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専門医インタビュー

若者からお年寄りまで  膝痛の原因と対処法

この記事の専門医

石川県

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金沢大学医学部卒。
国立山中病院、同大附属病院、石川県立中央病院整形外科などの勤務を経て、1993年木島整形外科病院(現・木島病院)副院長に就任。1994年院長就任。
日本整形外科学会(専門医・認定スポーツ医)、日本体育協会公認スポーツドクター。

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金沢大学医学部卒。
同大医学部講師、同大附属病院リハビリテーション部長などを経て、2009年より木島病院整形外科勤務。14年からは同大臨床教授も兼務する。日本整形外科学会(専門医)、日本体育協会公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学)。医学博士。

この記事の目次

若年層の膝の病気にはどのようなものがありますか?

円板状半月板の関節鏡手術

北岡 小学生の低学年までの膝痛として、円板状半月板という病気があります。半月板は、強靭な繊維組織で膝への衝撃を吸収する役割があります。文字どおり半月のかたちをしているのですが、これが円板状になって膝が痛くなってしまうのです。内視鏡を使った手術で本来のかたちに戻してあげます。中学生までの膝痛では、オスグッドシュラッタ―氏病という病気があります。成長の途上である骨端および骨端線に炎症をおこし、運動をしている男児に目立ちます。大腿四頭筋のストレッチや遠心性運動(筋肉を伸ばしながら行う運動)を取り入れたトレーニングで予防・治療効果を見込むことができます。高校生や大学生、特に部活動などやスポーツに取り組む人に多い障害は、前十字靭帯(ACL)損傷ですね。バスケットボールやハンドボール、サッカー、バドミントン、スキーなど、ジャンプや着地、ストップして切り返すといった動作を繰り返す競技で多い外傷です。相撲やママさんバレーの選手でも前十字靭帯を傷める人はいます。

前十字靱帯損傷は、どのような病気なのでしょうか?

膝の構造(右膝の正面)

北岡 前十字靭帯は大腿骨と脛骨を結ぶ靱帯で、関節内にあるため治りにくいという特徴があります。この前十字靭帯が断裂します。女性に多いけがで、競技中に足を止めたり、方向転換をしたときに膝をひねり、ブチっと音がしたり、膝がガクっと崩れたりして、激痛でその場から動けなくなります。
しばらくすると痛みがおさまり、歩行も可能となりますが、徐々に膝に血がたまって腫れ、膝を動かしづらくなります。腫れは2~3週間で引き、保存療法などで日常生活に支障のないレベルに回復させることは難しくありません。ただ、激しい運動に耐えられるレベルまで回復することは少なく、放置した状態では、以前のように競技に復帰することは難しい場合がほとんどです。

靭帯再建術後のX線

竹内 痛みがないからといって放っておくと、半月板や軟骨を痛める可能性もあります。靭帯は手術で新しく再建することができますが、半月板や軟骨は再生することができないため、後に変形性膝関節症を引き起こす要因にもなりかねません。前十字靭帯損傷になった場合は、半月板や軟骨を痛める前に手術する必要がありますが、もし手術がすぐにできない場合には、膝に負担をかけるような運動は制限しなければなりません。スポーツドクターなどの専門医の治療をいち早く受けることをお勧めします。

前十字靭帯損傷における診断のポイントについて教えて下さい。

北岡 まずは、受傷状況を聞き逃さないことが大切です。例えば、強く膝をひねってその後しばらく膝が腫れて痛かったり、 歩きにくかったりといった、具体的な症状について確認します。次に、関節の腫れはないか、水はたまっていないか、押さえて痛いところはないかなどを見た後、関節の不安定性についての診察を行います。レントゲンでは見落とす可能性があるため、画像診断にはMRIを使用します。なお、スポーツ選手には、ケガや故障が付き物です。むしろ、ケガや故障の後、それらからどうのように復帰するのかが重要といえるでしょう。前十字靭帯損傷の場合、損傷・断裂した前十字靭帯を取り除き、太ももの裏にある腱を移植する前十字靭帯再建術を行えば、競技に復帰することも可能です。手術を受けた選手の中には、ハンドボールやスキーの国内トップクラスの選手で、術後に競技生活の第一線に戻り、優れた結果を収めていらっしゃる方もいます。

実際に競技生活に復帰にするには、どのくらいの月日がかかるのでしょう。

アスレチックリハビリ施設での競技復帰に向けたトレーニングの様子

北岡 競技に復帰できるまで回復するためには、心身の回復から体力の向上、病気やケガの予防、治療、リハビリなどを、総合的に行わなければなりません。これらの要因を細かく分析するため、競技復帰まで最低半年はかかると思ってください。中でもリハビリは、手術後に筋力が大幅に低下することもあり、複雑な動作を訓練するスポーツ選手向けのアスレチックリハビリを実施する必要があります。アスレチックリハビリでは、膝だけでなく体幹も含めた下肢の筋力とバランス感覚を養いうと同時に、再発がないよう危険な動作を避けてもらうことを覚えます。

竹内 スポーツ整形の場合、医師のスポーツに対する理解や知識だけではなく、競技復帰に向けてトレーニングを行うことのできる専門施設も必要です。当院では、アスレチックリハビリ専用の体育館で日本体育協会公認のスポーツトレーナーが復帰に向けた指導を行っており、多くの競技者が現場復帰する手助けになればと思います。

医師による適切な治療とリハビリで、膝を悪くする前の日常生活や、競技生活への復帰が望めるようですね。
最後に、膝の痛みに悩んでいる方へメッセージをお願いします。

竹内 膝に痛みを覚えた場合、決して我慢せず、まずは近くの整形外科に相談してください。症状が軽い場合は、正しい運動療法で痛みがなくなる可能性もあります。特に高齢者の方は、我慢を続けるとさらに軟骨がすり減り、最後は日常生活に支障をきたします。早めの受診で痛みを改善し、QOL(生活の質)を取り戻してください。

北岡 何らかの理由で膝関節をケガした場合、重要なのは「あきらめない」という患者さん自身の気持ちです。若者やスポーツ選手の場合、ケガそのものの回復は比較的早いのですが、実際に競技に復帰して前と同じようにプレーできるかは、本人の精神的な部分に非常に大きく寄っています。「あきらめない限り、必ず復帰できる」と信じ治療に専念することが、できるだけ早い回復につながると思います。


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