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専門医インタビュー

ここまで進歩している人工股関節(インプラント)と手術方法
~患者さんにとって適切な手術時期を逃さないために~

この記事の専門医

塗山 正宏 先生

東京都

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日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、身体障害者福祉法指定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

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この記事の目次

人工股関節(インプラント)はどのように進歩しているのですか?

人工股関節は4つの部品で構成されている

人工股関節というのは、大腿骨に埋め込み人工股関節の土台となる「ステム」、大腿骨の骨頭の役割を果たす「ヘッド」、股関節の軟骨の役割を果たす「ライナー」、骨盤に設置しライナーの受け皿となる「カップ」の4つの部品で構成されています。
人工膝関節では、大腿骨と脛骨それぞれに入るインプラントと軟骨の役割を果たす「インサート」があります。
膝蓋骨(しつがいこつ)にも変形がある場合には膝蓋骨にもインプラントを設置します。
以前は人工関節の耐久性を心配して、手術をできるだけ待つという時代もありましたが、現在はかなり人工関節の性能が向上しています。
たとえば、この中でライナーはポリエチレン製が多いのですが、以前は、ヘッドとの摩耗によって出る「摩耗粉」が原因となって骨が溶ける「骨溶解」が起き、そのために人工股関節が緩んでしまうおそれがありました。それが現在では、体内での酸化を防ぐビタミンEを配合したポリエチレン製のライナーや、新しい表面処理技術を施したライナーなどが開発され、摩耗による問題がかなり改善されています。
さらに、製品によっては、自分の骨をより多く温存できる短いサイズのステムや、構造的に脱臼しにくい人工股関節があったり、頑丈なセラミック製の大腿骨骨頭(ヘッド)が開発されたりしています。
人工膝関節においても、人工股関節と同様に軟骨の役割を果たしているポリエチレン製のインサートが改良されており、長期間機能することが期待できるようになっています。
このように、人工関節自体の進歩によって、以前より長く機能する可能性が高まっていますから、再置換をおそれて手術を先延ばしにするという必要はあまりなくなっています。

人工膝関節にはどんなものがありますか?

全置換術(左)と部分置換術(右)

全置換術(左)と部分置換術(右)

人工膝関節置換術には、膝関節の変形状態によって全置換術と部分置換術があります。関節の変形が強い場合は、膝関節の表面全てを人工関節に置き換える「全置換術」ですが、膝の内側など、どちらか一方だけが傷んでいる場合には、傷んだ部分だけを部分的に置き換える「部分置換術」を行う場合があります。
部分置換術は、変形性膝関節症では、変形が軽度で靭帯に異常がなく反対側の軟骨のすり減りがないなどの場合や大腿骨内顆骨壊死で適応になります。
以前の部分置換術は、長期成績があまり良くなかったのですが、手術方法や使用される人工関節の改良により、全置換術に近い長期成績が期待できるようになってきています。多くの全置換術では、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)を切離し代りに人工関節がその機能の役割を担います。しかし、部分置換術は前十字靭帯が温存できるので膝関節がより安定するだけでなく、全置換術に比べると骨を切る量など身体への侵襲が少なく膝の多くの組織を残せるので、より自然な膝の動きを獲得しやすいのが特徴です。

人工関節置換術を受けるにあたって年齢制限はありますか?

人工関節置換術を受けるにあたって年齢制限はありません。体力があり、大きな合併症を持っていなければ、たとえ90歳以上の方でも、あるいは骨粗しょう症などで骨がもろくなっている方でも、その方に合った人工関節を選ぶことで手術を受けられる可能性があります。高齢だからといって諦める必要はないのです。高齢でも諦めずに生活レベルを上げるために手術が可能かどうか担当の医師と相談してみましょう。

人工関節は豊富な種類があり、患者さんの状態に合った人工関節が使用される

人工関節は豊富な種類があり、患者さんの状態に合った人工関節が使用される


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