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専門医インタビュー

あきらめないで肩、股関節の痛み 専門医に相談し適切な治療法を選択しましょう

この記事の専門医

樋口 直彦 先生

京都府

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経歴:帝京大学卒業
資格:日本整形外科学会認定専門医専門分野:肩関節・肘関節・スポーツ整形外科
田巻 達也 先生

京都府

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経歴:三重大学卒業
資格:日本整形外科学会認定専門医日本体育協会公認スポーツドクター
専門分野:股関節・膝関節・人工関節

この記事の目次

股関節の痛みの原因となる主な疾患は何ですか?

正常な股関節と寛骨臼形成不全

     正常       寛骨臼形成不全

田巻 加齢や使い過ぎでクッションの役割を果たす股関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接ぶつかり合うようになって痛みを生じる「変形性股関節症」が一番多く、股関節に問題を抱えている人の約90%に見られます。また、ステロイド剤の服用やアルコール多飲の人に高リスクな「大腿骨頭壊死症」も5~10%を占めているといわれています。
変形性股関節症のほとんどは、日本女性に多く見られる先天的に股関節の臼蓋の被りが浅い「臼蓋形成不全」が原因で起こるため、発症年齢が40~50代と比較的早いのが特徴です。「脚の付け根の前側が痛い」「脚を動かせる範囲が狭くなった」「靴下やズボンがはきづらい」といった訴えで受診される人が多いですね。

変形性股関節症に行う治療法を教えてください

骨切り術

骨切り術

田巻 まずは体重コントロールや負担の少ない姿勢といった生活指導、筋力トレーニングなどのリハビリ、必要に応じた薬物療法といった保存療法から始めます。これだけで症状が改善する人も少なくありません。ただし、保存療法を続けていても改善が見られず、「30分続けて歩けない」「痛み止めを毎日服用するようになった」「脚長差が出てきて腰や膝に負担がかかるようになった」といった場合には、手術を考えてもいいかもしれません。比較的若く変形が軽度な人には、自分の骨を切って臼蓋の被りを矯正し、痛みや動きを改善させる「骨切り術」を検討します。しかし、変形が激しく骨切り術の適応にならない場合は、「人工股関節置換術」が適応となります。近年の人工関節の素材や加工、形態の進歩は目覚ましく、それによって選択肢が増えたことで、患者さん一人ひとりに適切な人工関節が選択できるようになりました。

侵襲の少ないMIS手術とはどういう手術ですか?

前方アプローチ

前方アプローチ

田巻 股関節の筋肉や腱をできるだけ傷めずに人工関節を設置する、侵襲の少ない手術のことです。股関節へのアプローチ法には大きく分けて前方、側方、後方がありますが、体の前側から切開する前方アプローチは、股関節の後ろ側の筋肉や腱を温存することができるため、術後の回復が早く、早期退院・早期社会復帰を可能にしています。また、術後の動作や姿勢に制限がないのも大きなメリットといえるでしょう。基本的に正座も和式トイレもスポーツも問題ありません。靴下やズボンも自由な姿勢ではくことができます。
変形性股関節症は、両脚に症状が出ることが多いうえに、仕事や家事、子供の世話などで忙しい現役世代の女性に多く見られることから、「手術と入院を一度で済ませたい」というご本人の希望があれば、両方同時に手術を行うことも可能です。前方アプローチであれば、入院期間は片方で約1週間、両方でも1~2週間で退院することができます。

術後のリハビリから退院までの流れを教えてください

四脚杖

田巻 前方アプローチの場合、手術当日から歩ける人も少なくありませんが、一般的には翌日から歩行器を使って歩行訓練を開始します。術後2日目からは、可能であれば1本杖で歩き、その状態で階段昇降ができるようになって退院となります。合併症のひとつである深部静脈血栓症(俗にいうエコノミークラス症候群)の発症原因は術後の長期安静ですから、早期離床や早期歩行獲得は、合併症の予防策になっているといえるでしょう。

人工股関節の耐用年数と、上手に付き合っていくためのポイントを教えてください

人工股関節

人工股関節

田巻 活動性や筋力、骨の質・強度などに個人差はありますが、90%の人が20年以上持つといわれています。また、人工関節と上手に付き合っていくためには、定期的に受診して問診やレントゲンで股関節の状態をチェックしてもらうことが大切です。自覚症状がなくても、人工関節の摩耗やゆるみが生じていることもありますが、早めに発見できれば摩耗した部分だけを置き換えるなど、負担の少ない手術で対応することも可能です。

股関節の痛みに悩んでいる方にメッセージをお願いします。

田巻 達也 先生

田巻 股関節が悪いからといって必ず手術が必要なわけではありません。効果的な治療法は他にもたくさんありますし、それで症状が改善する人もたくさんいます。しかし、いろいろな保存療法を行っても効果がなく、痛みや可動域制限によって日常生活に大きく支障をきたしているようであれば、手術療法を考えてみてもいいのではないでしょうか。
人工関節や手術手技の進化は目覚ましく、長期成績や安全性も高くなってきています。痛みを我慢しながら過ごすのは本当に大変なことです。まずは股関節の専門医のいる施設を受診し、自分に適切な治療法は何かを、納得いくまで相談してみてください。


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