メニュー

専門医インタビュー

[an error occurred while processing this directive]

[an error occurred while processing this directive]

この記事の目次

足の親指(母趾)が小指(小趾)側に曲がって変形し、進行すると痛みなどの症状が現れる外反母趾。変形の強い外反母趾の治療では手術も行われていますが、一部の患者さんに手術後、外反母趾の再発が見られるといわれています。手術後の再発を防ぐ方法はあるのでしょうか。大阪医科薬科大学の嶋洋明先生に、再発を防ぐ治療や手術の工夫について伺いました。

外反母趾の手術の後、再発が起きることがあると聞きました

頻度は多くないのですが、残念ながら手術後に再発される方はおられます。外反母趾は、母趾がどれだけ曲がっているかによって、軽度(20度~)、中等度(30度~)、重度(40度~)に分類されます。手術を受けた患者さんの中でも、重度で特に変形の強い患者さんの再発率が1~2割となっており、軽度や中等度の患者さんと比べると高い傾向があります。また、若年で変形を認める患者さんの場合も、生まれ持った骨のかたちなどが素因になっているためか、再発率が高くなりがちです。

外反母趾の4つの分類

再発の原因は何でしょうか?

外反母趾

外反母趾

手術中に変形を十分に矯正できないことや、手術で骨を切った部分が癒合しないこと(骨癒合不全)などが考えられます。加えて、最近では「母趾の第1TMT関節(指先から数えて三番目の関節)の不安定性が再発の原因になっている」と、指摘されるようになりました。
近年は、手術の方法や骨を固定する器具の質が向上したことで、再発率は下がりつつあると思います。

手術では、再発を防ぐためにどのような工夫が行われているのでしょうか?

ひとつは「三次元的に変形を矯正すること」です。外反母趾は、母趾の第1MTP関節(指先から数えて二番目の関節)が「くの字」に曲がっているのが特徴ですが、第1中足骨が立体的にねじれるような変形を起こしていることが明らかになってきました。そこで、この「ねじれ」も含めて手術で矯正すると、再発しにくくなると考えられているのです。
また、母趾の周囲では靱帯や筋肉が複雑にからみ合っています。そのため、関節や骨の形を矯正するだけでなく、つっぱった筋肉を切ったり緩んだ靱帯や関節包を縫って縮めたりと、全体のバランスがよくなるように処置を行います。やりすぎてはいけませんが、矯正が不十分にならないように、さまざまな要素を考慮して慎重に手術を行っていきます。

左足を前から見た図
左足を裏から見た図

重度で特に変形の強い患者さんのためにどのような手術方法がありますか?

ラピダス法(Lapidus法)

ラピダス法(Lapidus法)

ラピダス(Lapidus)法という手術があります。外反母趾の患者さんの中には、第1TMT関節が不安定になっている方がおられます。先ほども触れたように、これも再発の一因と考えられています。ラピダス法は、この第1TMT関節を固定する手術です。
手術法そのものは新しいものではありませんが、日本ではこれまであまり積極的に取り組まれてきませんでした。というのも、ラピダス法では骨を癒合するために骨移植が必要で、患者さんの負担が大きかったのです。さらに免荷期間(手術後、足に体重をかけずに過ごす期間)も長く、手術後の回復にかなり時間がかかっていました。
現在ではロッキングプレートや髄内釘などのインプラントが登場したことで、関節を固定する力が強くなっています。それにより骨移植をしなくても骨が癒合しやすくなりました。また免荷期間も個人差はあるものの、以前と比べると短くなってきています。ラピダス法は、固定により第1TMT関節の不安定性を改善することができ、変形の強い患者さんにとって再発の防止をより期待できる方法と思います。

再発を防ぐための手術後の工夫や、患者さんが気をつけた方がいいことはありますか?

手術後、免荷期間中はギプスで足を固定します。免荷期間を過ぎたら趾間装具をつけて再発を防ぎつつ、リハビリに取り組んでいきます。また、手術後だけでなく手術前から、「足ゆび体操」や「タオルギャザー運動(足指でタオルをつかむトレーニング)」といった、足の内在筋を鍛える運動を積極的に行っていきます。
外反母趾の患者さんは普段からあまり足を動かさないせいで筋肉が弱っていたり、関節が固くなっていたりする場合が少なくありません。手術後の早期回復のためにも、手術前からできるだけ足を動かして筋⾁を強くし関節を柔らかくしておくことが大切なのです。手術後も通院リハビリの時だけでなく、日常生活でできるだけ足を動かし内在筋をしっかり鍛えてほしいと思います。

足ゆび体操
足ゆび体操
タオルギャザー運動
タオルギャザー運動

外反母趾で悩む患者さんにメッセージをお願いします

外反母趾に悩む女性は非常に多いのですが、一方で「たかが外反母趾」と、あまり深刻に捉えない方もおられます。しかし、そのまま放置して外反母趾が重症化してしまうと、手術の内容が複雑になりますし、回復にも時間がかかってしまいます。第2趾(足の人差し指)と母趾が重なるなどの変形が出てくると治療がより複雑になりますから、重症化する前にぜひ整形外科の専門医へ相談してください。
また、外反母趾の悪化を防ぐだけでなく、足の機能を保ち転倒を防ぐためにも、日ごろから内在筋のトレーニングには積極的に取り組んでほしいと思います。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop