メニュー

専門医インタビュー

外反母趾は進行性の疾患です 早めに整形外科に相談し改善を目指しましょう

京都府

プロフィールを見る

専門分野:外反母趾、足の外科、関節外科
日本整形外科学会指導医・専門医、日本リウマチ学会指導医・専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リウマチ医、近畿足の外科症例検討会 世話人、日本足の外科学会 理事、日本ダンス医科学研究会 世話人

関連するキーワードから探す

この記事の目次

必ずしも痛みを伴うわけではないために放置されがちな外反母趾。しかし、外反母趾は進行性の疾患なので、放置していると足の激しい痛みや身体の他の部分の不調を引き起こすことも多いそうです。
今回は、京都府立医科大学 整形外科 准教授の生駒和也先生に、外反母趾の主な原因や正しい靴選びのポイント、手術以外の効果的な治療法などについてお話をうかがいました。

外反母趾を発症する主な原因は何ですか?

正常な足と外反母趾

一番の原因は、靴を履くことだといえるでしょう。半世紀以上前に発表された南⼤⻄洋の島の住⺠を対象とした研究報告ですが、靴を履かないで暮らす人たちの外反母趾の有病率は2%以下であったのに対し、靴を使用している高齢者では男性で約16%、女性で約48%が外反母趾を発症していたというデータがあります。特に女性の外反母趾については、女性ホルモンの影響で足の関節が柔らかく変形しやすいことに加え、履いている靴の形が大きな原因であると考えられています。つま先がとがった靴を履くと、母趾(足の親指)の指先が第2趾(足の人差し指)の方に押されてしまい、またかかとの高い靴は歩くたびに先端(前側)に足が滑り落ちて強く押し付けられ⾜が変形しやすくなります。また、遺伝的要素もあり、両親のどちらかが外反母趾の場合はご自⾝も発症しやすい傾向にあるので注意が必要です。早いケースでは小学生での発症も見られますが、一般的には50歳以上の女性に多く、加齢とともに増加していきます。

外反母趾になると身体の他の部分にも影響が出るのでしょうか?

足の3つのアーチ

足の3つのアーチ

外反母趾は高い確率で偏平足を合併していますが、偏平足によってアーチが下がる(土踏まずが潰れる)と体重を支えにくくなり、片足立ちやつま先立ちが困難になります。さらに、歩行バランスが悪くなることで、姿勢も悪くなってしまいます。外反母趾は母趾の変形によって歩行能力が低下し、身体のバランスが崩れるため、膝や股関節、腰の不調・痛みの原因となることも少なくありません。それによって転倒リスクも高まることになります。
また、外反母趾は指が曲がり始める初期の頃に痛みが強く、ある程度変形が進むと痛みがなくなるケースが多いため、ついつい放置されがちです。しかし、放置して変形がさらに進行すると、母趾に押された第2趾の付け根にある第2MTP関節(第2中足趾節関節)が脱臼してしまうことがあります。さらに、第2趾の背側や足底にタコ(胼胝(べんち))ができたり、母趾が第2趾の下に潜り込むことで足背部(足の甲)が靴にあたったりして痛みが出るといった症状も見られるようになります。ここまで進行すると治療も難しくなってきますので、なるべく早めに、症状の進行を抑えるための適切な処置を始めたいものです。

靴選びのポイントを教えてください

一般的に、ヒールの高さが3cm以下のものはローヒール、4~6cmはミドルヒール、7cm以上はハイヒールといわれています。外反母趾の人は高くても5cm以下、できればローヒールが良いでしょう。ハイヒールは避けるのをおすすめします。ポインテッドトゥのような先のとがった靴も外反母趾には良くありません。先端が丸くなっているラウンドトゥや、足の指先の形に合わせてつま先が斜めにカットされているオブリークトゥのような、母趾を締め付けない形の靴がおすすめです。つま先には1cmくらいゆとりを持たせましょう。
外反母趾の人は靴が患部を締め付けないように幅の広い靴を選びがちですが、これは逆効果です。足が靴の中で固定されず動いてしまうような状態では、足に体重がかかったときに親指と小指をつなぐ指の付け根の横アーチが広がってしまい(開張足)、よけいに外反母趾を悪化させることになります。横幅がフィットした柔らかい素材の靴、靴ひもやストラップで足を固定できる靴が良いでしょう。患部が靴に当たって痛い場合は、靴屋さんで調整してもらうほか、市販の拡張器を使って部分的に広げることもできます。

ポインテッドトゥ/ラウンドトゥ/オブリークトゥ

外反母趾を進行させないための治療法にはどのようなものがありますか?

運動療法や装具療法といった保存療法が効果的です。
幅が広いゴムを左右の母趾に掛け、かかとを合わせたまま両足のつま先を開くことで外反母趾を矯正するホーマン体操は、痛みを軽減する効果が期待できます。足の指でグー・チョキ・パーを作る足指ジャンケンは母趾外転筋(ぼしがいてんきん)という筋肉の訓練になり、初期から中等度の外反母趾に対する矯正効果が期待できます。足指を使って床に置いたタオルを手繰り寄せるタオルギャザーは、足のアーチを支える組織の維持・強化につながります。現代人は靴を履いている時間が長く、足の筋肉をあまり使わないために拘縮しがちですが、足の指をしっかり動かして内在筋を鍛えることで、拘縮や外反母趾を予防し、症状の進行を抑制することができます。
装具療法には、靴の中に入れる足底挿板(インソール)を用いた治療と、足の指の間に挟む矯正装具を用いた治療の二つがあります。外反母趾の人はその多くに足のアーチの低下が見られますので、縦のアーチ、横のアーチを矯正するような形の足底挿板を入れて、変形や痛みの改善を図ります。レントゲンで患者さん個々の足の形を確認し、それぞれの足の形に合わせて作成します。矯正装具を用いた治療は、トゥスプレッダーと呼ばれる装具を夜間に足の指の間に挟み、母趾を外転させます。進行抑制が主な目的ですが、外反母趾で母趾が曲がっている角度を改善する効果があることが報告されています。

ホーマン体操
タオルギャザー運動

タオルギャザー運動

股関節を曲げて内側にひねって座った時などにリスクが高まる

装具療法

外反母趾による変形や痛みに悩んでいる方へメッセージをお願いします

外反母趾は、必ずしも痛みを伴うわけではないので放置されがちです。しかし、外反母趾は進行性の疾患です。放置していると変形は徐々に進行し、痛みを伴って日常生活に支障が出てきたり、身体の他の部分へ悪影響を及ぼしたりすることが十分に考えられます。人生100年時代といわれていますが、高齢者の増加に伴って外反母趾の人も増えています。長年放置していた外反母趾の突出部分の皮膚が、潰瘍(かいよう)を起こしてしまっている患者さんも最近はよく目にします。しかし、骨を切って矯正する手術はあまりに高齢では行うことができません。その結果、歩けなくなり引きこもってしまうと、身体機能が低下し、うつ傾向になることもあります。早めに受診すれば治療の選択肢も多く、改善できる可能性も高まります。足の指に痛みや違和感を覚えたら、気軽に足の専門医へ相談していただきたいと思います。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop