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専門医インタビュー

変形性膝関節症には多様な治療法があります 膝に痛みがあれば専門医に相談しましょう

中川 裕介 先生
  • 中川 裕介 先生
  • 国立大学法人東京医科歯科大学医学部附属病院 整形外科
    国立大学法人東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 生体支持組織学講座 運動器外科学 准教授
  • 03-3813-6111

東京都

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医学博士、整形外科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

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この記事の目次

膝の痛みを感じていても我慢して過ごすケースが多いそうですが、レントゲンやMRI技術も進化した今、早めの受診でわかることがたくさんあります。受診してもすぐに手術になるわけではなく、まずは保存療法から入るのが一般的。東京医科歯科大学医学部附属病院の中川裕介先生に、膝の痛みの治療法について伺いました。

変形性膝関節症の原因や受診のタイミングを教えてください

正常半月板と半月板逸脱

特に壮年期以降で膝が痛くなる代表的な疾患というと変形性膝関節症があげられ、レントゲン画像上で何らかの変形がある日本人は約2千万人にのぼり、そのうち痛みなどの症状を感じている方が600~800万人いるといわれています。
変形性膝関節症は、関節にある軟骨がすり減り骨同士がぶつかることで痛みが生じるのですが、軟骨がすり減る前に、衝撃を吸収し膝関節を安定化させる半月板が加齢によって変性し断裂したり、関節の外にはみ出す(逸脱(いつだつ))状態になることがあります。そのため、レントゲン上、関節の隙間が少ない場合、半月板の逸脱や損傷が原因となっていることがあります。
痛みが1~2週間続く、膝が腫れている、動きが制限されるなどの症状があったら、受診するタイミングです。整形外科では、レントゲンを撮り膝の状態を確認しますが、半月板などの組織はレントゲンで状態を確認できないので、状況に応じてMRIなどの画像診断を追加し痛みの原因を特定していきます。

半月板の治療法を教えてください

半月板内方化術(鏡視下セントラリゼーション)

半月板内方化術(鏡視下セントラリゼーション)

1990年頃から膝に小さな傷口を数か所開け、そこからカメラや手術器具を膝の中に入れ半月板を治療する関節鏡手術(かんせつきょうしゅじゅつ)が普及し始めました。当時、半月板の損傷や逸脱があれば切除するのが一般的でした。しかし、半月板を取り除いてしまうと、変形性膝関節症の進行が早まるということが分かってきたので、近年では断裂した半月板を縫合したり、逸脱した半月板をできるだけ元の位置に戻す「半月板内方化術(鏡視下セントラリゼーション)」など、できるだけ半月板を温存する治療が重要視されています。

変形性膝関節症にはどのような治療が行われますか?

長らく痛みを我慢していると、軽い痛みなのに強く感じる「痛覚過敏」になることがあります。痛覚過敏を治療するために押して最も痛い最大圧痛点を1日1分マッサージする痛点ストレッチという自分でもできるマッサージがあります。また最近では痛覚過敏を和らげる薬も変形性膝関節症の方に処方できるようになりました。一般的に手術以外の治療である保存療法では、消炎鎮痛剤の内服や貼り薬、ヒアルロン酸の関節内注射、靴の中に敷くインソールなどが用いられます。それに加え、減量や運動も有効です。BMIが30以上あると変形性膝関節症のリスクが高まるのですが、体重の5%を減量すると、痛み止めと同じくらいの効果があるとされています。また太ももの筋肉(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))を強化するストレッチや、お皿を上下左右に動かしたりするマッサージも効果的です。あるいは自由診療になりますが、PRP療法と呼ばれる、自分の血液を使う再生医療も登場するなど、保存治療はかなり多種多様になっています。

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保存療法はどのくらいの期間続けるのでしょうか?

正常な膝とO脚

人工膝関節の手術を受けた方を対象にしたアンケート結果では、60歳頃から膝の痛みを感じ、65歳頃から日常生活に支障が出たため受診し治療を始め、75歳くらいで手術を受けた方が多かったという報告があります。保存療法を続けても、症状が改善しないからすぐに手術というわけではなく、長年にわたって保存療法を続けられている方が多くいらっしゃいます。ただ、保存療法を続けてきたけれど、痛みがコントロールできなくなったとき、例えば500メートル以内の歩行で痛みが出たり、足を揃えながらでないと階段昇降が難しくなったり、痛みが強くなくてもO脚変形が強く歩きづらさがあり他の部位へ負担がかかる心配があるなどの場合には、手術を検討したほうが良いでしょう。


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