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専門医インタビュー

関節痛の治療法は大きく進化 適切な治療のタイミングを逃さないで

この記事の専門医

渡部 寛 先生

神奈川県

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京都府立医科大学卒業後、初期・後期研修を経て日本医科大学整形外科に入局。日本医科大学千葉北総病院整形外科医局長を経て2020年10月より現職
専門分野:変形性膝・股関節症、人工膝・股関節置換術
資格:医学博士、日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

この記事の目次

手術に伴うリスクや、手術を受けられないケースはありますか?

術後に足首をしっかり動かす

エコノミークラス症候群という名で知られる血栓症が、リスクのひとつとして挙げられます。これは、術中・術後に血流が悪くなることで血管内に血栓(血の塊)が出きてしまうもの。いろいろな予防策をとって発生を抑えますが、患者さん自身にできることとして、術後に足首をしっかり動かして、足のむくみを解消していくことが欠かせません。もうひとつ考え得る合併症が、細菌感染です。栄養状態が悪かったり、血糖値が高いとリスクが上がります。
糖尿病の方では術前後にインスリンを使うなどして血糖値をしっかりとコントロールしていきます。また、リウマチ治療で免疫抑制剤を使っている方も感染リスクが高いため、医師との相談が必要です。
そのほか、重篤な既往がある方は、医師と個別に話し合って手術の可否を判断することになります。例えば、透析治療中の方や高度の肥満症の方などは、リスクを十分に検討しなければなりません。

入院期間中のリハビリや退院後の日常生活や運動で気をつけることはありますか?

手すりを持って階段の上り下り

膝も股関節も、基本的には手術翌日からリハビリを開始します。まずは両足に体重をかけて立つことから始め、問題がなければ平行棒や歩行器を使った歩行訓練に移ります。術後は痛みが強いのではと気にする方もいますが、しっかりと痛み止めを飲んでもらって疼痛コントロールを行いますので、リハビリが続けられないような強い痛みを感じることはありません。T字杖で歩けること、手すりを持って階段の上り下りができることが退院の目安です。スポーツは、中高年の方が趣味で行われるようなものであれば、自由に行っていただいて良いと思います。
術後3カ月後くらいは様子を見て、その後は無理をせずに徐々に再開してください。なお、特に激しい競技や、特殊な可動域を必要とするスポーツ復帰を考える方は、術前に主治医に相談してみましょう。

膝や股関節の痛みに悩む患者さんにメッセージをお願いします。

渡部 寛 先生

しばしば患者さんから、「もう手術しないといけませんか?」と聞かれることがあります。しかし、関節痛の治療は命に関わるような悪性腫瘍の治療などとは根本的に異なり、より快適でアクティブな生活をするためのもので、手術するかどうかは患者さんが現在の生活や活動度をどれくらい維持していきたいか、という観点で決めて頂ければ結構です。投薬や注射でも日常生活に支障が生じている、例えば少し足を引きずるような状態が半年以上続く場合は手術を考えても良いでしょう。健康寿命を考えるとアクティブに生活出来る時間は意外と限られています。長生きをすれば膝や股関節に何らかの支障が生じるのは自然なことであり、誰もが避けては通れない道です。昔であれば放置されていたような関節痛の悩みも、医療が日進月歩で進化してきた今日、適切な治療を適切なタイミングで受ければ軽快するようになってきています。高齢になっても仕事や趣味のスポーツを続けたり、旅行をするといったことは十分に可能です。痛みに悩んでいる方は、治療を怖がらず、まずは一度整形外科を訪ねてほしいと思います。


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