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専門医インタビュー

外反母趾による痛み 足裏にできたタコ・魚の目はがまんせずに整形外科に相談を

この記事の専門医

中川 悟 先生

鹿児島県

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昭和56年九州大学医学部卒業、同年九州大学整形外科入局
その後、九州大学病院、九州労災病院、北九州総合療育センター、国立小倉病院、県立遠賀病院、佐賀県立病院と勤務。
昭和62年公立学校共済組合九州中央病院整形外科医長、平成5年公立学校共済組合九州中央病院リハビリテーション科部長を経て、平成13年より現職。
資格、所属学会:日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医・指導医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本人工関節学会、日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会

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この記事の目次

外反母趾にはどのような手術方法がありますか?

患者さんの足の形や変形の程度などを考慮して適切な方法を選ぶことになりますが、足の関節を温存できる手術として広く行われているのが第1中足骨矯正骨切り術です。母趾の中足骨を切って出っ張った骨頭を外側に押し込み、それによって中足骨の内反を矯正するという方法で、骨を切った部分は金具(インプラント)を用いて固定することで骨癒合(こつゆごう)を促します。骨切り術は、骨を切る位置や角度によってさまざまな種類が開発されています。多平面骨切り術は、患者さんの状態に合わせて2~4つの平面ができるように骨を切る方法です。中足骨はとても小さいため、従来の方法では骨癒合がうまく進まなかったり、固定をしても骨を切った部分が動いてしまったりすることがあります。多平面骨切り術は、平面を多くつくり骨の接触面積を増やすことで、骨癒合しやすい環境になります。また骨切り部分にわずかな段差を設けることで、骨同士を嚙み合わせて接触させることができ、高い安定性を期待することができます。

第1中足骨矯正骨切り術の一例

第1中足骨矯正骨切り術の一例

外反母趾の手術により足裏のタコ・魚の目は改善されますか?

中足骨突出度

中足骨突出度

以前は、手術で外反母趾の変形は改善されても痛みをともなう足裏の胼胝(有痛性胼胝)が残ってしまうケースが多くありました。近年では、足裏の胼胝の分類により有痛性胼胝の評価が可能になり、それにともない中足骨突出度を考慮した手術計画ができるようになったことで、有痛性胼胝の改善を期待することができます。中足骨突出度とは、足を上から見た時に、示趾の中足骨が母趾の中足骨よりどれくらい突出しているかを表す数値です。この値が0、つまり母趾、示趾ともに中足骨が同じくらいの位置に近づけられるよう矯正することで、胼胝ができにくい状態を目指すことができます。そのほかにも、母趾の中足骨を切る際に、足先の骨片が地面の方向(底側・ていそく)に矯正されるように角度・向きを工夫する方法があります。そうすることで崩れていた前足部アーチが調整され、足裏の示趾の付け根あたりが地面に接触しないようになり、胼胝ができにくい足となります。

痛みの対策や合併症などについて、詳しく教えてください

近年は傷口を小さくすることで出血量を抑え、体の負担を減らす低侵襲な手術方法が開発されています。一方で、変形を十分に矯正してインプラントで固定するためにはある程度の切開が必要です。そのため、低侵襲にこだわり過ぎず患者さんの状態に合わせて処置することが大切です。
手術における痛みについては徹底した疼痛管理が行われています。目標は「手術した日もしっかりと眠れる」という状態です。患者さんの負担を軽減するため、手術をする数週間前から鎮痛剤を使い、手術当日も点滴で対応します。このような積極的な処置により多くの患者さんが手術後も痛みを感じにくい状態で過ごすことができています。
手術の際の合併症としては、骨切り部分の骨癒合の遅延や偽関節(ぎかんせつ)などのリスクが挙げられます。骨癒合の遅延は、骨癒合を促進するための薬剤や超音波を使った治療を行い経過を見ます。また最近では、手術後に着用する装具の改善などでリスクは軽減されてきています。偽関節は固定力の不足により、術後3カ月経過しても骨が正しくついていない状態をいいます。矯正していたものが戻ることによる変形の再発や、短縮による胼胝の再発・悪化などの症状が起こる恐れもあり、極まれに再手術が必要となるケースがあります。

外反母趾の手術後、生活の中で気をつけることは何ですか?

一般的には手術をして1週間はギプスで足を固定します。手術後2週間で屋内用の装具をつけ、母趾以外の部分に体重をかけた状態でリハビリを開始します。手術後4~6週間経過すれば特別にデザインされた屋外用の靴を履いて退院となります。このタイミングで母趾にも体重をかけられるようになります。骨癒合した後は、夜間装具をつけていただきます。このように術後は時期に応じて装具を使い分けることで、骨切りした部分を守りながら骨癒合の促進が期待できます。
退院後は(骨癒合が得られれば)、特別避けるべき動きやスポーツはありませんが、タオルギャザー運動などの筋力トレーニングは継続していただきたいと思います。また、術後は変形が改善されるため新しい靴を準備する必要が出てくるので、シューフィッターと相談しながら、ご自身の足に合ったものを選ぶようにしましょう。また足のバランスを保つために装具、足底挿板を使うのも効果的です。

外反母趾に悩んでいる方・受診を迷っている人へアドバイスをお願いします

何か気になることがあったら、早めに受診することが大切です。外反母趾は、自然と良くなるものではなく、加齢とともに悪化していきます。ですから、少しでも客観的に自分の外反母趾の状態を知り、手術を適用した方がいいかどうかなど専門医に相談することが大切です。早めに整形外科を受診し、幅広い治療選択肢からご自身に合った治療を進めましょう。


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