な治療法はありますか?

痛みが強い場合は、抗炎症剤などの痛み止めの服用やヒアルロン酸の関節内注射で痛みを軽減し、その間に筋肉を鍛えるのが効果的です。ただし、痛み止めやヒアルロン酸注射はだらだらと長く続けるものではありません。痛み止めの服用の目安はおよそ1か月といわれています。それ以上飲み続けると消化管に悪影響が出る可能性があります。その間の運動療法では症状が改善せず、痛みが続くようであれば、服薬はやめて次の治療を考えたほうがいいかもしれません。ヒアルロン酸注射は1週間に1回、5回続けて打ち、その後1か月~2か月経過を見ても効果が得られなければ、次の段階の治療を検討します。痛みがひどい場合や歩行が困難な場合は、次の段階の治療として手術も選択肢の一つとなります。手術と聞くとなかなか決断できない人も多いと思いますが、痛みや変形が進行し歩けなくなってからでは行える手術も限られてきます。一つの目安として、両足を揃えながら一段ずつしか階段を降りられなくなった時は、手術を考えてみてもいいかもしれません。より侵襲が少ない手術や、より良好な機能改善を望むのであれば、適切な手術のタイミングを逃さないことも大切です。


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