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専門医インタビュー

治療法は進化中です。股関節の痛みの原因を知って、自分らしい治療法を選びませんか。

笠井 健広 先生
  • 笠井 健広 先生
  • 中部ろうさい病院 関節外科部長
  • 052-652-5511

愛知県

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専門医:日本専門医機構 認定整形外科専門医、日本整形外科学会 認定運動器リハビリテーション医、臨床研修指導医

この記事の目次

中高年の女性に多いとされる股関節の痛み。日々の生活を優先して我慢するにつれ、膝や腰にも負担がかかることがあります。「痛みに対する強さは個人差がありますが、日常生活に支障が出る前に専門医を受診して、痛みの原因と対処法を聞いてください」とは、中部ろうさい病院の笠井健広先生。股関節に痛みをもたらす疾患や治療法、手術の現状について伺いました。

股関節の痛みの原因は、どのようなものが考えられますか?

変形性股関節症

変形性股関節症

歩き始めや立ち上がり、階段の昇降といった動きに伴って股関節に痛みを感じる場合、一番多いのは「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」です。股関節(こかんせつ)は、骨盤の臼蓋(きゅうがい)(うけざら)に大腿骨(だいたいこつ)の丸い骨頭(こっとう)(ボール)がはまったような構造で、正常であれば骨頭の8割を臼蓋が覆っています。しかし変形性股関節症に悩む日本人の8~9割の原因は「寛骨臼(臼蓋)形成不全(かんこつきゅう(きゅうがい)けいせいふぜん)という受け皿の臼蓋が正常よりも浅く、骨頭をしっかり覆うことができません。そのため臼蓋の一部に加重がかかり、加齢でクッションの役割を果たす軟骨が減ると、痛みなどが出やすくなるわけです。遺伝的な傾向があると言われ、女性に多いのが特徴ですね。
ほかにも数は少ないですが、過度なアルコールやステロイド治療などが原因といわれる「大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)」や「関節リウマチ」によって痛みを感じる方もいます。

整形外科では、どのように診察して症状を判断しますか?

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症

レントゲンを撮り、必要に応じてCT検査やMRI検査、リウマチを疑う場合は血液検査も行います。一口に変形性股関節症といっても進行具合はさまざまで、軟骨が残っていることもあれば、骨の表面に骨棘(こつきょく)というとげができてガタガタになっていることもあります。軟骨が減り始めたときに痛みが出やすいと言われていますが、骨の状態にかかわらず痛みの出方には個人差があります。
基本的には痛みの出る場所を中心に診察するのですが、「腰痛や膝痛の原因が、実は変形性股関節症だった」ということもあります。また腰の疾患でありながら脚の痛みやしびれを引き起こす「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」についても知られてきました。いろいろな痛みは「この箇所が100%の原因」というものばかりではありません。
痛みの原因を正しく突き詰めるには、患部を触って「これはどう?」と確認する丁寧な問診と検査が大切です。専門医には、痛みの出方についてできるだけ詳しく伝えるといいですね。

痛みの原因が変形性股関節症の場合、治療法を教えてください。

骨切り術

骨切り術

変形性股関節症は、すぐ手術を行うような緊急性のある病気ではありません。まず手術以外の治療である、保存治療で股関節への負荷を減らす体重コントロールや消炎鎮痛剤の内服、マッサージ、股関節周りの筋トレを行います。装具として杖やシルバーカーを使って、股関節の軟骨をなるべく温存しながら歩くのもひとつの手段です。「できれば手術はしたくない、軟骨を元通りにしてほしい」という声も聞きますが、残念ながら減ってしまった軟骨を増やす薬や筋トレは今のところありません。
保存治療を半年ほど続け、それでも痛みが解消しない場合は、手術という選択肢があります。臼蓋のかぶりを広げる「骨切り術(こつきりじゅつ)」と「人工股関節置換手術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)」は、年齢と症状の進行具合が大きな影響を及ぼします。比較的軟骨が残っている状態でだいたい40歳までと言われるのが骨切り術、軟骨がほとんど残ってない高齢者の場合は「人工股関節置換術」が一般的です。若い方でも早めの社会復帰を考え、術後から全体重をかけられる人工股関節を選択する方もいます。


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