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専門医インタビュー

まずは膝の状態を知ることが大切です 膝の痛みは早めに専門医に相談を

この記事の専門医

田渕 幸祐 先生

福岡県

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専門分野:関節外科(膝)、膝のスポーツ傷害、関節鏡手術(膝)、人工関節手術(膝)
資格:日本整形外科学会専門医、JOSKAS関節鏡技術認定
所属:日本整形外科学会、JOSKAS、日本臨床バイオメカニクス学会、International Society of Arthroscopy, Knee Surgery & Orthopaedic Sports Medicine

この記事の目次

受診するタイミングや早期受診のメリットを教えてください

2~3週間痛みなどが続けば受診したほうが良く、その際にレントゲン検査だけなくMRI検査も合わせて行ったほうが良いでしょう。原因を突き止め治療を始めるというより、まずは自分の膝の状態がどのようになっているかを知ることが大切だと考えます。そのうえで、原因が変形性膝関節症からきているものだとわかったら、できるだけ変形が進まないように、なるべく手術をしないようにくい止める方法があるということを知っていただきたいと思います。受診することを過度に嫌がられたり、恐れられる方もいらっしゃいますが、早い段階で原因が分かると治療の選択肢が広がり、手術を回避できる可能性があります。

変形性膝関節症の5段階

変形性膝関節症の5段階

治療に進むことになった場合、具体的にどのような治療法がありますか?

一般的には、鎮痛剤や湿布の使用、ヒアルロン酸の関節注射という治療を行いますが、併せて、日常生活の改善で膝にかかる負荷を減らしていきます。例えば、インソールという靴に中敷きを入れることで膝の内側にかかっている荷重を外側にずらす方法や、O脚を矯正する装具を膝に装着するという方法もあります。また負担を減らすために肥満であれば体重を減らし、膝を安定させるために太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))などを鍛えることも大切です。大腿四頭筋を鍛えるお勧めの方法としては、椅子に浅く腰かけた状態で片方の脚を水平に伸ばし、息を止めずにその状態を5~10秒維持し、それを左右の脚で交互に行います。
また、脚全体をトレーニングする方法として、肩幅より少し広めに脚を開いて椅子に座った状態から立ったり座ったりを10回程度繰り返します。いずれの方法もできるだけ手すりの付いた椅子を使用し、転ばないように気を付けて行ってください。このような体重管理、筋力トレーニング、装具の使用を中心とした保存療法を早期から開始し続けることで、痛みが軽減し手術を回避できている方が多くいらっしゃいます。

太ももの前の筋肉をきたえる方法

 

脚全体の筋肉をきたえる方法

 

手術を考えたほうが良いタイミングはあるのでしょうか?

保存療法を行って症状が改善しても、傷んでしまった半月板や軟骨、変形した骨が健康な状態に戻ることはありません。そのため治療を続けても変形が進んでしまうと、痛みのせいで日常生活に支障が出ることがあります。何年も保存療法を続けてきたけど改善せず、「旅行に行きたいから」、「スポーツをしたいから」、「介護するために、もっと動きたいから」と基本的には「患者さんご自身が手術を受けようと決めたとき」が手術を受けるタイミングではないかと考えます。ただ手術は無理に受けるものではないので、手術を受けることを迷っていらっしゃるようであれば受ける必要はないと思います。

人工膝関節置換術について詳しく教えてください

全置換術と部分置換術

全置換術と部分置換術

人工膝関節置換術は、悪い部分を取り除き、金属や軟骨の代わりとなるポリエチレンで構成された人工関節に置き換える除痛効果に優れた手術です。手術には傷んでしまった箇所全てを換える全置換術と、傷んでいるところ(主に内側)だけを換える部分置換術があり、年齢や膝の状態などを考え手術方法を提案します。
人工関節を設置する位置や角度は、術後の耐久性などの成績に影響を与えるので、正確な設置が重要です。基本的には、股関節の中心と足関節の中央を結んだ線の中央に人工関節が設置されれば、正常に近い関節機能を獲得できるとされています。
しかし手術中には膝関節の一部だけしか確認できないので、術前にレントゲン画像などの情報をもとに患者さんごとの綿密な術前計画を立てます。手術中は専用の手術器具を使用し、術前の計画通り正確に人工関節が設置できているかを確認しながら行います。正確な手術手技だけでなく、使用されるポリエチレンの材質向上や人工関節のデザインの進歩によって、近年では人工関節の耐用年数はかなり伸びてきているのではないかと考えます。そのため、患者さんの年齢や体重や活動性にもよりますが、60代以上の高齢の方が手術を受けた場合、一回の手術で終えることが期待できると思います。


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