膝の痛みによる悪循環を断ち切りましょう
ご自身の状態を確認するために専門医にご相談ください

手術を考えたほうが良いタイミングはあるのでしょうか?

筋力トレーニングなどの保存療法を続けても症状が改善しないことがあります。日常生活動作だけでなく、夜寝ている時など安静にしていても痛みが出る変形性膝関節症が末期の方の場合は、手術も治療の選択肢となることがあります。しかし、手術は誰しも受けたくないもので、手術を受けたくないという選択をされれば、医師はその選択を一生懸命応援します。けれども、膝の状態が改善したわけではないので、膝が痛むとそれをかばって腰を曲げて歩くようになるなど、膝だけでなく腰や股関節など他の関節や全身状態に影響を与えることがあります。手術を受けない選択をしたからと言って通院を止めて良いというわけではなく、定期的に膝や全身の状態を確認させていただき、全身の状態が悪くならないようにしていくことが大切だと思います。

人工膝関節置換術とは、どのような手術なのですか?

一般の方は人工関節の手術があることは認知されているかもしれませんが、患者さんの膝の状態や骨の大きさに合わせ、膝関節の骨の表面だけを人工関節に置き換えるということはあまり理解されていないかもしれません。人工関節の手術は、傷んだ部分の骨を取り除き、骨の表面に金属やポリエチレンでできた人工関節を被せ、骨同士が直接ぶつからないようにして痛みを軽減させる方法です。
手術を受ける方は、脚の形がO脚に変形されている方が多いのですが、人工関節に均一な荷重がかかるように脚の形のバランスも整えます。人工膝関節の手術は痛みが軽減できることが大きなメリットですが、それだけでなく、歩き方が変わったり、脚の形が健常のようになったことを周りのお友達に褒めてもらったりすることも、患者さんの満足度につながっていると思います。

人工膝関節置換術の流れ

手術の痛みはどのようにコントロールされているのでしょうか?

人工関節の手術中は出血を抑えるために、脚に駆血帯を巻き一時的に血流を遮断して手術が行われることがあります。しかし、血流を遮断しない方法で手術を行えば、術後の痛みを抑え、血流があるので患部への抗生剤の効果がより保てるので感染症の予防が期待できます。技術的には難しい手術になるのですが、できるだけ侵襲を加えず、止血操作をおろそかにしなければ、手術中・後の出血量は血流を遮断して手術を行うよりも少なくすんでいます。
手術後から翌日までは、患部に溜まる血液などを体外に排出するドレーンと呼ばれる袋の中に、長時間作用する局所麻酔薬や出血を抑える薬を注入し関節内の痛みの緩和や出血をできるだけ抑えるようにします。手術後の痛みの感じ方は個人差がありますが、このような方法や現在は様々な鎮痛剤などがあるので、それらを効果的に組み合わせて手術後の痛みをコントロールしていきます。