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専門医インタビュー

人工膝関節置換術は健康寿命を延ばすための手術です 痛みは我慢せず、自力で歩くことを諦めないで!

この記事の専門医

  • 泉 亮良 先生
  • 埼玉医科大学 整形外科・脊椎外科 講師
  • 049-276-1111

埼玉県

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東京大学医学部卒業。同医学部附属病院、中田病院等を経て現職。膝と股関節の人工関節手術を多数執刀。中田病院(非常勤)での膝・股関節の専門外来と手術も担当

この記事の目次

人工膝関節置換術は、どのような種類があるのでしょうか?

手術室の風景

手術が必要な膝関節でもその程度は様々です。
最も多いのは、膝の内側の軟骨がなくなりO脚が見た目でも分かる変形の患者さんに対して、膝全体の軟骨を削ってO脚変形も治してしまう「全置換術」です。ただ、全部治すためには、ある程度筋肉への手術ダメージが伴いますので、その分リハビリも多く必要です。
一方で、大腿骨の骨壊死やまだ末期手前の変形性関節症など、そこまで変形は強くないものの、保存治療では良くならない患者さんには、痛みのある内側だけを手術する「単顆置換術」を行います。この方法では筋肉へのダメージが全置換に比べてかなり少なく、その分術後の痛みや回復が早いというメリットがあります。ただし、O脚変形が強い人や関節リウマチのような炎症による膝の変形には行えず、医師による適切な判断が必要です。 また変形性膝関節症では、両膝が左右同じように変形している患者さんが少なくありません。そのような場合には、左右同時に手術する「両側同時人工膝関節置換術」を行います。

両側同時手術の主なメリットについて教えてください。

両側同時手術後のX線

両膝とも悪くなり、必要な場合、片膝ずつ時期をずらして手術を行う方法と、両膝を一緒に手術する方法があります。どちらの方法であっても長い目で見ると変わらないと言われています。
両側同時手術の大きなメリットは、入院・手術が一回で済むということです。
手術を受けるのは誰にとっても嫌なものです。できれば嫌なことは2回ではなく、1回で終わらせたいと思うのは当たり前のことです。
両膝同時手術で心配されるのは、身体への負担や入院期間の長期化やリハビリの困難さでしょう。ただ実際のところでは、手術時にはスタッフの数を増やして手術しますので、手術時間はさほど変わらず、身体への負担が2倍ということはありません。また入院期間も片膝と比べて変わらないか1 週間長い程度です。そしてリハビリも片膝同様に進んで行きます。人工関節は、術後すぐに全体重をかけて良い手術ですので、翌日から離床と歩行の練習が始められるのです。
結果として、片膝ずつ手術するよりは、患者さんの入院期間はトータルでは短くなり、費用負担も少なくなるというメリットがあります。
もちろんこれは両膝とも悪い場合の話であり、片膝だけが悪い人が予防的に反対側を手術する必用は全くありません。
両膝の同時手術を行うためには、医師だけでなく、看護師、リハビリスタッフもそれに習熟している必要がありますので、行っている施設は決して多くありません。手術を受ける前には、必ず事前に下調べを行い、手術の方法などを含めて詳しく話を聞いておくことをお願いします。

手術を受けるタイミングについて教えてください。また、手術は誰でも受けられるのでしょうか?

単顆置換術後のX線

人工膝関節置換術は、治療法として最後の手段です。従って、膝が痛くても杖もつかずにスタスタ早歩きしている人に、手術を勧めることはありません。とはいえ、全く歩くことができなく生活に支障が出るまで待っていると、筋力が落ちて回復が遅くなります。 手術を決めるタイミングの目安としては、「膝の痛みで短い距離でも平地歩行が辛い」「変形で歩容が悪くなり、杖が必要になった」「膝の痛みのために自分で色々生活に制限をかけている」という頃合いが良いのではないかと思っています。大変良くないのは、「歩けなくなってから手術を考える」というものです。それは筋肉が落ちきってしまってからでは、やはり結果があまり良くないからです。
人工膝関節手術はあくまでも骨を治す手術であり、筋肉は治せないのです。
手術は、膝の症状が進行期~末期で、本人に「日常生活を活発に送るためにも、どんどん動きたい」という意思があれば、誰でも受けることが出来ます。特に当院は総合病院ですので、糖尿病や合併症の多い人や心臓疾患を持っている人にも、他の診療科と連携協力することで、できる限りのことを行っています。人工透析を行っている人でも透析の合間を縫って手術ができますし、ペースメーカーを入れている人の手術も珍しくありません。術後の満足度は、膝の痛みが強いために動きに制限があって困っていた人ほど、高いと思います。人工膝関節置換術を行う医師としては、すべての患者さんの膝の痛みを早く治して、元気にどんどん出歩いて欲しいというのが願いです。痛みのために外出するのも億劫になっていた人から、「友達と旅行してきました」というお土産話を聞く時が、一番うれしく感じます。


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